dm_on_web/日記(ダ)

ダンスとか。

珍しいキノコ舞踊団 『FLOWER PICKING』

2004-03-11 | ダンスとか
目黒・CLASKA。
会場はリノヴェーションによって復活したオシャレホテル。外観も内装も「渋い」というよりむしろ「わびしい」テイストで、一階のロビー&ラウンジなどの薄暗さなどは何だかカウリスマキ風。カフェのテーブルでのてんやわんや状態からダンスが始まり、やがて彼女らの後を追うように観客は階段で二階へ上がる。通された先はなぜかギャラリーのようなホワイト・キューブのスペースで、ここでダンスが展開され、しばらくするとまた観客の移動があるものの、この部屋からは出ず、そしてヴィデオがあり、レクチャーがあって、観客は教わったダンスを踊りながら大移動……なのだが、部屋から出たと思ったら階上へは向かわず、通路を一周してまた帰って来てしまう。そしてまた元の席へ戻ってダンスが少しあり、それで終了。正味90分強。びわ湖ホール版は「この場所を使って何ができるか?」というところから構想されたのであろう遊び心満載のプログラムで、観客は「舞台裏ツアー」的なノリでガヤガヤ移動しながら次々に仕掛けられたアトラクションに驚喜したのだが、正直今回は何でここでやったのかあまりよくわからない。キノコが久々に狭いハコでやって、そのダンスを間近で見られたところが美味しかったのか。確かに美味しかった。踊っているダンサーたちにマイクが回されリレーのように歌を歌い継いでいく場面などはとりわけ、異様なまでに楽しかった。……しかしどうも、こう肩肘張って「評価」を下すのが野暮に思えてしまい、そこがまたキノコ独特である。「骨抜きにされる」というか「ほだされる」というか、幼児退行を否定することの方が幼児退行よりも幼稚に思えてくる。この意図的な幼児退行の振舞いに対してリアル幼児の幼児性は周回遅れの位置にあり、両者はスレスレでズレながら並行している。「ダンス=享楽的=バカ」という(それこそ単純素朴な)イメージとの危うすぎる距離感に珍キノコのアイデンティティの全てがかかっているといっても過言ではなかろう。しかし、ということは同時にまた、場の空気を読んで積極的に幼児退行する人の方が大人であり、空気を読めずにポカーンとしている人の方が子供であるということにもなりはしないだろうか。いや、そもそもノレない人を作り出してしまったとしたらその時点でキノコの全体主義は失敗というべきなのだろうか。柱が邪魔で見えないとか。混雑しすぎて動線が明瞭でないとか。いかにも「人畜無害」で「カジュアル」なようでいて、解釈(というか受容の仕方)の幅は案外狭い。
コメント