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チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

フジ子ヘミングとガルの夕べに・・遅れてしまった!

2007年03月29日 02時02分26秒 | コンサート
 今日はイングリット・フジコ・ヘミングのコンサートの日だ。予約してから半年の間に彼女の伝記を3冊読んでいた。「題名のない音楽会」での彼女のチャイコフスキーは10回も聞いた。いよいよ会えるんだ!

 彼女と指揮者タマーシュ・ガルが待つ池袋までは、千葉を車で出発しても悠々間に合うはずだった。それがしばらくして現れた渋滞標識をみたら「ギェー!」。全てのルートが、まるで「王虫の戦闘色(あのナウシカのオームです)」の行列のように真っ赤。これじゃ湾岸を通っても、京葉道路を通っても箱崎まででも50分以上かかる。どう計算しても池袋の東京技術劇場には1時間近い遅れが出る。絶望だ・・・

 でも焦ってもしかたがないと、覚悟を決めた。前の車が悪いんではない。東京の道路事情が悪いのでもない。誰が悪いわけではないんだ、ただなんで電車で向かわなかったんだろう・・考えまいとしても、やっぱうじうじと考えてしまう。電車ならどうやっても2時間はかからない。この渋滞では2時間半はかかるし、駐車場を探しているだけで、どうしょうもないくらい、どんどんと残り時間がなくなる。

 箱崎に達した段階で、とうとうチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番が始まった(確かに聞こえた気がする)。でも救いはあるんだ。彼女の自伝には「日本の演奏会では遅れると会場に入れなくなっているが、遅れてきた人にもせめて立ち見でいいから聞かせてあげるべきだ」と書いてあった。諦めてはだめだ。きっとフジ子の音を聞くことができるはずだ。

 池袋に到着してなんとか車を近所のビル駐車場に押し込み、劇場へ。大ホールへのエスカレーターを駆け上がりたい気持ちだったが、何しろ東京芸術劇場のエスカレーターは、どんな駅のエスカレーターよりも長い。諦めて大ホール入り口到着を待つ。「大扉が開いていますように!」と祈る気持ちで走り寄ると、よかった!彼女の考えはきっちり守られていた。笑顔でスタッフが迎えてくれたのだ!

 早速会場入り口扉の内側に案内されると彼女の晴れ姿が目に飛び込んできた。今日は着物風の衣装ではなく、水色のロングドレス。金髪によく似合っていた。最後の演目はパガニーニによる超絶技巧練習曲集S.130より「ラ・カンパネラ」。一台のグランドピアノ全体を振るわせるような力強い演奏に感動。フジ子ヘミングの歩んだ人生も一緒に味わった気がする。彼女の十八番・カンパネラが聞けただけで幸せだった。

 休憩のあと、ガルがタクトを振るブダペスト・コンサート・オーケストラはチャイコフスキーの第5交響曲を演奏してくれた。どの楽器がどこで出てくるか、手に取るように分かるのが不思議な気がした。ここでホルンとファゴット。ここはバイオリンの上にピッコロがなぞるように演奏する。次にバストロンボーンとチューバが入る・・・この曲は学生時代にオケで演奏したことはなかったよなー・・・きっと僕が大好きな曲で、何十回もCDで聞いたからだ。

 実は高校の歴史の先生はチャイコフスキーを馬鹿にしていた。けど僕はチャイコフスキーが好きだった。ひょっとしてそれは女々しいことなのかもしれないと思ったこともあったが、やっぱり先生の方が間違っていたと思う。逆にちょっと太り気味だった中学の音楽の先生はチャイコフスキーを大好きだと言っていた。僕も彼女が好きになった・・・そんなことも思い出してしまった。

 今晩のコンサートで気づいたこと、それは向かう姿勢がこれまでと全く違ってしまったことだ。オーケストラの響き全体は聞きながらも、なぜか視線はチェロの皆さんに釘付け。ぜんぜん目が離れなくなった。(すると耳まで集中してしまうが)

 まず座り方のチェック。チェロは7人で主席は女性。あれ!一番後ろのおじさん、背もたれに寄りかかって演奏してる。それにやたらとエンドピンが長くて、まるで猫背の大アリクイがチェロを抱え込んでいるような姿。一方で身長2メートルはありそうな男性は、チェロ本体を膝で支えていないみたいに、身体からチェロ全体が離れた感じで演奏している感じだ。「みんな自由だなー」と思った。

 次に目に付いたのは(実はオペラグラスを持ってきている)ピッチカーの方法も人様々だといういこと。弓を持つ持ち方では親指を広げて構える人(でもネックからは離しているようだ)、一番後ろのおじさんのように握りこぶしの人。はじく指も、人差し指と中指が半々だ。

 右側のバルコニー席から良く見えるのは、3列目の女性奏者。ちょっと素敵なので彼女ばかり見ていた。なぜいい感じなのかというと、チェロの寝かせ方がとても自然だし、ネックの頭=スクロールの位置が顔より少し後ろよりで、彼女の横顔が良く見えるのだ。

 思えばスクロールの位置がこれまた全員違うのが面白い。頭より高い人、ちょうど耳の辺りの人。ネックが前方の人、やたらと後ろの人。良く見るとチェロ自体の向きもさまざまだ。

 みんな一流のプロなのに、こんなにも違っているんだ!これで気持ちが少し楽になった。僕も自分の身体に一番合ったスタイルを、いずれ見つけ出そうと思う。先日買った「新しいチェロ奏法」をよく読んでみると、要するに、自分の身体に一番負担がかからない演奏方法や構えを見つけなさいということが書いてあった。そのためのエクササイズ(いろいろ身体を動かす方法が載っていて、その中で一番自然な構え方、動かし方がベストポジションという趣旨だった)が書かれていた。

一番いいスタイルは一番身体に負担がかからない格好ということだ。今日のコンサートは意外な収穫があった。次からは、決して車では行かないことにしよっと。


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