チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

「チェロが芯まで鳴る」実感を持たせてくれたレッスン

2010年07月06日 01時38分07秒 | レッスン
 久しぶりのプロレッスン。我が尊敬する師匠宅に向かう。

邸宅の庭先は広々とした菜園が広がり、中心にはウッドデッキとパーゴラがしつらえられ
まるでステージのよう。ここで毎年バーベキュー会が開かれる。

練習室では先生がいつものようになにやらチェロを弾いている。国内最高のオケを定年退職しても、
さまざまな方面から演奏会の依頼、教室開催、レッスンの申し込みがあり大変お忙しくなっているときく。
そんな中で個人レッスンに時間を割いてくれるのは恵まれていると思う。

さてマイチェロをお渡しすると、いつものように「整体師」みたいに、あちこちを点検
(駒の位置、角度は必ず点検してくれる)。調整し調弦しながらさまざまに弾きまわされているが

 「少し詰まった感じですね」とおっしゃる。
 「また僕が悪い弾き方したからですね」
 「いや、湿度の関係もあるでしょ」

そのあとしばらくは、秋のコンサートのグリーク「ペールギュント」、ウェーバー「魔弾の射手」や
目下課題になっているベートーベン「第九」4楽章など次々に弾きこなしていかれる。

 「さ、やりましょうか、ではG線開放弦から」・・・これもう3年はやっているよね。
 「基本に戻って、ダウンだけで」 ・・・やっぱ先生はここから再開するのがすごい。
 「まだ力入ってますね」 ・・・右腕を10回ほど揉みほぐしてくれる。
 「さ-もう一度」・・・え!音が全然違う。ボディーから伝わる振動の大きさでも違いがはっきりわかる。
力を全然入れない「脱力」が出来たときだけ、チェロは響き渡ってくれるのだ。なんだか不思議なことだ。

ここで思い出したことがある。久しぶりのレッスンなので、ピッチカートで汚れて真っ黒になった
手元の毛ををシャンプーしたとき、弓の木部の微妙なメカニズムに気づいたのだった。
シャンプーして松脂が取れて真っ白になった部分をタオルでこすっても何も起こらないが、
松脂が付着している部分をしごくと、弓全体が非常に明確に一定のリズムで振動しているのに気づいたのだ。

何気なく使っている弓だけど、実はチェロの音量・音色に弓自身の振動が大きく影響していると実感させられた。
だから弓を弦に押さえつけることは逆効果だし、プロはより良い響きを求めて弓に大金を投じているのだ。

先生が何よりもまず脱力でのボーイングをチェックするのも、同じ背景からくるのだろう。
弓の振動と弦の振動とチェロ本体の振動が、何者にも邪魔されずに共鳴し合ったときが、最高の響きになるのだ。
実際、脱力仕切ったときに最も豊かな音色が得られているのは、自分でも実感できるようになってきた。


 そんなことを思い起こしながら、弓と弦とチェロ本体の交流をなるべく邪魔しないようボーイングを進めてゆくと
 「いいですね、ずいぶん良くなりました」とほめてくれた。さらに
 「詰まっていたのがすっかりなくなりましたね。音が飛んでいるの分かるでしょ」ともおっしゃる。
 
 「確かに、はっきり分かります。最近は、音の違い、チェロが芯まで鳴っているかどうかが分かるようになりました」
 「それだけでもたいしたもんですよ。最初のころは音になってなかったのだから(笑い)」

今回のレッスンではもう一点、「芯まで鳴る」状態を目で確認することも教えてくれた。
 
それは、ボーイングしたとき、弦がどれだけの振幅で振動しているかを見ることで確認できる。
脱力して十分にチェロ全体が響いているときは、弦が隣の弦にぶつかるくらいの振幅になっている。
逆に大きな音を出そうとして、弦を上からプレスして弾くと、惨めなくらい小幅な振動しか得られていない。
力を入れない方が、大きな振幅になるのが不思議。頭で考えることと実際に起きている現実とは全く逆になっているのだ。

3年を越えて全く同じレッスンを続けてきたおかげで、ようわく分かってきたというか実感していることがある。
それは、美しく豊かに響く音が出せないと演奏会では使い物にならないということだ。

先生の忍耐強い指導のおかげで「基本のボーイングができれがチェロは8割できたことになる」
という先生の最初のころのお話が実感できてきた。

このことでシュローダーなど、練習曲には全く触れてくれていないけど、大きな安心感と満足感を与えてくれている。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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同感 (老哲)
2010-07-10 03:53:01
参考になりました。
私の楽器の場合も同様だと思います。ダブルリードは、まずリードを響かせ、これを楽器本体で共鳴させます。
しっかりブレスを整えて、喉を緩めて息の通りを良くし、リードを振動させます。その際、唇に力が入りすぎると、もともとのリードの振動を抑制し楽器が鳴りきりません。それをppからffまで無理なくダイナミックレンジを確保させます。
これがうまくいかないと、ppで響きが死んでしまい、ffで響きが濁ってしまいます。

たとえppでも、桶全体を通り越して客席まで染みとおる響きが出せればと考えています。

第九で言えば、3楽章全体、4楽章のオブリガートでのppが難しいと記憶しています。
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ファゴットも同じなんですね (chiibou)
2010-07-14 21:47:04
リード楽器でも同似たように考えられるというのはちょっと意外でした。
リードを強くくわえ過ぎることの弊害と同じことがチェロでは二箇所で起きます。
一つが今回のレッスンの、弓の押さえつけによる響きの抑圧。
もう一つが、左手の指で弦を押さえつけすぎることから起こる弊害。

いずれも初心のころは、抑える方がより鮮明で大きな音を出せると誤解します。

誤解というか、今でも体に無意識にしみこんだ
癖とでもいうのか、ついつい力んで失敗します。
どんな世界にも通用する考え方だとも思います。
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