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ダンスとか。

Live Arts Bangkok (第一日)

2007-08-16 | ダンスとか
Bangkok, Kukrit Pramoj House.
70年代にタイ首相も務めたククリット・プラモー(1911-1995)がかつて住んでいた邸宅。バンコクにはほとんど残っていない、古式ゆかしい伝統的なタイ建築とのこと。細かいことはよくわからないが、一階部分がピロティになった母屋を抜けると広い庭があり、そこの東屋で最初のパフォーマンスが始まる。SEAMEO-SPAFA(東南アジアにおける芸術や歴史的遺産の保護および振興が目的)の主催によるこのイヴェント全体が、歴史的建造物と現代のパフォーマンスを組み合わせるというコンセプト。
▼Tin Maung Kyi, Zau Gyi
ミャンマーの人形劇の復元にあたっているSEAMEO-SPAFAの研究者による簡単なパフォーマンス。細かく繊細な造形の人形だが、特徴がどの辺にあるのかはよくわからない。上演というよりデモのような感じ。
▼Phon Sopheap, A Monkey's Mask
続いて、広い庭の芝の上で、カンボジアの若いダンサーがソロを踊る。自身の専門である猿の踊りを発展させたものとのことで、中央に置いた猿の面の周囲を移動しながら、時にアクロバティックに飛び回り、時に牧歌的な優しい雰囲気で、猿の様々な仕種を演じる。元の踊りがどんなものか、全く知らない。マーシャルアーツのようでもある。最後は観客の一人を拉致して消える。タヴナーのような現代音楽的なものを使っていた。いわゆるコンテンポラリーダンスの本格的なトレーニングは主にインドネシアで受けているようだ。
▼Pichet Klunchun, Pichet's Code
庭から母屋を抜けて反対側にある小さな半屋外の建物。本来は何のための施設なのかよくわからないが、中央に細長い舞台のようなものがある。ピチェ・クランチェンの新作ソロ。最初に床にチョークで丸、三角、四角を画くのは、彼自身によるコーンの分析の中でも出てきた要素だろう。その後、紙を上から落として、その落下する動きを腕で表現する、ということを何度か繰り返し、コーンの動きを使ったフォーサイス風の即興へ。タイトル通り、Codeを見せるということなのだろうが、振付作品として「楽しめる」というところまではまだちょっと距離がある。
▼Jecko Siompo, Tikus Tikus
前にジャカルタでも見たことのあるデュオ作品だが、近距離で改めて見て、度肝を抜かれた。動きのフレーズとか、ちょっとしたエピソードのようなものの、極度に短い断片の、呆れるほど忙しない連鎖。バネが完全に殺されていて、動きが一切伸び縮みせず、ひたすら細かい急停止・急発進、パワーだけが眼前に迫って来る。手首を10センチ動かすにも加速なしでいきなり最高速度が出る感じなので、動きに起伏(ドラマ)がない。他に類のない独特の振付言語といっていいだろう。パートナーは長い間バレエをやっていた女性だが、二人の動きの質がほとんど同じというところにも驚かされる。
▼Dick Wong + Wannasak Sirilar "Kuck", Encounter #1
香港のパフォーマンス・アーティストが、タイの役者を迎えて作った新作。まずジャンケンをして、負けた方が立ち、勝った方は椅子に座る。立っている方が何か短い動きをする。他方が「ノー」と言うと、別の動きをやる。やがて「イエス」が出ると交代。さっきの動きに、別の動きを続けて作る。これを繰り返して、トリシャ・ブラウンの Accumulations のような感じで一続きの振りを拵え、二人で踊る。またジャンケンをして、どんな風に踊るかを決める。「ピチェ風に踊る」というのを Kuck がとても巧くやって、盛り上がった。さらにラジオが持ち込まれて、相手が指定した音で踊る。最後は互いの顔写真のパネルにペンで好きなように手を加え、それぞれ見合って、終わる。単に踊るのではなく、踊るという行為のパフォーマティヴィティに照準した作品で、シンプルながら知的で面白い。動きそのもののや、解釈もあるが、それ以上に、動きを考えているところとか、考えながら動いていたりする様子、そして言葉以上に目配せや呼吸でコミュニケーションする二人の意識の動きが、まるで手に取るようにわかる気がして、ドキドキさせられる。Kuck は現代演劇の女形の役者らしく、愛嬌のあるキャラクター。
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