徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

小児科医の機嫌が悪くなるとき

2022年02月01日 07時43分49秒 | 小児科診療
数日前に「Google map の口コミに答えて」とう文章を書きました。

元々愛想がなく、不機嫌そうに見えて評判の悪い私ですが、
さらに機嫌が悪くなる場面が確かにあります。

今回はそのことについて書かせてください。

1.自分の方針と異なる診療を見つけたとき

これにはいくつかのパターンがあります。

多いのが「風邪患者を抗生物質漬け」にする医師。
近隣では耳鼻科医にその傾向がありますが、
他の地域では小児科医でもそのような処方をする方もいて、
「〇〇科の医師」というわけではないようです。

大分周知されてきましたが、
風邪の原因の90%はウイルスが原因であり、
残りの10%が細菌ほかです。

いわゆる抗生物質は細菌撃退用の薬であり、
ウイルスには効きません。

つまり、風邪症状の全員に抗生物質を処方するということは、
9割の患者さんに無駄な治療をしていることになります。

そして抗生物質には、腸内細菌そうを乱すので下痢したり、
まれながらアナフィラキシーの副作用もあります。

以上のことはガイドラインにも書いてあることで、
私の独断ではなく、日々、知識をアップデートしている医師には常識です。

それから、「風邪薬と称してアレルギーの薬を処方」する医師。

これも近隣では耳鼻科医に多いのですが、
地域によっては小児科医でもいると耳にします。

これは、いわゆる“鼻水止め”のペリアクチンをいう薬を避けるために生じた現象のようです。

その医院では、風邪の患者数だけアレルギー性鼻炎や喘息患者がいることになります。
保険審査で問題にならないのが不思議ですね。

当院では漢方薬にシフトしており、
“苦い漢方薬を飲む”というハードルを越えた方は、
逆に手応えがあるのでリピーターになる患者さんが多いです。

それから、「ステロイド内服薬をその説明なしに処方」している場合。

これは皮膚科医に多いです。

湿疹がひどいときに、ステロイド外用薬と一緒にステロイド内服薬も処方するパターン。
別にそれが悪いわけではありませんが、
説明がないのが問題だと思うのです。

当院ではステロイドを内服している患者さんは、
基本的に予防接種を避けて延期しています。

ステロイドは炎症を抑える薬ですが、
免疫力も抑えるため免疫がつきにくくなります。
つまり予防接種をしても“やり損”になる可能性があります。

なので、他の医療機関に通院している人は、その処方内容をしっかりチェックする必要があります。

以上は、患者さんに対して不機嫌になっているわけではなく、
患者さんの向こうにいる他の医師に対して不機嫌になっている状況です。
お気を悪くなさらないでください・・・
といっても、区別できませんよね(^^;)。


次のパターンとして、

2.患者さんが「この薬ください」と指定してくる場合

があります。

他の医療機関に通院していて、都合によりたまたま当院を受診した場合や、
里帰り分娩で一緒に帰省したお兄ちゃん・お姉ちゃんに多いです。

専門が同じ医師でも、治療方針が全く同じということはなく、
微妙に違うのがふつうです。

そして、自分が処方した薬には責任があります。

ほかの医師が処方した薬を患者さんの希望通りに処方して、
もし副作用が発生した場合は私の責任になります。

なので、いらぬリスクを伴うことになり、私は基本的に対応していません。

例えば、ヒルドイド。

近年、アトピー性皮膚炎に使用する保湿剤としてヒルドイド(=ヘパリン類似物質)がベストセラーで、この塗り薬を希望される方が散見されます。

当院では別の保湿剤を使用しているので処方できない旨を説明すると、
今度は途端に患者さんが不機嫌になります。
その場合は、市販されていますのでご購入ください、と誘導しています。


・・・前回と今回、読み返すと私は「頑固じじい」路線をまっしぐらに進んでいますね。

まあ、あと数十年の人生、
仕事は“死ぬまでの暇つぶし”ですから、
自由にやらせていただきましょう。

昨日、石原慎太郎氏が亡くなりました。
生前の元気な時の映像がテレビから流れました。
特に印象的だったのは、
「これからも好きなことを言って、
 好きなことをやって、
 みんなに恨まれながら死んでいきたい」
というコメントでした。

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