徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「太もも予防接種」導入後1年を経過して

2013年05月15日 07時35分35秒 | 小児科診療
昨年5月に以下の「太もも予防接種導入記」を書きました。

「太もも予防接種」導入記
 予防接種の世界では「日本の常識は世界の非常識」の数々がまかり通っています。 接種ルートと接種部位もそのひとつ。 世界では「不活化ワクチンは筋肉注射」が標準ですが、日本はなぜ...


あれから1年が経過し、現在当院ではゼロ歳児には太もも接種が標準です。
今実感しているメリットとデメリットを挙げてみます;

よかったこと
・接種可能面積が広いのでためらうことなく同時接種が可能。また、腕へ接種していたときに気になった前回接種部位のしこりを避けることが可能。生後2ヶ月の赤ちゃんの腕に同時接種を繰り返すとしこりでボコボコになる傾向あり(一過性ですが)。
・皮下脂肪が多い場所であり深めに針を刺せる。すると、発赤・腫脹などの局所副反応が軽くなる。
・赤ちゃんは抑えられているときは泣くけれど、終了して抱き上げると泣き止む傾向があり、腕に接種していた当時の「いつまでも泣き止まない」子が減った印象がある。
・お母さんが中心になって抑えてもらうことにより「この子の健康のために接種するのだから私がしっかり抑えなくちゃ」という意識が芽生えやすい。

気になること
・慣れていない、また「予防接種はしてもらうもの」という意識のお母さんは抑え方が甘いのでサポートと啓蒙が必要。
・痩せているお母さんは太ももに挟もうとしてもスカスカで固定不十分になる傾向あり。
・首が据わっていない生後3ヶ月未満の赤ちゃんには抑え方の工夫が必要になる。

・・・総じてプラス効果が勝っていると思います。全国的にはどれだけ普及しているのか(とくに小児科医以外に)、知りたいところですね。

一方、近年「貼るワクチン」の開発も進んでいることが聞こえてきます(↓)。
数十年後、現在行っている注射針を使用した同時接種を「野蛮な医療だった」なんて批判される時代が来るかもしれませんね(苦笑)。

貼ってインフルエンザ予防 阪大などワクチン開発 臨床で効果確認
(2012/11/17 日本経済新聞)
 創薬ベンチャーのコスメディ製薬(京都市、神山文男社長)と大阪大学は、皮膚に貼って使うインフルエンザワクチンを共同開発した。阪大が実施した人への臨床研究で有効性を確認したのは初めてという。貼るだけで済むため注射が要らず、ワクチンも保存しやすくなる。大手製薬会社などと研究を進め、5年後にも実用化を目指す。
 開発したのは直径1センチ程度の丸いパッチ。皮膚に貼り付ける面に微細な突起が230本ついている。突起は根元部分の直径が0.16ミリメートル、先端は0.04ミリメートルで、高さは0.8ミリメートル。貼ると皮膚に刺さり、突起部分に注入してある成分が溶けて吸収される。突起は小さいため、刺さっても痛みはほとんど感じない。
 健康な19人を対象に、3種類のインフルエンザワクチンで実験した。突起に注射と同じ必要量(15マイクログラム)を入れて6時間貼った。3週間後に体内の抗体の量が欧州医薬品庁(EMA)が定める基準を満たしていることを確かめた。
 ワクチンは通常、空気接触などによる酸化を防ぐため、冷温で管理する。突起内にワクチンを密封すれば酸化しにくくなり、常温で保存できる。消費期限も1年以上に延びるという。
 貼るワクチンが実用化すれば、注射技術を持つ医師や看護師がいない場所でも使えるようになる。使用時の痛みがほとんどないため、子どもに接種しやすい。ワクチンを手軽に使えるようになれば途上国などで需要が期待できる。

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