Batsheva Dance Company, Mamootot
2005 Next Wave Festival.
NY, The Mark Morris Dance Center, James and Martha Duffy Performance Space.
オハッド・ナハリンの2003年初演作。スタジオのような空間で、客席は中央の舞台を四方から囲みわずか二列のみ。はじめに女性のダンサーが1人出てきて、無音のまま長々と踊り、後から残りの8人が加わる(男4女5。以後ダンサーの出ハケは主に、客席の中に点々とあるイスが使用される)。無音のユニゾンが終わるとポップソング(なぜかほとんどが日本の曲。ヤプーズ、高木正勝、その他多数)がかかり、曲が終わるとまた誰かが踊り出す。ソロと群舞が多い。こうして禁欲主義のようなものをかなり強引に観客に押し付けてくるのだが、実際振付がとにかく面白い。今まで見てきたナハリンのスタイルを改めてじっくりと堪能することができた。ほぼ常に腰が落ちていて重心が低く、それでいて胴のひねりを多く使って不安定な体勢から体勢へとアクロバティックに流れていく。バランスの崩れそうな危うくスリリングな動きであるにもかかわらずリリース的な重力の見せ方が全くなく、全身が床に根を張ったように安定している。バネのような反動もかなり抑制されており、スピードの可変量(加速度)が均質なので、確かに見ていて硬質というか無味乾燥な印象はある。コンタクトも使っていないし、即興らしき部分もない。決してエキサイティングな舞台とはいえないだろう。それでも動きの造形の幅の広さを見ることは、それだけで十分刺激的だった。体へのイマジネーション(イメージ化の可能性)が広がる。「動き」は「イメージ」を変化させる。踊る体を見ることは、体についてもっているイメージが刻々と揺すぶられ覆され、別のイメージへの可能性にさらされるということだ……。しかしほぼ全編通して凝り固まったストイックな流れでありながら、それに徹し切れていないところはどうも歯切れが悪く感じる。不自然な姿勢で舞台中央に寝た1人の周囲に全員が集まってきて同じように床に寝てみせるシーンなどは陳腐なほどに「死」を連想させるし、終わり近くなって急に男のヌードがあったり、性的な仄めかしのあるリフトがあったり、観客一人一人の目を見つめたり握手して回ったり、ありきたりなアイディアが現れてくる。最後は女性が突き出した肘に別の女性が噛み付いて終わる。これだけ地味に引っ張っておいていきなりそんなことをされても困ってしまう。衣装は七部袖と膝丈のつなぎでくすんだピンクや緑、青など、体は白く塗っている。62分。
2005 Next Wave Festival.
NY, The Mark Morris Dance Center, James and Martha Duffy Performance Space.
オハッド・ナハリンの2003年初演作。スタジオのような空間で、客席は中央の舞台を四方から囲みわずか二列のみ。はじめに女性のダンサーが1人出てきて、無音のまま長々と踊り、後から残りの8人が加わる(男4女5。以後ダンサーの出ハケは主に、客席の中に点々とあるイスが使用される)。無音のユニゾンが終わるとポップソング(なぜかほとんどが日本の曲。ヤプーズ、高木正勝、その他多数)がかかり、曲が終わるとまた誰かが踊り出す。ソロと群舞が多い。こうして禁欲主義のようなものをかなり強引に観客に押し付けてくるのだが、実際振付がとにかく面白い。今まで見てきたナハリンのスタイルを改めてじっくりと堪能することができた。ほぼ常に腰が落ちていて重心が低く、それでいて胴のひねりを多く使って不安定な体勢から体勢へとアクロバティックに流れていく。バランスの崩れそうな危うくスリリングな動きであるにもかかわらずリリース的な重力の見せ方が全くなく、全身が床に根を張ったように安定している。バネのような反動もかなり抑制されており、スピードの可変量(加速度)が均質なので、確かに見ていて硬質というか無味乾燥な印象はある。コンタクトも使っていないし、即興らしき部分もない。決してエキサイティングな舞台とはいえないだろう。それでも動きの造形の幅の広さを見ることは、それだけで十分刺激的だった。体へのイマジネーション(イメージ化の可能性)が広がる。「動き」は「イメージ」を変化させる。踊る体を見ることは、体についてもっているイメージが刻々と揺すぶられ覆され、別のイメージへの可能性にさらされるということだ……。しかしほぼ全編通して凝り固まったストイックな流れでありながら、それに徹し切れていないところはどうも歯切れが悪く感じる。不自然な姿勢で舞台中央に寝た1人の周囲に全員が集まってきて同じように床に寝てみせるシーンなどは陳腐なほどに「死」を連想させるし、終わり近くなって急に男のヌードがあったり、性的な仄めかしのあるリフトがあったり、観客一人一人の目を見つめたり握手して回ったり、ありきたりなアイディアが現れてくる。最後は女性が突き出した肘に別の女性が噛み付いて終わる。これだけ地味に引っ張っておいていきなりそんなことをされても困ってしまう。衣装は七部袖と膝丈のつなぎでくすんだピンクや緑、青など、体は白く塗っている。62分。