徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

小児科開業医院における専門外来は可能か?

2013年03月05日 19時30分32秒 | 小児科診療
 勤務医時代に開業を考え始めた頃、診療の幅を広げられると希望に胸が膨らんだものです。

 「毎日アレルギー専門外来ができる」
 「15歳以降も引き続き診療できる」
 「自分が医者にかかる余裕のない子育て中のお母さん・お父さんの診療もできる」

 等々。

 しかし、蓋を開けてみれば風邪の患者さんの診療に忙殺され、上記のことはほとんど実現できていないのが現実
 
 ところが、最近ちょっと雰囲気が変わってきました。
 実は今年2月はインフルエンザ流行が一段落した後は患者さんが激減し、非常に暇になりました。
 夏以上に閑古鳥が鳴いている状態。
 すると、一人一人の患者さんにかけられる時間に余裕が出てきます。
 従来であれば待たせている患者さんが多くて説明を一部省くこともあり、「あの説明が足りなかったなあ」とあとで後悔したものでした。
 今は自分も納得する過不足ない説明が提供できているように思います。

 アレルギーの相談をご希望の患者さん、今がチャンスですよ!

 ただ暇な状態が続くと、診療所経営が危うくなるのが問題です(苦笑)。
 なかなかうまく行きませんね。

 日本の医療は外国と比べると「薄利多売」。
 振り返ると、昨年の2月はB型インフルエンザが流行して1日平均100人の診療をしていました。

 そこで思い出すのがこんなブラック・ジョーク。

<ある国際学会での雑談>
 日本の医師が、
 「患者さんを100人診ているんですよ」
 するとアメリカの医師が、
 「それはすごい。1週間に100人も診療するなんて!」
 と驚いたそうな。


 解説しますと、日本の医師は「1日に100人診療する」という意味で言ったのですが、アメリカの医師の感覚では「1週間に100人でも多い、1日で100人なんて考えつかない」というオチです。
 かの国では、専門外来の診療は一人に30分くらいかけるそうです。
 当然診療できる患者数が1日10人程度に限定されますが、それで収支がマイナスにならないような医療行政なのですね。
 アメリカでは医療費がべらぼうに高いと噂される所以です。
 日本で同様の診療をすると、すぐにその病院は赤字で潰れてしまいます。

 しかし日本の医療行政は、この状況を改善するどころか「改悪」し続けています。
 少子高齢化と共に膨らむ医療費を抑制しようと、1回当たりの診療報酬を年々少しずつ減らしてきました。
 するともっとたくさんの患者さんを診なければ経営が成り立たなくなり、一人にかける時間も少なくなりがちで「3分間診療」なんて言葉も生まれました。

 悪循環。

 では対策をということで「5分間診療しなければいけない」などというヘンなルールを数年前に作ったり(顰蹙を買ってすぐに消えましたが)。
 根本的対策は「じっくり診療しても経営が成り立つように医療行政を変えること」なのに、枝葉末節のすり替えばかりで呆れるばかりです。
 まあ、どこの世界でもズルをして金儲けをしようとする輩は存在しますので、それを防止するルールも作る必要がありますが。
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