昨日12月29日で2014年の診療が無事終了しました。
この時期になると「今年の十大ニュース」類が発表されますね。
目に付いたものを取りあげてみます;
■ 2014年の医療界10大ニュース
(2014/12/25 日経メディカル)
日経メディカル Onlineでは12月中旬、医師会員を対象に「2014年の医療界10大ニュース」の投票を実施しました。ここでは、その結果を紹介します。
ダントツの1位だったのは「STAP細胞」でした。理化学研究所(理研)がマスコミを集めた大々的な記者会見を行い、テレビや新聞に小保方晴子氏が華々しく登場したのは、1月の下旬のこと。割烹着で実験する彼女の姿とともに、リケジョ(理系の女子)が注目を集めたのもつかの間、論文に不正疑惑が持ち上がり、4月1日には理研が論文に捏造があったことを認めています。8月には、STAP細胞論文の執筆者の1人である理研の笹井芳樹氏が自殺。そして、この投票を実施している12月19日には、理化学研究所が検証実験の結果を発表し「STAP現象は再現できなかった」とする会見を開きました。始まりから終わり(?)までに約1年、まさに2014年を象徴するニュースといってよさそうです。
2位と4位に選ばれたエボラ出血熱とデング熱は、2014年の半ばごろから話題になりました。西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱は、12月下旬時点では日本に上陸していませんが、まだ現地で鎮圧には成功しておらず、その脅威は続いています。デング熱は、国内感染例が続々と見つかり、感染症として定着した可能性も指摘されていますから、2015年以降も対策が必要になりそうです。
そのほかスキャンダル系では、ディオバン問題をはじめとした臨床研究不正(6位)、東京女子医大病院のプロポフォール事故(8位)が上位にランクイン。投票対象にエントリーしていませんでしたが、自由記述欄には「全国で相次ぐ腹腔鏡下肝切除術での死亡事故」も重大ニュースとして挙がっていました。
新技術関連では、2014年に続々登場した新規糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」が5位にランキング。こちらも番外ですが、「iPS細胞の臨床応用、黄斑変性から」「C型肝炎でインターフェロンフリー療法が可能に」を推す声もありました。
一方、アメリカCDCがまとめた「2014年の重要な健康対策」は・・・
■ CDC,「2014年の重要な健康対策」トップ10を発表~エボラから処方鎮痛薬の過剰摂取まで今年の実績を総括
米疾病対策センター(CDC)は12月15日,2014年にCDCが実施した健康対策の中でも特に重要度の高いトップ10を発表した。筆頭に挙げられたのは,エボラウイルス病(EVD)対策だ。現在も続くEVDの流行に対しては,CDCの創設以来,人員面でも最大規模の対策が講じられたと説明。一方で,「今年のCDCによる健康対策はEVD対策だけではない」としており,トップ10には薬剤耐性菌や近年米国で深刻化している処方鎮痛薬の過剰摂取などの対策も並んだ。
◇ EVD対策は「CDC史上,最も複雑な課題」
2014年の健康対策トップ10(以下)の筆頭に挙げられたEVD対策に関し,CDCは「現在も続くEVDの流行は,CDCがこれまでに直面した課題で最も複雑なもの」と位置付けた。現地での検査・治療体制の整備でリーダーシップを発揮する一方,各州の保健省との連携により感染国からの帰国者の発熱や症状の追跡,感染疑い例の受け入れ施設の整備などを実施したと実績を振り返った。一方,CDC長官のTomFrieden氏は,EVD対策に関して「流行が発生した西アフリカでの感染を封じ込めない限り,米国民が100%安全であるとはいえない」とコメントした。
□ 感染症による新たな脅威への取り組み
1.エボラウイルス病
2.薬剤耐性菌
3.エンテロウイルスD68型
4.中東呼吸器症候群コロナウイルス
□ 感染症への継続した取り組み
5.HIV/エイズ
6.ポリオ根絶
□ 研究施設の安全性向上のための取り組み
7.研究施設の安全性
□ 死亡の最大要因における取り組み
8.心血管疾患
9.喫煙
10.処方鎮痛薬の過剰摂取
なお,今回発表されたトップ10では,「感染症による新たな脅威への取り組み」として4つの課題と対策が示された。EVDはその1つであったが,薬剤耐性菌も前年に引き続き重要な項目として示された。
その対策の進捗状況について,CDCは「ある程度は前進したが,依然として薬剤耐性菌への感染による死亡例は多く,重大な脅威であることに変わりはない」と強調。2015年も薬剤耐性菌や医療関連感染症は引き続き取り組むべき重要課題として位置付けた。
「感染症による新たな脅威」には米国内のEV-D68感染拡大,MERS-CoVなども
