チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

シベリウスのバイオリン協奏曲をプロと総練

2011年03月06日 02時34分18秒 | 市原フィル

「題名の無い音楽会」でも見かける宮川正雪さんを迎えて、シベリウスの練習があった。

ソリストの宮川さんが来られるまでは、指揮者の小出さんが崩壊しそうな部分を集中してチェック。
代奏はコンミスのEriさん。彼女のバイオリンは素晴らしい。コンチェルトの楽しさを十分感じさせてくれる。
シベリウスを弾けるだけでもすごいのに、何回かの代奏で進化しているのを感じる。

宮川さんが練習会場に登場すると、オケの気合がワンランク上がった。
挨拶もそこそこに第一楽章から演奏開始。そのまま終章まで通して演奏した。

宮川さんのバイオリンは、横から見ると、ボディーの厚みが薄く、華奢な感じがする。
しかしそこから生み出される響きは、ときに繊細で甘く、ときに荒々しく爆発的に響き渡る。
一音一音の粒が揃い、驚くほど太くたくましい。
プロのソリストをこんな近くで堪能し、一緒に演奏できるのは何と幸福なことか。

ところで、宮川さんが立っているのは、シベリウスのコンミスTomoさんの真横。
宮川さんのバイオリンはTomoさんの右上、50センチぐらいのところに構えられている。
「あんなに近くで宮川さんのバイオリンが響き渡っているんだ・・」
「どんな感じなんだろう・・体が震えるかも・・」
「耳をつんざくという感じかな・・・」
「それとも音に包まれる感じなのかな・・」
などと見とれていたら(いや聞き惚れていたら)、チェロが入るところを通過してしまった!

コンチェルトに初めて参加する嬉しさ、物珍しさから譜面から目が離れがちで、何度も落ちてしまった。
カデンツァだけでなく、美しい高音や伸びやかな低音に、ついつい聞き入ってしまう。

シベリウスは全て素晴らしいが、特に好きなのところは気持ちがバイオリンに行き過ぎて危険だ。

一つは、第一楽章の114小節目からで、四分音符の階段をバイオリンはゆっくりと登ってゆき、
頂上に達した後は、繊細なオクターブで歌うところが、なんだかとても切なくて心に染み入る。
この曲を初めて聴いたとき、この部分のあまりにもデリケートな美しさに心が震えた。

それに続いてトリルを途切れなく続けながら、四分音符が入るところがヤバイ。
驚きのあまり、自分が入るのを忘れた。

その部分では、ソロがトリルを続けているとき、金属的な音が入るが
(それはビバルディーで犬の鳴き声を弦が表現しているような音なのだ)、
「一体誰が演奏しているんだ?」
と、以前から疑問だった。
今回その部分に差し掛かったとき、演奏しているのは宮川さんだけだった。
他のバイオリンは動いていない。
つまりトリルを続けながら、フィンランドの凍てつく大地にこだまする動物の鳴き声のような音も
宮川さんが鳴らしていたのだ!
他のバイオリン奏者が「合いの手」を入れているものと思い込んでいただけに、我が目を疑った。
見ていても我が目を信じられず、後からスコアーを調べた。ソリストの重音だった。
そう、自分の演奏に戻るのを忘れた。

もう一つ大好きなところは、第二楽章の終わりころ。

低く伸びやかなに奏でるバイオリンの音色は、まるで人のささやき声のようだ。
言葉はしゃべっていないんだけど、バイオリンが静かに語りかけていると感じる。
きっとフィンランド語で喋っているのだと思うけど、
おとぎ話を聞かせながら子供を寝かしつけている風だ。

「昔むかし、北の国には氷のおうちがあってね・・・」
なんていう感じでささやいていると、子供のまぶたがだんだん重くなって
「おやすみ、いい夢をみなさい」
なんて言っているんじゃないかな~・・・
こんなこと思っていると、自分は演奏に入れないのだ!


オケのメンバーの演奏にも、各パートのソロなどに光る部分があった。
クラリネットの導入、ファゴットの揺ぎ無いスケール、それに負けないチェロトップ・・・

しかし、録音を聞き直してみると、全体に「周り」がうるさ過ぎると感じた。
指揮者の言うとおりだ。
弦はもっと綺麗な音で、繊細に演奏しないとソロの邪魔をしてしまうと感じた。

おっと・・・棚上げしていた自分の問題は 山のようにあった。
その一部を記しておくと・・・
 ・ハイトーンでは「超」いいい加減な音程で、大変迷惑を掛けた
 ・速いパッセージの完全落っこち(特に3楽章終盤など全く練習できてない)
 ・重音が出せず、単音か いい加減な重音でハーモニーを壊している・・てなところ。

「美しすぎるシベリウスに聞き惚れて落っこちだんだ」といういい訳は半分は本当だけど、
技術的に多くの問題を抱えていて、いずれも簡単には克服できそうもない。
練習あるのみだ。

今日はコンチェルトを初体験して、本当に楽しく、興奮した。
学生時代、オケの練習中に感動する自分を持て余していたことを久しぶりに思い出した。
「音の渦の真っ只中にいる」という喜びと興奮は、オーケストラの練習場だから味わえるのだと思う。
その後の「大呑み会」が興奮、絶叫だったのも、きっとコンチェルトの興奮からだろう。
(それともいつも、あんなにすごいの?)

コンチェルトは楽しいけど、呼吸が合わなければ悲惨な状態になるのも現実だ。
逆に、オケとソリストが一体となったとき、どれほど感動的なハーモニーが出現することか!
大変難しいけど、ゴールの素晴らしさを夢見て頑張ろうと思う。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« レッスンで「ぼんのう」が少... | トップ | 新幹線でオケ総連の録音を聴く »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (HMD)
2011-03-06 20:04:58
斜め後ろから見てました。
・・ソリストを呆然と眺めていて入り損なってるの。。
・・・(心のなかで)爆笑しながら。。
いつもありがとうございます。
照れくさいですが、心の支えです
返信する
>hmdさん (chiibou)
2011-03-06 23:46:27
ごまかしてるつもりでも、ばればれでしたか!
音楽の世界にいる方の目には、かなわないですね。
気づいたら明日が本番・・ていう感じなので、
今回こそ練習きちんとやろうと思ってます。
返信する
やっとたどり着けました! (itsudemoyumeo1949)
2011-03-09 21:19:56
オセロさんこんばんは!
いつも楽しく拝見しております
練習風景が手に取るように大変わかりやすく
大変興味深いですね

7月定期公演に向けてのシベリウス、ニールセン
の仕上げの様子が大変興味深く拝見しております
頑張ってください!
返信する
>itsudemoyumeoさん (chiibou)
2011-03-10 17:46:14
いつも励ましありがとうございます!
あんまりバレバレだと、演奏会のイメージを
損なってしまうかもしれませんが、感じたことは
なるべく書きとめてみますね。
返信する

コメントを投稿

市原フィル」カテゴリの最新記事