渡辺松男研究30(2015年8月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)105頁
参加者:石井彩子、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:石井 彩子
司会と記録:鹿取 未放
251 君が覚め君の見ている窓が覚め電柱が覚め秋の日が澄む
(レポート)
愛し合う二人はいつも相手と同じものを観て、同じ体験をしたいと思う。この歌は覚めて窓に目をやり、その先の電柱をみている君の視線の動きに作者が同化して、澄んだ秋の覚めのひとときを、共に味わっている場面である。「覚め」が三度繰り返されているが、窓や電柱が覚めたわけではなく、作者が君の視線に合わせることによって、それまで目に入らなかった窓や電柱に気がついたということであろう。具体的な行為や会話がないが、男女の一場面を捉えて巧みな一首である。(石井)
(当日意見)
★順番が面白いです。(曽我)
★そうですね、窓という近いところから、外の電柱、そしてそれらをひっくるめて包
んでいる秋の日、澄んで透明な秋の空気が伝わってきます。(鹿取)
★覚醒状態を捉えるまでに3度の覚めが描かれている。(慧子)