また,エンテロウイルスD68型(EV-D68)の米国内における感染拡大も「感染症による新たな脅威」に含まれた。この背景には,今年の夏以降,米国内ではまれにしか起こらないと考えられていたEV-D68感染による重症呼吸器疾患の報告があり,特に喘息を有する小児で増加した。
9月17日にはEV-D68による同疾患のアウトブレイクがPHO/WHOに通知された。CDCはEV-D68の迅速検査法を開発・導入し,調査を強化。8月から11月にかけて提出された2,600検体の約40%でEV-D68陽性であることが確認された。その後はEV-D68感染の報告は減少傾向にあるとしている。
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は2012年にサウジアラビアで初めて報告されたが,2014年には感染例の報告が大幅に増加。5月には米国で初の感染例(サウジアラビアでの活動後に帰国した医療従事者2例)が報告された。Frieden氏は「ボーダーレス化した世界では,いつMERS-CoVが米国内に入ってきても不思議ではないと考えられた。われわれはその可能性を視野に入れ,2012年から備えていた」と説明している。
◇ 処方鎮痛薬の過剰摂取で1日に44人が死亡
一方,トップ10には「感染症への継続した取り組み」としてHIV/エイズ対策とポリオ対策の2つが示された。HIV/エイズ対策に関しては,大統領緊急エイズ救済計画(PEPFAR)との連携により今年だけで770万人に抗レトロウイルス療法を,5,670万人にHIV検査やカウンセリングを提供できたと評価。ポリオに関しては,「根絶まであと一歩のところまで来ている」との見解が示された。
また,今年CDCの研究施設で研究職員が誤って不活性化されていない炭疽菌に接触するなどの事故が発生したことを踏まえ,研究施設での安全対策もトップ10に入った。CDCは「これらの事故から学んだことを,研究施設の安全性と効率性の向上につなげるべく,さまざまな取り組みに着手した」と説明。今後も取り組みを継続する姿勢が示された。
この他,トップ10には「死亡の最大要因」として心血管疾患(CVD),喫煙,処方鎮痛薬の過剰摂取の3つを挙げ,それぞれの対策を紹介。特に近年,米国で深刻化している処方鎮痛薬の過剰摂取に関しては,「米国では処方されたオピオイドの過剰摂取によって毎日44人が死亡している」と問題視。処方薬剤のモニタリングシステムを改善するために,CDCでは関連団体や州と連携した取り組みを展開しているという。
この時期になると「今年の十大ニュース」類が発表されますね。
目に付いたものを取りあげてみます;
■ 2014年の医療界10大ニュース
(2014/12/25 日経メディカル)
日経メディカル Onlineでは12月中旬、医師会員を対象に「2014年の医療界10大ニュース」の投票を実施しました。ここでは、その結果を紹介します。
< 2014年の医療界10大ニュース>
ダントツの1位だったのは「STAP細胞」でした。理化学研究所(理研)がマスコミを集めた大々的な記者会見を行い、テレビや新聞に小保方晴子氏が華々しく登場したのは、1月の下旬のこと。割烹着で実験する彼女の姿とともに、リケジョ(理系の女子)が注目を集めたのもつかの間、論文に不正疑惑が持ち上がり、4月1日には理研が論文に捏造があったことを認めています。8月には、STAP細胞論文の執筆者の1人である理研の笹井芳樹氏が自殺。そして、この投票を実施している12月19日には、理化学研究所が検証実験の結果を発表し「STAP現象は再現できなかった」とする会見を開きました。始まりから終わり(?)までに約1年、まさに2014年を象徴するニュースといってよさそうです。
2位と4位に選ばれたエボラ出血熱とデング熱は、2014年の半ばごろから話題になりました。西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱は、12月下旬時点では日本に上陸していませんが、まだ現地で鎮圧には成功しておらず、その脅威は続いています。デング熱は、国内感染例が続々と見つかり、感染症として定着した可能性も指摘されていますから、2015年以降も対策が必要になりそうです。
そのほかスキャンダル系では、ディオバン問題をはじめとした臨床研究不正(6位)、東京女子医大病院のプロポフォール事故(8位)が上位にランクイン。投票対象にエントリーしていませんでしたが、自由記述欄には「全国で相次ぐ腹腔鏡下肝切除術での死亡事故」も重大ニュースとして挙がっていました。
新技術関連では、2014年に続々登場した新規糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」が5位にランキング。こちらも番外ですが、「iPS細胞の臨床応用、黄斑変性から」「C型肝炎でインターフェロンフリー療法が可能に」を推す声もありました。
一方、アメリカCDCがまとめた「2014年の重要な健康対策」は・・・
