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ダンスとか。

ダンスの時間 2007 Summer Festival(第七日・夜)

2007-08-26 | ダンスとか
天王寺・ロクソドンタブラック。
▼室町瞳 『おいしい場所』
バレエのテクニックを主として作られたソロ。場所を動かずに向きを変えながら同じ振りを繰り返したり、対角線上で移動するなどして、空間を構成していく。三宅純の音楽など。
▼アンサンブル・ゾネ 『Fragment』
真っ暗闇の中で規則的に何かを引きずり回す音とともに、複数のダンサーが動いている気配もあり、この冒頭の時間がやけに長くて怖かった。こういうのはすぐ終わるんだろうと思っていると案外終わらなくて、だんだん焦ってくる。そしてこの異常な状況に自分を馴染ませようとして、やがて何か違ったものの見え方(状況との対峙の仕方)が出来てくるのではないかという希望を抱き始めた頃、ようやく終わって明かりが入った。岡登志子の場合、こういう観客に突きつけられる「残酷さ」みたいなものが、よくある幼稚な攻撃性(こけおどし、すなわち結局はコミュニケーション)では全然なくて、むしろコミュニケーションの兆しを徹底的に潰した結果として生まれているように見えるところが好きなんだと思う。怖くて危険なんだけど、抽象的な危険性で、害を与えられるとか生存が脅かされるとかいうこととは関係なく、自分を内側から支えているものがただ崩れてしまう、スリルがある。出演者は五人で、仕種の反復から発展していく動きが目立った気がする。冒頭の暗闇のシーンは、実際には三人のダンサーが丸椅子を脚の周囲に素早く引きずって回転させ、座ったまま前進、ということを繰り返していたのだが、非常にテキパキとした椅子の扱いも、規則性(厳密さ)と暴力性(乱暴さ)が融合していて奇妙に美しかった。他に、力んで前に駆け込みながら行きつ戻りつする場面など、男の踊りが分厚い。アンサンブル・ゾネをこういう小さい空間で見ることは珍しいが、身体の肌触りが空間の様式美に埋没することなくグッと浮き立っていて新鮮だった。来年の新作のためのスケッチのようなものらしい。
▼村上和司 『RED さん』
赤いレスリングウェアみたいなものに赤い水泳用の帽子、ゴーグルの三人。無言で機械っぽく滑稽なアクションをする。『RED MAN』というソロが元なので、ブルーマンの向こうを張っているのかも知れない。
▼j.a.m.Dance Theatre 『tango』
久しぶりに見たj.a.m.は、久万田はるみと森井淳のデュオで、ストライプ模様の衣装を着て、なぜか口を最大限に開き、互いに口と口が触れるスレスレの位置をキープしながら、闘うように絡み合う(音楽は当然タンゴが流れる)。だんだん激しいコンタクトっぽくなっていくのだが、体が直接的にぶつかり合うようになってからよりも、その前の、間合いを意識しながら急激に距離を縮めて攻めたり、立場が入れ替わったりする、ジャムっぽい段階が面白かった。実際にぶつかってしまうよりも、現実と想像力(相手の反応の「読み」)が絡み合った状態で動いている時の方が、ダンサーの体に走る力の流れが複雑になっている。例えば単に「押す」にしてもそこに同時に引き留める逆の力が働く(「加減」をする)。どんなリアリティも、「リアル」ということに決定されてしまえば、全部結果が出てしまっているわけだから、面白くない。その行き詰まりをいかに外すか、流動化させるか、遊戯化するか(不真面目にするか)、を考えることはたぶん面白い。
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