チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

今さらながら 弓の持ち方の間違いに気づくなんて!

2011年09月11日 01時42分08秒 | レッスン

「どうして弓が手の中に上手く納まってくれないのかなー」と最近頭をひねっていた。

特に、アップからダウンへの切り替えの時、切れ目なく切り替えることができない。
弓が”手の中で踊ってしまう”という感じから抜け出せないでいた。
師匠なら「一旦弓を離してしまっているから音が切途切れてしまう」と言われるだろう。

今日のレッスンもG線のダウンから始まったけど、弓がしっくりこないことが気になり、
「右手をどうやって持っているかもう一回見せてください」と師匠にお願いした。
4年間、何度も弓の持ち方をチェックしてきたけど、これが最後だと思いつつ・・・

師匠は弓を構え、先端を左手で持って、両手を突き出して見せながら
「以前から言っているとおり、中指をやや斜めに弓に巻きつけるように持って、
 親指と中指の二本でしっかりと押さえたら、あとの指は添えるだけです」
僕もそっくり真似して、中指を巻きつけ、親指をフロッグの角に押し当てる。

「でも僕がやると指が動いちゃうんですよね~」と言いながら
師匠の右手を下から見たり、横からのぞき込んだりする。
もう二度と持ち方の確認をすることなどないように、しっかり見届けようとした。
すると、親指の位置が少し違うような気がしたきた。

はっきりしないので、師匠の手を持ってひっくり返して、もう一度しげしげと見た。
微妙に違いがある気がした。
「あの、親指はフロッグの角に当てていますよねー」と自分の親指の右の角を示すと
「いえ、触っている程度ですね」
「えー! 親指のここの角を毛箱の角に当てないんですか?」
「なんでそんな無理なことするんですか」
「でも・・ものの本によると、ここをここに・・こうやって・・当てて・・・」
「それじゃ痛くて弾けないでしょーぅ」

先生は、僕の持ち方を真似してチェロを構えて弾き始めた。
「・・でも弾けなくはないか・・・親指だけは固定するということか・・・」
とやってみたものの、やや呆れながら
「こんな難しいこと誰から教わったんですか?」と聞かれた。
そういえば誰にもそんなこと教えられていないと思い当たる
「いえ~でも皆そうやってフロッグの角に押し当ててるかと思ってました」
「なんでそうやって難しくするのかな~・・」
「いや~ナイフとフォークでご飯食べるときに、フォークの背中に
ご飯載せて食べてましたよね、あれと同じで、チェロも難しいので
日本人は一番痛くて難しいやり方でやっちゃうんですよね、きっと・・」

おおい、とうとう日本人の民族性まで持ち出して自分の間違いを
ごまかそうとしてるんじゃないのかい?
 でも正直なところ、なんで西洋人は、毛箱の角をとんがらせてこんなに痛い
思いをしながら弾いているんだろう?日本人ならこんな構造にしないのに・・・
とマジでフロッグの構造問題に疑問を感じていたのだった。
実は単に、持つ場所が違っていたのね・・・とほほだよ全く。

先生の言うとおり、親指と中指で弓の竿をもって弾いてみると(フロッグの角でなく)
弦の発音もスムーズで楽だし、弓も安定して動かしやすいことが実感できた。
この4年間、金科玉条に守ってきた指の当て方が全く違っていたのだ。
どこかで読んだ解説を、自分なりに解釈して、その理屈で通してきたのは明白だ。

どうして、こんなことになるんだろう・・・

フラッシュバックのように思い出したことがある。


~~~
大学の体育の授業で、初めて硬式テニスラケットを持って練習をした時のこと。
「なんでラケットの面を横に構えて握っているのに、ボールが前に飛ぶんだろう」と
疑問でならなかった。
腕を無理にひねってサーブしても、ボールはまともには飛んでゆかなかった。
打ち合いの練習になっても、ラケットの持ち方ばかり気になって全然楽しくなかった。

そのうち、級友の一人が、スムーズにラリーを始めると、先生は「いいね~」と褒めた。
でも彼の持ち方は、ラケットをスクウェアに持っていないし、自由に角度を変えて打っているのだ。
「僕は先生に言われた通りにやっているのに、ずるい・・」とクサクサしたのを今でも覚えている。

でも彼は間違いなく、自分なりに工夫して見事なラリーをこなしているのは事実だ。
「教えられた通りにやっているのに・・・」という”思い”と、見事に打ち返している”現実”との間に
矛盾・葛藤が生じてしまっていた。
目的は打ち合いなんだから、現実を直視すれば、自分の何かが間違っていると考えざるを得ない
~~~


