かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 252

2015年09月04日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究30(2015年8月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)106頁
          参加者:石井彩子、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
          レポーター:石井 彩子
          司会と記録:鹿取 未放


252 数知れぬ精霊蜻蛉浮かばせて秋空もまた地球と回る

       (レポート)
 秋空に数知れぬ精霊蜻蛉が浮かんでいる、いつしか秋空が回り、地球という天体も回っている。この歌は反復、循環という点で245番の歌に通じるものがあるが、精霊蜻蛉というきわめて土着的な語が用いられている。精霊蜻蛉とは、盆の頃に現われ「死者の霊が、トンボに姿を変えたもの」などといわれている。過去の時間へ消えてしまった数多くの死者の霊がこの世に現れ、回っている姿は、何かを語りかけているようだ、が、地球は止むことなく回り、死者を見送った人々もやがて死者となり、そして精霊蜻蛉となって、秋空に浮かぶのであろう。(石井)


       (当日意見)
★245番の歌とは「たえまなきみずのながれにみずぐるま未来回転して過去
 となる」ですね。(鹿取)
★精霊蜻蛉が一斉に回っているのは壮観ですね。(石井)
★下句が上手。地球が回っているから秋空もまわっているように見えるんだけど。
        (慧子)
★意表を突いているけど納得させられますね。(石井)