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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

ベクトルと複素数

2010-12-18 15:30:09 | 電子回路
【ベクトル量とスカラー量】
私たちが一般に使っている量や数は多くの場合スカラー量であり、これは「大きさ」のみを表します。これに対してベクトル量は「大きさ」と「方向を」表します。図には3つのベクトル量を示していますが、このように、ベクトルの大きさは矢印の長さで、方向は矢印の向き、つまりx座標と矢印によって成す角度[rad]で表します。このような図をベクトル図といいます。

さて、周波数(ω)が同じ2つの交流を想定してみます。これを瞬時値の式で表すと
e1=Em1 sin(ωt+φ) e2=Em2 sin(ωt+θ)

のようになりますね。e1とe2は最大値(大きさ)と位相(方向)のみが異なっているので、これはベクトルで表すのに打って付です。では、瞬時値の式をベクトルで表してみましょう。次のようになります。
e1 → vE1=E1 ∠φ  ただし、E=Em /√2 [ベクトルの大きさは実効値]です
e2 → vE2=E2 ∠θ  ∠φ ∠θ を偏角といいます

上の図の青矢印は、このE1 ∠φとE2 ∠θを表したものです。

[ベクトルの加算]
交流をベクトル表示すれば、2つの交流の加算(減算)が楽にできるようになります。
実は図のvE3は、vE1とvE2を足し算したものです。式で書けば
vE3=vE1+vE2
ベクトルの加算を実際にどのようにするかは、上の図から明らかですね。

では、vE1=10 ∠π/8 、vE2=7 ∠π/3 として、加算値vE3を求めてみましょう。
まず、vE3の大きさE3は上の図より
E3=√(a^2+b^2) ですね。(三平方の定理)

また、vE3の偏角は
∠ atan(b/a) ですね。

そして、
a=10cos(π/8)+7cos(π/3)
b=10sin(π/8)+7sin(π/3)

ですね。ここはよ~く考えてくださいよお。(^^)

関数電卓でaとbを計算すると
a=12.739 b=9.889 となりました。よって

vE3=√(12.739^2+9.889^2) ∠atan(9.889 / 12.739)
vE3=16.127 ∠0.66[rad]
vE3=16.127 ∠π/4.76[rad]

となります。参考までにvE3を瞬時値の式で表せば
e3=16.127×√2 sin(ωt+π/4.76)

ですね。√2倍するのを忘れないように。

【複素数を使う】
(ここからは下の図を見てください)
複素数は一般に a+jb の形で表されます。
さて、aはいいですが、jbのjっていったい何でしょう。

Jの定義は
j^2=-1
j=√-1

です。jは2乗して-1になるもの、つまりjは-1の平方根。このような数は存在しえません。よって、jを「虚数」といいます。

複素数は a+jb のように、実数+虚数の形で表されたものです。aを実部、jbを虚部といいます。そもそも、「世のすべての数は複素数」なのです。そして特例として、b=0のときに複素数は実数となり、a=0のときに複素数は虚数となります。
OKですね?(^^)

さて、前節ではベクトルをベクトル図で表しましたが、複素数の実部を横軸(x座標)にとり、虚部を縦軸(y座標)にとれば、ベクトルを複素数で表すことができます。下の図を参照してください。このような座標を複素平面といいます。

では、図に従って、vE1とvE2を複素数で表してみましょう。
vE1=9+j3
vE2=4+j6

となりますね。
では、vE1とvE2を加算してみましょう。
vE1+vE2=(9+4)+j(3+6)
vE1+vE2=13+j9

このように実部と実部、虚部と虚部をそれぞれ加算し、結果をa+jbの形(複素数)にすればいいのです。そして
vE3=vE1+vE2
vE3=13+j9

であることは、図より明らかですね。このようにベクトルを複素数で扱うと加減算が非常に簡単になります。

ベクトルを「大きさと偏角」で表す方法を「極形式」、複素数で表す方法を「直交形式」といいます。

vE3=13+j9 は直交形式ですね、これを極形式に変換してみましょう。
vE3=√(13^2+9^2) ∠atan(9/13)

となりますね。実に簡単でしょ。

[jの性質]
1×j=j j×j=-1 -1×j=-j -j×j=1

となります。これを複素平面でみると、 jをカケるとπ/2だけ左回転することがわかりますね。ということは、jを1回カケると位相がπ/2進み、jで1回割ると位相がπ/2遅れるということですね。この概念は今後L(コイル)やC(コンデンサ)による位相問題を考えるときに非常に重要、かつ便利なものになります。

さて、複素数を使うとベクトルの加減算だけではなく、掛け算、割り算も簡単にできます。ベクトル図では、これは無理ですね。やってみましょう。

(a+jb)×(c+jd)
= ac+jad+jbc-bd
=(ac-bd)+j(ad+bc)

ということですね。

次に割り算です。
(a+jb)/(c+jd) は、分母分子にc-jdをカケます。c+jdに対するc-jdを「共役複素数」といいます)やってみましょう。

(a+jb)/(c+jd)
=(a+jb)(c-jd)/(c+jd)(c-jd)
={(ac+bd)+j(bc-ad)}/(c^2+d^2)
=(ac+bd)/(c2+d2)+j(bc-ad)/(c^2+d^2)

ということですね。

関連記事:
複素インピーダンス(jωLと1/jωC) 2010-12-22
交流の実効値③ サイン波 2010-11-24
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