徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

おたふくかぜで難聴 2年間で314人

2017年09月06日 08時16分01秒 | 小児科診療
 まだ定期接種化していないおたふくかぜワクチン。
 接種を希望すると有料で、副反応発生時の補償も定期接種より少なくなります。

 おたふくかぜの合併症として、無菌性髄膜炎、難聴と精巣炎が有名です。
 無菌性髄膜炎は、細菌性髄膜炎(原因はヒブや肺炎球菌)と異なり一過性・軽症で済むことがほとんどです。
 しかし難聴は治療法がなく、一生不自由を抱えて生活することになります。
 私の身近にも後輩の小児科医がおたふくかぜの後遺症で片側難聴を抱えています。
 精巣炎は思春期以降の男性がかかると頻度がグッと上がります。程度により男性不妊の原因になることは皆さんご存じでしょう。

 小児科学会は以前から「ムンプス難聴(おたふく風邪の後遺症としての難聴)対策にワクチンの定期接種化を!」と要望してきましたが政府の対応は鈍く、未だ実現していません。
 某女優が訴えインパクトに勝ったHPVワクチンに先を越されてしまいました。

 このたび、ムンプス難聴に関して耳鼻科学会による大規模な調査が行われ、その集計が報告されました。

□ 「2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査」(日本耳鼻咽喉科学会)

 その記事を紹介します;

■ おたふくかぜで難聴 2年間で314人に上る
2017年9月5日:NHK
 おたふくかぜにかかり難聴になった人が、去年までの2年間に全国で少なくとも314人に上ったことが日本耳鼻咽喉科学会の初めての調査でわかりました。学会はおたふくかぜの重症化を防ぐため、ワクチンの接種を受けるよう呼びかけています。
 「流行性耳下腺炎」いわゆるおたふくかぜは子どもを中心に流行し、発熱や耳の下の腫れを引き起こすウイルス性の感染症です。
 日本耳鼻咽喉科学会が、耳鼻科がある全国およそ8000の医療機関を対象に、去年までの2年間に、おたふくかぜにかかり難聴になった人の数を初めて調査しました。
 その結果、全国で少なくとも314人が難聴と診断され、このうち14人は両方の耳が難聴になっていました。難聴になった人を年齢別に見ると、10歳未満が49%と半数近くをしめたほか、10代が22%、20代が7%、30代が11%などとなっています。
 学会では、おたふくかぜによる難聴は治療で回復させるのが難しいとして、重症化を防ぐためにワクチンの接種を受けるよう呼びかけています。またワクチンが現在、任意の接種となっていることから、国に対し公費で接種が受けられる定期接種に含めるよう求めることにしています。
 日本耳鼻咽喉科学会の守本倫子乳幼児委員長は「保護者は、おたふくかぜの後遺症に苦しむ人が大勢いることを知って、できるだけ子どもにワクチンを接種してほしい」と話しています。
おたふくかぜで難聴になると…
 おたふくかぜによる難聴は、ウイルスが耳の奥にある内耳と呼ばれる部分にダメージを与えることで起こります。
 日本耳鼻咽喉科学会によりますと、片方の耳が難聴になるだけでも会話が聞き取れなかったり、人や自動車などが近づいてくる方向がわからなくなったりして、生活に支障が出ることがあるといいます。
 さらに両耳が難聴になると、補聴器をつけたり、音声を電気信号に変えて脳に送り込む人工内耳と呼ばれる装置を埋め込むなどの処置が必要となるケースもあるということです。


 日本政府・厚生労働省は学会などアカデミズムの要望だけでは動きません。
 国民が困って市民運動・社会運動にならないと(選挙で勝てる得点にならないと)対応してくれないのが現状です。

 難聴を抱えて一生を過ごさざるを得ない子どもを1人でも減らすために、ワクチンの定期接種化を期待したいと思います。
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