金融危機の行方、米大統領選を検証!
世界的に広がった金融危機はどこへ向かうのか?
米新大統領はどのような指導力を発揮するのか?
海外などで金融危機、米大統領選をどのように
報じているのか 伝えながら検証する!
司会 中村うさぎ(作家)
金子 勝(慶應義塾大学教授)
アンドリュー・デウイット(立教大学教授)
遠藤誠治(成蹊大学教授)
河村哲二(法政大学教授)
阿部重夫(ファクタ編集長)
2008年11月1日 ニュースにだまされるな!
(1)世界的な流動性の危機は終わらない
1.米欧日の協調利下げ期待で持ち直したかに見えるが、株価の乱高下(ボラティリティ)は、むしろいかに市場の不安感が高く、いかに流動性の危機が深刻かを示している。
http://paul.kedrosky.com/archives/2008/10/29/liquidity_then.html2.10月21日から、リーマン倒産に伴うCDSの現金支払決済が始まったが、Institutional Risk Analyst(週刊ニュースレター)の10月27日号によれば、CDS競売に参加しなかった金融機関が多く、彼らはこの債券を購入するために資金調達をしていることが、ドル・ライボーが上がっている要因の一つだろうという。
http://us1.institutionalriskanalytics.com/pub/IRAMain.asp
3.10月29日付ブルームバーグの調査記事によると、13.6米ドルの国際商品貿易のうち、90%は信用状及びそれと類似のファイナンスに依存しているが、現在の信用逼迫のせいで信用状のコストは増加したり(中国やトルコの場合は3倍)信用状況が拒否されたりして「危機状態」だ。世界銀行などが緊急資金で貿易を支えているが、資金規模が不十分かもしれない。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601109&sid=aPA4NMYtDIS4&refer=home
4.最近は、日本が受ける被害が非常に大きいという記事が目立つ。たとえば、10月30日付英エコノミスト誌の記事「バック・ツー・ザ・フューチャー」によれば、円キャリートレードが解消されつつあることで、円高や株価急落に陥っており、これらによって、輸出が減速したり大手金融機関のコア自己資本比率(7.4%から6.8%まで)が下がったりしていると、悲観的見通しを指摘している。
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=12522884
5.また10月30日付タイムズ紙は、多くの日本企業や家計が購入しているパワー・リバース・デュアルカレンシー債 (PRDC)がメルトダウンする危険性があるという。総額900億ドルに及ぶPDRCはかなり複雑な取引で、通貨市場の難題を一層悪化させる危険がある。
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/markets/japan/article5042278.ece
6.10月28日付ロシア通信社ノーボスチによれば、プーチン首相が米ドルでの貿易を段階的に縮小して、中ロ通貨立てに切り替えることを提案している。
http://en.rian.ru/russia/20081028/117991229.html
(2)住宅バブル崩壊は続く
1.英イングランド銀行が出した証券化商品と社債の損失見積もり額は2兆8千億ドル。それまで最大はIMFの1.4兆ドルの倍だ。今の公的資金注入額では足りない。イングランド銀行は世界金融制度に対する大型改革(規制の強化など)を要求している。
http://www.guardian.co.uk/business/2008/oct/28/economics-credit-crunch-bank-england2.金融安定化法の下で、不良債権化した証券化商品を買い取るにも、証券化商品の複雑さが壁になっている。
http://seekingalpha.com/article/102302-extreme-cdo-leverage-to-create-another-deleveraging-storm
http://seekingalpha.com/article/100870-will-synthetic-credit-derivatives-lengthen-the-credit-market-freeze
3.住宅価格下落が続く中、10月15日付ブルームバーグによれば、S&Pが、延滞率の増加のために約2800億ドルのオルトA債券のランク引下げを検討している。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aC8iPTs8ui4s
最近、サブプライムの延滞率もまた上がってきている。
http://www.housingwire.com/2008/10/27/subprime-delinquencies-piling-up-again/
さらに、プライム住宅ローンの差し押さえ率でさえ、昨年と比べて150%弱に増加しており、来年のオプションARM(ゆとりローンの金利変更)問題は非常に悪化する。
http://www.housingwire.com/2008/10/27/subprime-prime-mortgage-woes-diverge-during-q3/
4.7~9月の米GDPは0.3%減。GDPの7割を占める個人消費は3.1%減(対前月比でも0.3%減)となり1991年7~9月期以来17年ぶりにマイナスとなった。消費者信頼感指数も最低記録を更新して30ポイント台。ブラッククリスマスが来る。
http://www.nytimes.com/2008/10/29/business/economy/29econ.html
NY連銀によると、米国1050郡のクレジットカード延滞率は既に2%を超えている。
http://data.newyorkfed.org/creditconditionsmap/
5.米国労働統計局のデータによれば、U6(完全失業者+縁辺労働者+経済情勢のためにパートタイムで就業している者)/(労働力人口+縁辺労働者)の割合は去年9月の8%から11%(2008年9月時点)まで上がってきた。
http://www.bls.gov/news.release/empsit.t12.htm
(3)オバマの優勢が強まる米大統領選
1.カール・ローブ社の計算によっても、オバマは300以上を獲得する勢いだ。
http://andrewsullivan.theatlantic.com/the_daily_dish/2008/10/the-rove-map.html
2.アフリカンアメリカンが多い州では、投票率が高騰しそうだ。10月27日時点で、2004年期日前投票と比べて150%を超えている州もある。
http://www.fivethirtyeight.com/2008/10/harbinger.htmlピューリサーチセンターの調査によれば、期日前投票でオバマは53%、マケインは34%。また激戦州でオバマの優勢は強まってきている。
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2008/president/battleground.html
3.支持基盤が縮小しつつある米国の共和党では党内戦(右派対中立派)、ペイリンとマケインのグループ間の対立が悪化している。ペイリンは、今回の選挙で負けても、選挙後の右派リーダーとして連邦政治で役割を果たそうと狙っているようだ。
http://www.latimes.com/news/printedition/front/la-na-gop28-2008oct28,0,2707779.story
http://www.nytimes.com/2008/10/29/us/politics/29palin.html
http://www.politico.com/news/stories/1008/14929.html
http://andrewsullivan.theatlantic.com/the_daily_dish/2008/10/palin-vs-mcca-2.html
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/michaeltomasky/2008/oct/25/sarahpalin-republicans
4.今回の選挙で政治アナリストや学術的な研究(たとえばhttp://www.amazon.co.jp/Millennial-Makeover-Myspace-American-Politics/dp/0813543010)の対象となっている1982~2003年の間に生まれた若者(「ミレニアム世代」)のハイテクネットワーキングなどのインパクトがどれほど大きくなるかが、関心の的だ。10月のギャラップの世論調査でも、オバマは「ミレニアム世代」でリードが大きい。
http://www.gallup.com/poll/111310/Young-Voters-Favor-Obama-How-Many-Will-Vote.aspx
5.オバマの 政権移行チームの担当者は米国進歩センターの創設者ジョン・ポデスタ所長(クリントン元大統領の首席補佐官)である。
http://www.americanprogress.org/experts/PodestaJohn.html
ポデスタ氏の書いた「グリーン回復」(2008年9月9日)は、1000億ドルのグリーンプログラムで2年以内に200万の職を作れるという。
http://www.americanprogress.org/issues/2008/09/green_recovery.html
6.オバマは、「タイム」誌(10月23日号)とのインタビューにおいて、「新エネルギー経済」というフレーズを使って、ポテンシャルなドライバーとしてエネルギーを重視し、エネルギー革命が就任してから最優先になると強調している。
http://swampland.blogs.time.com/2008/10/23/the_full_obama_interview/