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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇デュメイ&コラールのフォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番/第2番他

2016-02-15 15:32:31 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番/第2番
      子守唄Op.16
      ロマンスOp.28
      アンダンテOp.75
      初見視奏曲

ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ

ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール

CD:EMIミュージック・ジャパン TOCE 16332

 フォーレのヴァイオリンソナタ第1番は、フォーレ31歳の1876年に完成した。フォーレの室内楽曲のうち最初期の作品。全部で4楽章からなり、伝統的な枠組みを基調としながら、若々しく、躍動感に富み、そして、澄み切った抒情性が特徴で、現在に至るまで、人気のヴァイオリンソナタの一つとなっている。フォーレは、1874年にサン=サーンスの後任としてマドレーヌ寺院のオルガニストに就任するが、ちょうどそのころにヴァイオリンソナタ第1番に着手している。サン=サーンスは、1871年に、若い作曲家たちの作品を演奏する目的で国民音楽協会を設立した。これが切っ掛けとなり、フォーレも室内楽作品を書くことになり、その成果の最初の作品がヴァイオリンソナタ第1番なのである。

 フォーレのヴァイオリンソナタ第2番は、第1番のソナタから実に40年後の1917年に完成した。フォーレこの時71歳というから、その創作意欲の旺盛さには驚かされる。初演は、カペーのヴァイオリン、コルトーのピアノによって行われた。当時、フォーレは、パリ音楽院の院長の要職に就いていた。第1番と同様、伝統的な枠組みを基調としているが、第1番にはなかった、成熟した味わい深い作品に仕上がっている。あくまでその響きは純粋で、がっちりとした構成力の上に抒情味溢れるメロディーが、第1番にはない落ち着きのある深さを醸し出している。現在でも、晩年のフォーレの傑作としてしばしば演奏会で取り上げられている。

 このほか、このCDには、フォーレのヴァイオリンとピアノの4つの作品が収められている。子守唄Op.16は、1880年の作品。愁いを帯びた旋律が、ゆりかごを思わせる繊細な動きの伴奏の上に奏でられる。ロマンスOp.28は、1882年の作品。舟歌風な曲で、管弦楽伴奏でも演奏される。アンダンテOp.75は、1897年の作品。フォーレ特有の繊細で気品のある旋律が印象的。初見視奏曲は、1903年のパリ音楽院での、ヴァイオリンの試験のための初見による能力を試すためにつくられた、美しい音色がポイントとなる作品。

 このCDは、1975年~78年に、当時のフランスを代表する中堅・若手の演奏家を中心に録音された「フォーレ/室内楽全集」から取られている。同全集は、LP6枚組からなるものだが、発売当初から話題となり、1979年度の「レコード・アカデミー賞」を受賞した。フォーレのすべての室内楽を収録したことでも画期的なレコードで、演奏は、中堅・若手の演奏家の演奏家が中心となっている。中堅・若手の演奏家といっても皆実力者ぞろいで、フランス的な抒情性をたっぷりと含んだ演奏内容が高く評価された。この中から、デュメイのヴァイオリンとコラールのピアノの演奏を抜き出して1枚のアルバムにまとめたのがこのCDである。

 ヴァイオリンのオーギュスタン・デュメイは、1949年フランスに生まれる。パリ音楽院で学ぶ。グリュミオーに師事した。1975年ジョルジュ・エネスコ賞受賞。1979年にカラヤンに認められ共演し、以後、世界を代表するヴァイオリニストの一人として活躍している。ピアノのジャン=フィリップ・コラールは、1948年にフランスに生まれる。パリ音楽院で学ぶ。1969年ロン=ティボーコンクール入賞&フォーレ特別賞を受賞。1970年シフラ・コンクール優勝。以後世界的なピアニストの一人として活躍している。このCDでの2人の演奏は、2つのヴァイオリン・ソナタでは、力強い演奏が印象的だ。フォーレの作品の演奏には概して繊細さが求められるが、この録音は、逆に、フォーレの構成力の強固な佇みを前面に押し出し、力強さを強調した演奏となっている。第1番は、青春の息吹のむせかえるような情緒が見事に表現されている。一方、第2番は、成熟した奥深さを反映した演奏内容となっているが、やはり力強い構成力が印象的な演奏だ。残りの4つの小品の演奏は、ヴァイオリンソナタの時のような力強さは影をひそめ、フォーレ特有の繊細さと優美さに徹した演奏が魅力。このように縦横に弾き分けられるデュメイとコラールは正に名コンビということができよう。(蔵 志津久)


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