西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

温知会の「秋の色種」

2012-10-26 | 薄まる文化

薄まる文化-8


私は大学2年の時に、当時一流の男性演奏家による長唄勉強会
「温知会」で3世今藤長十郎先生の「秋の色種」を聴いた。
この時、3世は確か53歳。

テクニックはもちろんのこと、
そのダイナミックで繊細な曲の運びに衝撃を受けた。

後で知ることになるのだが、
3世は焼き物に造詣が深く、自宅の庭に焼き物小屋がある。

そればかりではなく芸大出の助手を置き、
全国の名窯地から土を取り寄せて
いろんな種類の器を焼くという、玄人はだしの作陶家だ。

私は3世の演奏を聴いて、
なぜか直感的に抹茶茶碗を思い浮かべた。

吸口は繊細に、胴の景色は遊び心にあふれ、
高台はダイナミックに削られている…

3世は焼き物を造るように、曲を仕立てたに違いない。
そういうやりかたもあるのだ!

芸大に居心地の悪さを覚え始めていた私には
目から鱗の「色種」だった。


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tea break・海中百景
photo by 和尚
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ラジオの時代

2012-10-25 | 薄まる文化

薄まる文化-7


3世は父親からだけではなく、
9歳年上の姉(綾子)からも習った。
3世の芸風が繊細なのはその影響があるのかもしれない。

同時代の三味線弾き、山田抄太郎・稀音家浄観(2世)・杵屋勝太郎・杵屋勘五郎(6世)
などとは芸風が異なるように思う。

マイクを使わない歌舞伎の長唄は、ダイナミックな方が効果的だ。
細かい表現はしても通じないし、意味がない。

ところがマイクを通して録音するようになると、
繊細で微妙な表現も可能になる。

3世はかなりラジオということを意識したのではないか。
それこそが時代の流れなのだろうが、
3世の芸を「重箱の角をほじくるように女々しい」と酷評する人もいたと聞く。

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tea break・海中百景
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「うぐいす」

2012-10-24 | 薄まる文化

薄まる文化ー6


先代の家元(3世今藤長十郎)は、27歳の時(昭和16年)
箏とコーラス、三味線による新作「うぐいす」で作曲コンクールに入賞。
この曲は、戦時下という時代が信じられないような、穏やかに美しい繊細な曲だ。

3世は部屋に籠り、民話「鶴の恩返し」の鶴の如く、
身を削って感性をしぼり出して曲を作っていたようだ。

作曲が始まると、家族の方は物音一つ立てないように気を使ったという。

3世は子供の頃身体が弱くて、
あまり長生きできないかもしれないと思われていたそうだ。

だから子供の時から、家族よりいいものを食べ、
いいものを着せられて贅沢に育てられたという。

そういう環境が3世の感性を形成したのだろう。
もちろんそれと、父親2世のDNA。


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tea break・海中百景
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マリオさん

2012-10-23 | プライベート

きょうは朝から変なお天気でしたね。

私は昨夜、演奏会のあとに行った西麻布のイタリアン、
Mario I Sentieriでの食後酒、グラッパがちょっと過ぎたようで、
目覚めがnot so goodでした。

まったく知らなかったのですが、マリオさんというオーナーシェフは
知る人ぞ知る、いまを時めく有名シェフなのだそうです。

昨日は、幸い私たち以外にお客がいませんでしたので
フロアーのイケメンフランス人と、山岸さんという可愛い女の子が
ずーっと相手をしてくれました。

途中でマリオさんも来てくれて、いろいろ話もできたのですが、
彼もかなりのイケメン。モデルもやってたそうです。納得。

名刺もおしゃれ!


お料理も穏やかにとんがっていてgood!でした。

始めて行った店なのに、彼らのおかげですっかり馴染みになりました。

そんな今日ですが、きょうは西川扇蔵宅で荻江の下浚いがありました。
雨の中、12時半に到着。
「松竹梅」と「鐘の岬」を演ってきました。

さすがにちょっとお疲れです。


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三味線の響き

2012-10-22 | 仕事関係


きょうは今藤長十郎リサイタル、「三味線の響き」がありました。

3時開演。国立小劇場です。
舞台稽古が11時半からありました。

まずは「三曲糸の調」です。
唄は今藤郁子・杵屋秀子氏です。

この曲は何度演っても完璧ということがありません。
恐らく死ぬまでに1回でも満足する演奏ができるかどうか、分からない曲です。
それほど難しい曲ですが、それだけにやりがいのある曲でもあるのです。

そして新作器楽曲「真幻」。
三味線6人での合奏です。

「真幻」の舞台はこんな感じです。


最後は「吉原雀」。
タテ唄は大阪から杵屋東成氏を招いて、
5挺5枚に囃子が5人という編成です。

これをまるまる2回やったわけですから、
家元のパワーはすごい!
コメント (1)
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