還暦過ぎの阿乱怒論

家庭菜園や工作好きの爺父が日々感じたことを綴る独り言

堤清二(辻井喬)さんが亡くなった

2013-11-28 22:35:58 | 日記
20才の春に赴任した職場は共産党が執行部を握っており労働運動が盛んなところだった。
そこに執行部をひっくり返そうとする社会党系(協会派と呼ばれた最左派から右派までごっちゃ混ぜ)の人達と、会社側に立つ人達が入り混じって、複雑な人間関係が醸し出されていた。
そんな中で自分の生き方や立ち位置を決め切れずに憂鬱な悩みを抱えていた青春時代。
その頃に読んで記憶に残っているのが五木寛之の「内灘夫人」と辻井喬の「彷徨の季節の中で」だ。

自分の出自や父親への複雑な思いから共産党に入党し革命を志したという自伝小説だが、「自分に対する闘いを含まないどんな闘いも、それは一つの彷徨に過ぎない」とか「私のなかに、私の裏切りと私への裏切りについて、想いを巡らさなければならない部分があった」と言った言葉に示される誠実さに、憧れに似た気持ちを抱いたものだった。
その人が後に西部グループを率いて「スーパー西友」や「良品計画」「パルコ」を展開した経営者だと言うことも、当時の自分の狭い思想範囲の埒外にある事で複雑な思いを抱いていました。

経営者と小説家・詩人という二足のわらじを履いた方でしたが、本当はどちらのわらじの方が心地よかったのでしょうか?
でも自分に対する誠実さという点では、小説家から政治家になったどこかの元都知事とは大違いの方でした。