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ビリーブ 未来への大逆転(2018年 アメリカ映画)

2019年04月03日 | 映画の感想・批評
 

 1970年代のアメリカで、「男性が女性を養い、女性は家庭を守る」が当然の時代に、「男性が家庭を守り、女性が働く」もあると社会に投げかけた女性の実話の映画である。「男女平等」という言葉さえなかったと思われる時代に、男性目線の法律の盲点を突き、女性の権利(本作品ではもっと広く捉えて“人として”の権利)を訴えていくのである。主人公を演じるのは、「博士と彼女のセオリー」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたフェリシテイ・ジョーンズである。本作品では、ノミネートされなかったが、「女性」「母親」「弁護士(それと教授)」を演じ分けている。
 よく練られた脚本である。本作品では、「女性の権利」と捉えるのではなく、「人としての権利」を訴えた点は、今までの女性蔑視だけをクローズアップする映画とは違い、一歩踏み込んだように感じた。独身男性(子供無)が認知症の母親の世話をするが、「女性ではない」ことから、介護費用の控除を受けられない。逆転の発想で、この矛盾を突いた点から、裁判を起こしたのである。これは正に「性別蔑視」(=「男性蔑視」)とも受け取れるかもしれない。新しい時代の作品の誕生かもしれない。
 更に、すべてが順調なサクセスストーリーではない点が主人公に共感が持てた。自他共に認める程、説明が下手で、模擬裁判では煽られて、頭に血が上り、夫にアドバイスを受けるシーンも。ただ、その後の裁判本番シーンでは、裁判官より頭越しに詰められ、諦めてしまいそうな状況になりつつも、最後は、口頭のテクニックではなく、心からの訴えで、裁判官の心を動かす場面もあり、圧巻である。アクションシーンではないのに、手に汗握りながら、結末を知っているが主人公と同様に達成感を感じた。監督の演出の力だと思う。ただ、現実の社会では、昨年の#METOO運動が起こる状況である。本作品の言葉で、「社会が変わる」という言葉が重く感じられた。
 それにしても、相変わらずのキャシー・ベイツの貫禄には驚いた。堂々としているというか、威圧感があるというか、さすが大物。短時間の出演だったが存在感はダントツであった。助演女優賞候補もあり得たのでは・・・。
(kenya)

原題:ON THE BASIS OF SEX
監督:ミミ・レダー
脚本:ダニエル・スティエプロマン
撮影: マイケル・グレイディ
出演:フェリシテイ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、キャシー・ベイツ、サム・ウォーターストン、スティーヴン・ルート、ジャック・レイナー、ケイリー、スピーニー他