徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2015/16シーズンのインフルエンザ脳症速報

2016年03月07日 07時29分17秒 | 小児科診療
 インフルエンザの重症合併症である脳症。
 この発生数の増減が重症度のインパクトにつながります。

 今シーズンのインフルエンザは総じて発熱の勢いが弱い印象があります。
 高熱でグッタリして親が抱きかかえてくるという患者さんが少ないのです。
 検査で陽性を告げて診断しても、抗インフルエンザ薬を希望される方は半分くらい(例年は7-8割)で「元気だからいいです」とお帰りになり、治癒確認時も高熱が続いた記録はむしろ珍しい(ゼロではありません)。

 A型とB型の混合流行というのも特徴で、両方に続けて罹るお子さんが目に付きます。
 AとBが同時に陽性に出た子どもも3名いました。
 症状からA型とB型を区別できるかというと・・・難しい。
 B型に多いとされる胃腸症状(嘔気/嘔吐/腹痛/下痢)がA型にも認められますし、高熱で苦しむ印象のあるA型の熱の勢いがそれほどでもない。
 熱性けいれんを起こす子どもも少なく、例年待合室で熱性けいれんを起こす子どもが数名いるのですが、今年は今のところゼロ。

 では、インフルエンザ脳症はどうなんだろう?
 多発してメディアが騒ぐこともないなあ・・・と感じていたところに以下のニュースを見つけました;

■ インフルエンザ脳症が67例に、4人死亡
2016/3/7:日経メディカル
 今シーズンに報告されたインフルエンザ脳症は、第7週までに67例に達したことが分かった。うち4人が死亡している。
 国立感染症研究所がまとめている感染症発生動向調査によると、2015年36週から2016年7週までに、170例の急性脳炎が報告されていた。このうち、病型がインフルエンザウイルスだった症例を抽出したところ、この間に67例のインフルエンザ脳症があったことが分かった。
 症例の発生時期を見ると、2015年48週に1例目が報告された以降、50週からは毎週報告されており、症例数は流行の拡大とともに増加している。
 67例のうち死亡は4例で、2歳が1例、8歳が2例、40歳代が1例となっている。いずれもインフルエンザウイルスのタイプはA型だった。発生週を見ると、2015年50週に1例あったほかは、2週、5週、6週に1例ずつと今年になってからの発生していた。
 国立感染症研究所によると、新型インフルエンザ(A/H1N1pdm2009)が発生した2009/10シーズンに319例のインフルエンザ脳症が報告された。以降は、80例、88例、64例、96例と推移し、昨シーズンは101例が報告されている(IASR 2015;36:212-3.)。


 インフルエンザ脳症は、毎年100例前後発症し、そのうち1/3が死亡、1/3が後遺症、1/3が治癒するとされてきました。
 2005年に「インフルエンザ脳症ガイドライン」が整備されて以降、治療が標準化され死亡率が年々低下してきています。
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