新型コロナの変異株は、
武漢株→α株→デルタ株→オミクロン株
と変遷してきました。
日本では、
2022年1~3月:BA.1/BA.2
2022年4月~:BA.5
と、オミクロン株とその派生株が続いており、
オミクロン株の息が長いことがうかがえます。
2022年12月に、XBB.1.5という株が話題に上るようになりました。
これもオミクロン派生株で、オミクロン株(BA.2.75とBA.2.10.1)の組み換え体である「XBB」と呼ばれる変異株の子孫であり、BA.5 と比べると病原性は同等、しかし免疫逃避しやすい傾向があるとのこと。
アメリカで急速に増加しています。
■ 米国で急拡大、オミクロン株の派生型「XBB.1.5」とは?:新型コロナウイルスと世界のいま
SANAE AKIYAMA(2023.01.06:WIRED)
日本でもXBB.1.5の足音がだんだん大きくなってきました。
忽那先生の書いた記事を紹介します。
■ 日本、中国など海外の新型コロナウイルス変異株の状況は?アメリカで急激に広がるXBB.1.5の特徴は?
忽那賢志:感染症専門医(2023/1/8:Yahooニュース)より抜粋;
2023年1月…現在の日本や海外での変異株の状況についてご紹介します。
◇ 日本では現在もBA.5が主流
日本での変異株の移り変わり(https://covariants.org/より作成)オミクロン株が世界に現れたのは2021年11月ですが、約1年経過した現在もオミクロン株の亜系統が99.9%を占めており、オミクロン株以外の系統の変異株はほとんど見つかっていません。
日本では、第6波が起こった2022年1月頃からオミクロン株BA.1が主流となり、その後BA.2に置き換わり、第7波の初期からBA.5に置き換わっています。今も日本ではBA.5が半分以上を占めているという状況です。
東京都の変異株の割合の推移(東京都. モニタリング項目の分析. 令和5年1月5日公表)現在、日本でもBQ.1、BF.7、BN.1などオミクロン株の別の亜系統が増えてきていますが、これまでのBA.1、BA.2、BA.5の急激な広がり方と比べると非常に緩徐な増え方になっています。
このことは、現在少しずつ広がっているこれらの変異株が、BA.5と比べて極端に感染力や免疫逃避が強いわけではないことを示唆しています。
◇ 中国では現時点では新たな変異株の報告はない
爆発的な感染者の増加が報告されている中国ですが、1月5日時点で・・・BF.7やBA5.2などすでに中国以外でも報告されている変異株ばかりであり、現時点で中国で未知の変異株が広がっているということはなさそうです。
・・・
◇ アメリカではXBB.1.5が増加
アメリカ合衆国における変異株の割合の推移(CDC. COVID Data Tracker/Variant Proportions)一方、アメリカではBA.5から徐々にBQ.1系統(BQ.1/BQ.1.1)が主流になってきていましたが、2022年12月からXBB.1.5という組換え体が急激に増加してきています。
特にアメリカの東側の地域では、すでにXBB.1.5が半分以上を占めている地域も出てきています。
Xで始まる変異株は組換え体を表しており、XBBはBJ.1とBM.1.1.1の組換え体です。
組換え体は、2種類以上の変異株に同時に感染することで、感染者の体内でそれらの遺伝子が混ざり合って発生するものです。
新型コロナウイルスはヒトだけでなく動物にも感染することがあるため、動物の体内で組み換えが起こることもあります。
複数の変異株が同時に流行している状況下における新型コロナウイルスの組換えは珍しいことではなく、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、いくつかの組換え体が確認されており、これまでもデルタ株とオミクロン株との組換え体であるXD、XF(通称デルタクロン)やBA.1とBA.2との組換え体であるXEなどがありました。
しかし、これまではこれらの組換え体が他の変異株よりも感染力が強く拡大したという事例はありませんでした。
しかし、このXBBはシンガポールで主流となり、そのXBBから派生したXBB.1.5がアメリカで拡大しようとしています。
◇ XBB.1.5は免疫逃避が強く、ACE2受容体への親和性が高い
このXBB.1.5という組換え体は、過去の感染やワクチン接種によって得られる免疫から逃がれる性質(免疫逃避)が強いという特徴があります。
そもそも免疫逃避はオミクロン株全体に共通する特徴ですが、XBB系統は特にその傾向が顕著であることが分かっています。
つまり、これまでのオミクロン株と比べても、過去に感染した人やワクチンを接種した人も感染しうるということになり、従来のオミクロン株よりも感染者が増えることが懸念されます。
また、XBB.1.5は免疫逃避だけでなく、ACE2受容体への結合力が強いことが示され・・・それだけ感染力が強くなっていることを示唆しています。
◇ XBB.1.5の重症度は?
ニューヨーク州における新型コロナの新規感染者数および入院患者数の推移(Johns Hopkins大学 CORONAVIRUS RESOURCE CENTERより)では実際に、このXBB.1.5が広がると感染者や重症者は増えるのでしょうか。
・・・XBB.1.5の重症度については、今後のデータの集積を待つ必要があります。
◇ 私たちにできることは?
日本では、1月4日時点での公開情報ではXBB.1.5は検出されていません。
・・・私達一人ひとりができることに大きな変わりはありません。
この3年間で身についた基本的な感染対策をしっかりと続けていきましょう。
また、XBB.1.5も含め世界中で広がっている変異株は全てオミクロン株の亜系統であることから、効果の程度に差はあると思われるものの、オミクロン株対応ワクチンによる感染予防効果は従来のmRNAワクチンよりも高いと考えられます(XBBに対してはオミクロン株対応ワクチンの接種によって中和抗体の上昇が得られたと報告されています)。
ぜひワクチン接種をご検討ください。