徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザ迅速診断キットあれこれ

2016年03月09日 07時16分33秒 | 小児科診療
 当地域ではインフルエンザ流行がピークを越えつつあるところです。
 まだ幼稚園/小学校/中学校での学級閉鎖や学年閉鎖の話を耳にします。
 今シーズンはA型とB型の混合流行で、1月下旬の流行当初はA>B、3月現在ではB>Aが主流になっています。

 従来、

・A型は高熱でつらい
・B型は熱の勢いは弱いけど胃腸症状が目立つ

 とされてきました。
 しかし、今シーズンのA型とB型は症状から区別するのが難しい。
 A型を含めおしなべて軽症者が多いので、診断されても抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル)を希望する方は半分くらい。
 A型とB型が同時に陽性になった患者さんも数人いましたが、だからといって重症というわけではありませんでした。

 インフルエンザの迅速診断は、鼻クリクリ検査(綿棒を鼻の奥まで入れて拭う)が基本です。
 喉の後ろの壁をこすらないと検出感度が落ち、陽性率が低下します。
 当然、鼻の粘膜を綿棒でこすられて痛い。
 子どもは嫌がり、5歳~小学生で本気で嫌がると大変です。
 大人3人がかりで泣き叫ぶ子どもを抑え込んで行うことになります。
 検査する私も「トラウマにならないかなあ」と時々不安を感じるほど。

 実は、この「鼻クリクリ検査」には抜け道があります。
 当院では、インフルエンザ迅速診断キットを3種類用意しています。

1.スポットケム(アークレイ社)
2.クリアビュー(アリーア・メディカル社)
3.イムノトラップ(和光純薬)


 それぞれ特徴がありまして、長所を挙げると、
1:6人分同時に検査できるので流行期には便利
2:鼻をチーンとかんだ時に出た鼻水咽頭ぬぐい液(つまり口から綿棒を入れて喉を拭う)でも検査可能
3:結果が出るまでに1分しかかからない、などが売りです。

 当院では1をメインに使用し、どうしても鼻クリクリを嫌がる子には喉を拭う2を使う、あるいは学童には鼻をかんでもらって2を使う、などと使い分けています。
 ただ、発症初期には鼻水はあまり出ないので、結局クリクリやることになることが多くなりがち。
 それから、鼻を片方ずつうまくかめない子どもが多いことにも気づかされます。
 鼻のかみ方はこちらを読んで練習してください。

 1が一番検出率がよいわけですが、欠点があります。
 綿棒で鼻の奥をクリクリする際、途中で引っかかって綿棒が奥へ進められないことがあるのです。
 理由は、アレルギー性鼻炎で鼻の粘膜がむくんで狭くなっていたり、鼻中隔が歪んでいたり・・・。
 強行突破すると鼻血が出る可能性が高く、本人も痛がっている状態なので、撤退せざるを得ません。
 咽頭拭いへの切り替えを試みるも、大抵拒否されて強行しにくい。
 当然、検出率は落ちざるを得ません。

 というわけで、子どもが検査を拒否して受診を嫌がる時は、ぜひ「鼻クリクリじゃなくて、喉こちょこちょや鼻チーンでも大丈夫らしいよ」と説得してください(^^;)。
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