徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子どもが頭を打った、さあ大変!

2021年02月21日 06時43分00秒 | 小児科診療
当院は小児科ですが、件名の相談者がよく来院します。
頭部打撲は外傷ですので、本来の担当は外科系ですが、「どこを受診してよいかわからない」小児患者さんは、とりあえず小児科を受診されます。

当然、頭蓋内出血リスクの高い患者さんは脳神経外科へ紹介しています。
その判断基準となるものがアメリカやカナダから公表されていますが、専門用語が多くて一般市民には理解できません。
当院では上記ガイドラインをまとめ、わかりやすい言葉に置き換えた説明プリントを作りました。
ただし、あくまでも「目安」なので、完璧ではありません。「ふだんと違う、おかしい・・・」と親の第六感が働いたら救急病院へ行くべきです。



頭を激しくぶつけたとき、頭の中の出血、脳へのダメージが心配になります。
保護者のやること・すべきことの順番は、
1.意識があるかを確認
2.ぶつけ方と症状を確認
です。

□ 緊急性がある場合
→ ひとつでもあれば
救急車搬送
・意識がない、ボーッとして反応が悪い
・けいれんしている
・おう吐が止まらない
・歩く・話すことがうまくできない
・ガマンできないほど頭が痛い
・出血が止まらない(傷が大きい、深い)

□ 緊急受診すべきかどうか迷う場合
 → 以下の一つでも当てはまるときは、頭部CT検査可能な病院の救急外来

(ポイント1)頭のぶつけ方
・高いところ(2歳未満は90cm、2歳以上は150cm)からの転落
・交通事故などの高速スピードで移動中(あるいは移動する物)に激しく頭をぶつけた
・誰かに突き倒された

(ポイント2)本人の症状・様子
・(一瞬でも、一過性でも)意識消失があった
・強い頭痛(乳児では強いグズリ)
・おでこ以外のコブ(2歳未満)
・さわってわかる頭蓋骨骨折(凹みや溝)
・様子がおかしい(眠りがち、元気がない、変におとなしい、遊ばない)
・パンダのように目の周りが紫色(眼底骨折の可能性)
・鼻や耳から血や血液混じりの液体が出ている

□ 緊急性がない場合
→ 
小児科開業医を受診(当日あるいは翌日)
・足が地面や床についた状態からの転倒や、歩行中に止まっている物へ頭をぶつけた
・すぐ泣き、その後ふだんと変わりない
・頭をぶつけて4~6時間後も症状らしきものがない

* 頭をぶつけた直後は元気でも、最低48時間は慎重に様子観察してください。まれに、数日後~数ヶ月後に症状が出てくることもあります。


・・・おおまかには、子ども自身の活動スピードでは大けがになることは少なく、自分以外の強い他力が働いた場合は重症化することがある、とイメージできます。
また、年齢(2歳未満、2歳以上)により基準が異なる(落下の高さなど)項目がありますね。

さらに当院はスマホ問診を導入しており、受診前に入力していただくと上記質問群が出てくるので、緊急性があるかどうかをその場で判断できて適切な医療へ誘導される仕組みになっています。

<参考>
■ 頭を打った小児、頭部C T 撮影は必要?
花木奈央(大阪大学公衆衛生学教室)
■ 日本小児神経外科学会小児頭部外傷時のCT 撮像基準の指針・提言

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新型コロナワクチン「コミナ... | トップ | 新型コロナワクチンを高齢者... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事