徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

“痛い”インフルエンザ検査はやり方が悪い?

2018年02月01日 20時16分29秒 | 小児科診療
 冬は、熱が出る度にインフルエンザ迅速検査を受けることになる、子どもにとっては「魔の季節」。
 「鼻グリグリ」がトラウマになり診察中ずっと泣いている子どもや、逃げ回って暴れる子どもも見かけます。
 インフルエンザ迅速検査には“コツ”があると思われ、私なりの工夫を紹介してみます。

 まず、当院では迅速検査キットを3種類用意しています。
スポットケムIL(アークレイ社)・・・6人分一度に検査できて、機械が自動判定してくれる優れもの
クリアビュー Influenza A/B(三和化学研究所)・・・「鼻腔ぬぐい液」だけではなく「咽頭ぬぐい液」や「鼻かみ液」も検体として使用可能。
イムノトラップ インフルエンザA・B(富士フイルム/和光純薬株式会社)・・・なんと1分で判定可能(!)でも検査結果の判定が見にくくて微妙。

 一番痛くない方法が「鼻かみ液」なので、これを優先的に使えばいい、という意見もありましたが、十分取れないこともありますし、同じ検査キットで上咽頭ぬぐい液と比較すると、陽性でもラインがうすく出る印象があり、やはり粘膜を擦る方がベターだと思います。

 2015年時点で販売されているインフルエンザ迅速診断キットの一覧表を見つけました。た、たくさんありますねえ。
 実際に小児科医が使用しているキットのランキングを見つけました。



 ムムッ、当院採用の検査キットは少数派ですね。
 メインで使用しているスポットケムに至っては、なんとゼロ。

 まあいいか。

 それから、綿棒も複数用意しています。
 小学生以上は木製の細くてまっすぐの綿棒、乳幼児には、プラスチック製でさらに細くしなるタイプの綿棒を使っています。
 これらを駆使して、その子に最適の方法を選択しています。
 「インフルエンザ迅速検査が痛いのはやり方が悪いからである」という気になる記事を見つけましたので紹介します。

■ インフルエンザは「診断必須」、感染防止の視点で
2017年11月30日:m3.com)より抜粋
◇ 鼻腔拭い液採取のコツは「鼻腔底をはわせる」
 インフルエンザの迅速診断検査が痛いのは、やり方に問題がある場合もあります。鼻腔拭い液の採り方を間違えている医師も多いのではないでしょうか。
 インフルエンザの迅速検査では、鼻腔の奥に長い綿棒を挿入し、鼻咽頭拭い液を採取します。粘膜に触るので、違和感やちょっとした痛みはあるかもしれませんが、コツを押さえれば「飛び上がるような激痛」とはなりません。


(廣津氏提供)

 鼻腔拭い液を採取するコツは、鼻腔底に沿って抵抗を避けながら時間をかけてゆっくりスワブを進めることです。スワブを軽く持ち、鼻腔開口部を少し押し上げるようにして、鼻腔底をはわせるようにゆっくり進めて、抵抗があれば一旦スワブを少し後退させ再び前進します。抵抗が強いようであれば、反対の鼻腔で試みるとうまくいく場合が多いようです。

◇ 「陽性が出ない」原因は心意気と粘り不足?
 もう一つ、インフルエンザの迅速検査には「発症すぐだと陽性が出ない」と誤解されているという問題があります。実際には検体がきちんと採れていないから偽陰性という場合があるのではないかと思っています。
 インフルエンザを疑って検査するのであれば、絶対に鼻腔の奥から鼻汁を採らなければなりません。
 確かに、インフルエンザの発症初期はまだ鼻汁が出ていない場合が多いのですが、その段階でも、スワブを奥まで入れた状態で数十秒置けば、その刺激で鼻汁が分泌されてきます。分泌されるまで待って、そっと抜きます。そして、スワブ全体に鼻汁が染みて、表面が粘液で十分潤っていることを確認します。スワブ全体に染み渡っていなければもう1回試みます。このしつこさ(粘り強さ)も大切です。



 記事の中で「スワブ(=綿棒)を奥まで入れた状態で数十秒置く」とありますが、これは小児科では無理ですね。

 綿棒を先に進める方向は、確かに大切です。
 TVで紹介される例では、たまに綿棒を上向きに進めていることが医師を見かけますが、あれはまずい。
 解剖学的には咽頭後壁をなぞる検査ですので、綿棒の先は水平に進めなければなりません。
 結構奥まで入り、中学生以上では10cmくらい入ることもあります。

 痛いのは、綿棒を進める途中で鼻粘膜を擦ってしまうため。
 人間の鼻中隔(右の鼻と左の鼻の間の仕切り)はたいてい曲がっていてどちらかに偏っています。
 そのために狭くなった方の鼻腔に無理矢理押し込むと、痛くてたまりません。
 ちょっとでも抵抗を感じたら、もう一方の鼻でトライするのが痛みを回避するコツだと思います。

 困るのが、通年性アレルギー性鼻炎で鼻粘膜がパンパンに腫れて狭くなっている患者さん。
 どちらの鼻を選択しても狭いため、痛みを避けることが出来ません。
 重症例では鼻の穴が閉塞して(いつも口呼吸)綿棒が入らない。
 このようなときは、喉から綿棒を入れて上咽頭壁をぬぐう方法を選択します。
 それから、アレルギー性鼻炎がらみで鼻血が出やすい患者さんも鼻を避けるようにしています。

 以上、当院での迅速検査の裏事情を紹介しました。
 参考になれば幸いです。
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