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ダンスとか。

『母なる証明』('09、ポン・ジュノ監督)

2009-11-15 | ダンスとか
Mother, directed by Bong Joon-ho.

MOVIXさいたま。
田舎の寒村で雨が降ってばかりいるシチュエーションなど『殺人の追憶』にとても似ているけど、話がどういう方向へ進んでいるのかがずっとわからないっていうのがとにかくすごい。筋立て自体の屈折ぶりが大きいとはいえ、人物がみんな何考えているのかよくわからない人たちばかりで、画面でしゃべってる人の表情の裏を真剣に読もうとしてしまうし、印象的に描き込まれたディテールが過剰に濃く、間歇的に「木」を見て「森」を見ていない状態に落とし込まれてますます翻弄される。ポン・ジュノはいつも知恵遅れみたいな人が出て来て、周りの人とのズレによってオフビート感(リズムの不規則さ)を作り出すのが定石みたいになっているけど、今回は、こめかみをグリグリやれば記憶が甦るだろうといって事件当日のことを必死に思い出そうとするくだりが興味深い。今は意識に上らなくても目は確かに見た「はず」だから必ず思い出せるだろう、という考え方においては、要するに人間の視覚はカメラのレンズとフィルムのようなものとして捉えられている。5歳の頃に母親に殺されそうになった時の記憶が期せずして甦っちゃったりする場面のカタストロフィぶりとか本当に強烈で、そういう「記憶」の観念、あるいは「記憶する身体」の観念は、はたしてカメラの発明以前からずっとあったものなのか否か。フロイトの精神分析(トラウマやヒステリーをめぐる諸々)の発明と、映画の発明が同時代の現象である事実に思いを致したりした。
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