二十歳で卒業した工芸学校から、借りたまま使い続けていた手回しのロクロ台、これも忘れてきた。使い慣れていたが、私は道具には余りこだわりがない。やはり学生時代に、誰かが作った竹のヘラを何年も使い、あるときゴミど一緒に捨ててしまい、ショック。あれがないと作れないよ。仕方がないので竹を割って作った。違和感があるなあ、と思いながら夕方には、すっかり気にならなくなっていた。切ったり削ったりは、もっぱらカッターの刃を、使いにくいので、ホルダーを使わず素手で持ち使う。よってよく手を切る。三角刀など必要な時は、小学生用の彫刻刀を使い捨てである。 私の場合は、こだわる程の道具は必要なく、何も困らないという、特に面白くも可笑しくもない話である。もちろん弘法筆を選ばずなんて話でないのはいうまでもない。
タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第16回『トラウマ』