■ CDC,「2014年の重要な健康対策」トップ10を発表~エボラから処方鎮痛薬の過剰摂取まで今年の実績を総括
米疾病対策センター(CDC)は12月15日,2014年にCDCが実施した健康対策の中でも特に重要度の高いトップ10を発表した。筆頭に挙げられたのは,エボラウイルス病(EVD)対策だ。現在も続くEVDの流行に対しては,CDCの創設以来,人員面でも最大規模の対策が講じられたと説明。一方で,「今年のCDCによる健康対策はEVD対策だけではない」としており,トップ10には薬剤耐性菌や近年米国で深刻化している処方鎮痛薬の過剰摂取などの対策も並んだ。
◇ EVD対策は「CDC史上,最も複雑な課題」
2014年の健康対策トップ10(以下)の筆頭に挙げられたEVD対策に関し,CDCは「現在も続くEVDの流行は,CDCがこれまでに直面した課題で最も複雑なもの」と位置付けた。現地での検査・治療体制の整備でリーダーシップを発揮する一方,各州の保健省との連携により感染国からの帰国者の発熱や症状の追跡,感染疑い例の受け入れ施設の整備などを実施したと実績を振り返った。一方,CDC長官のTomFrieden氏は,EVD対策に関して「流行が発生した西アフリカでの感染を封じ込めない限り,米国民が100%安全であるとはいえない」とコメントした。
□ 感染症による新たな脅威への取り組み
1.エボラウイルス病
2.薬剤耐性菌
3.エンテロウイルスD68型
4.中東呼吸器症候群コロナウイルス
□ 感染症への継続した取り組み
5.HIV/エイズ
6.ポリオ根絶
□ 研究施設の安全性向上のための取り組み
7.研究施設の安全性
□ 死亡の最大要因における取り組み
8.心血管疾患
9.喫煙
10.処方鎮痛薬の過剰摂取
なお,今回発表されたトップ10では,「感染症による新たな脅威への取り組み」として4つの課題と対策が示された。EVDはその1つであったが,薬剤耐性菌も前年に引き続き重要な項目として示された。
その対策の進捗状況について,CDCは「ある程度は前進したが,依然として薬剤耐性菌への感染による死亡例は多く,重大な脅威であることに変わりはない」と強調。2015年も薬剤耐性菌や医療関連感染症は引き続き取り組むべき重要課題として位置付けた。
「感染症による新たな脅威」には米国内のEV-D68感染拡大,MERS-CoVなども
また,エンテロウイルスD68型(EV-D68)の米国内における感染拡大も「感染症による新たな脅威」に含まれた。この背景には,今年の夏以降,米国内ではまれにしか起こらないと考えられていたEV-D68感染による重症呼吸器疾患の報告があり,特に喘息を有する小児で増加した。
9月17日にはEV-D68による同疾患のアウトブレイクがPHO/WHOに通知された。CDCはEV-D68の迅速検査法を開発・導入し,調査を強化。8月から11月にかけて提出された2,600検体の約40%でEV-D68陽性であることが確認された。その後はEV-D68感染の報告は減少傾向にあるとしている。
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は2012年にサウジアラビアで初めて報告されたが,2014年には感染例の報告が大幅に増加。5月には米国で初の感染例(サウジアラビアでの活動後に帰国した医療従事者2例)が報告された。Frieden氏は「ボーダーレス化した世界では,いつMERS-CoVが米国内に入ってきても不思議ではないと考えられた。われわれはその可能性を視野に入れ,2012年から備えていた」と説明している。
◇ 処方鎮痛薬の過剰摂取で1日に44人が死亡
一方,トップ10には「感染症への継続した取り組み」としてHIV/エイズ対策とポリオ対策の2つが示された。HIV/エイズ対策に関しては,大統領緊急エイズ救済計画(PEPFAR)との連携により今年だけで770万人に抗レトロウイルス療法を,5,670万人にHIV検査やカウンセリングを提供できたと評価。ポリオに関しては,「根絶まであと一歩のところまで来ている」との見解が示された。
また,今年CDCの研究施設で研究職員が誤って不活性化されていない炭疽菌に接触するなどの事故が発生したことを踏まえ,研究施設での安全対策もトップ10に入った。CDCは「これらの事故から学んだことを,研究施設の安全性と効率性の向上につなげるべく,さまざまな取り組みに着手した」と説明。今後も取り組みを継続する姿勢が示された。
この他,トップ10には「死亡の最大要因」として心血管疾患(CVD),喫煙,処方鎮痛薬の過剰摂取の3つを挙げ,それぞれの対策を紹介。特に近年,米国で深刻化している処方鎮痛薬の過剰摂取に関しては,「米国では処方されたオピオイドの過剰摂取によって毎日44人が死亡している」と問題視。処方薬剤のモニタリングシステムを改善するために,CDCでは関連団体や州と連携した取り組みを展開しているという。