つれづれ日記

チェリスト秋津のつれづれな日記です。

道(その6)

2010年05月06日 17時18分46秒 | Weblog
前回の続き

「はぐらかし?」


次に海外派遣コンクールというのを受けた。

自分では余裕で受かると思っていたのに、落ちてしまった。ショックだった。

その審査委員に安田先生がおられたので、なぜ落ちたのか聞いてみた。

先生曰く「秋津君、君の演奏は決して悪くないんだけど、でもどこか「はぐらかし」的演奏なんで、それが悪かった。」と言われ、愕然となった。

はぐらかし。ちょっと普段あまり使わない言葉だがなんとなく意味は解った。要するに詐欺的な感じなわけ。

こっちに行くのかな?と思ったらひらっとかわし、ではこっちなのかな?と思ったら、またあっちに行ってしまう。聴いている人の気持ちを、もてあそんでしまう感じなわけ。

要するに、なりふり構わずに素の自分の思いを語ることが出来ない。常にこれでいいのかな? 間違いがないか? 体裁を気にしたり後ろを振り返って見てしまう。

でも、これには心当たりがあった。

僕が中学の頃、親父が斎藤先生のお話の中から、あることを言っていたのを、子供心に小耳に挟んでいた。

落語家の話「はなし家というのはお客さんを笑わせるのが商売だが、皆を笑わせている時に、決して自分が笑っていない。どうすればお客さんが笑うか、その術を知っているのが、一流なはなし家です」

この話がどうも僕の頭に、余計なことをインプットしてしまった。

要するに、音楽を感じちゃいけない。自分が弾いている時、常に客観的にとらえることが大事。お客さんの心をつかむ術をひとつずつ覚えていけばいいんだ、と。

そういえば、「秋津くんは常に冷静に演奏出来るタイプだよね」とか言われたことが多々あるなあ。

こういうわけで、うんちくは一杯覚えたけれど、肝心の中身が見当たらない。それを探して三千里の旅に出ることとなったのです。


つづく

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