そんな大学時代の出来事を思い出しながら、理屈と現実のズレを直視せず、
自分の中の理屈・理論を優先する癖が全く治っていないと思わざるを得なかった。
チェロの弓との接点も、そんな、自分なりの頑なな思い込みによって、
柔軟性を失い、状況に合わないことになっていたのだと思う。

ま~そんな苦い思いもよみがえってはきたものの、今日はよかった。
不安定だった弓のグリップが、これで改善されると確信したのだから。

そうそう、師匠に聞いてみたっけ。
「先生でも持ち方や、ダウンボーイングの練習をするんですか?」
「ずいぶんやりましたよ」
「若い頃ですね」
「いや、5年くらい前からです」
「どうしてですか?」
「持ちかた変えたからです。演奏しながらだったから大変でしたけどね」
 トップオケの団員を続けながら、奏法を変更することの重大さを想った。
芸大時代に習ったのは3本指での支持だったが、それでは大きく深い音が
出せないと気づき、今の二本指での持ち方に改造をされたという。

今、僕は30年近い実践研究のエッセンスを学んでいることに改めて感謝した。
きっと、これからは練習結果が積み上がって行けると思う。

それから、こんな基本中の基本の誤りに
4年も気づかずに 今発見されるなんて、なんとも愉快だ!

<参考>
フロッグ(frog)=毛箱、弓のエンドにある黒い箱で毛を支えている。
(下記画像はいずれもgoogle検索で拝借してます)
   
(写真を見ても 親指がどこに当たっているか判然としない)
    


コメント (11)    この記事についてブログを書く
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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コメントありがとう (chiibou)
2013-06-06 20:45:32
>もきちのネコさん

昔の記事にコメントいただき恐縮です。
現在持ち方は、新しいレッスンで変更されましてフロックのへこんだ部分(弓とフロックの接合部分)に対して45度に当たるようにしています。どちらかというと、フロックを持つというより、弓の竿を持っているに近くなっています。YOYOMAがバッハを演奏するときには、完全に弓そのものを持って演奏してますが、あそこまでではないです。blogさぼりがちですがよろしくお願いします。
Unknown (もきちのネコ)
2013-06-05 11:06:45
はじめまして。
2年も前の記事にコメントして申し訳ありません。
私、チェロ歴2カ月なのですが、
まさにchiibouさまと同じく、「右手親指が毛箱の角に当たって痛い」状態だったので、この記事を読んで疑問が解消しました。
ありがとうございます。
「角に45度ではなく、フロッグとスティックが作るコーナーに対して45度」
私もこれを肝に銘じておきます。
はじめまして (oyaoya)
2012-09-11 13:43:05
突然のコメントで失礼いたします。
右手の親指について調べるうちに貴ブログにたどりつきました。チェロへの御熱意に感服いたしております。(小生も貴公と同様の持ち方をしておりました)。
ところで、御師匠様が「3本指での支持だったが、…今の二本指での持ち方に改造をされたという。」
とのこと。
もう少し詳しくご説明いただけませんでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。

(^ω^) (chiibou)
2011-09-15 21:26:11
nederlandさん、少し寝覚めが悪く・・・冗談でよかった (^^)
冗談です、冗談です。 (nederland)
2011-09-15 10:45:08
私は角に45°というのはやったことがなかったのでちょっとまねしてみようとおもっただけです。すみません。。

それそれ (chiibou)
2011-09-13 23:29:50
>ユウさん 親指が突っ張っている・・・というのも「つい」やってしまうことがあります。まだまだ当分の間は「自分にあった形」に落ち着くのは時間がかかりそうです。
横やり失礼。 (ユウ)
2011-09-13 22:49:54
親指は弓とフロッグが作るコーナーにただ45度に当てるだけではなく、決して反らないということも大事ですよ。親指が反ると指先での屈伸がまったくできなくなるので、細かな移弦がとても困難になります、と私は思ってます。

でも、いいですね。技術論についても意見交換をすることができるのって(^^)。一番は自分にあった形を見つけることですね。
角に45度はやめてください! (chiibou)
2011-09-13 21:39:20
唯一の利点は、ダウンで親指が滑らないことだけですから。そのメリットと引き換えに大きなデメリットを背負うことになりますから。
角に45度ではなく、フロッグとスティックが作るコーナーに対して45度・・・くどいですね。これは自分に言い聞かせてるんです。
お返事ありがとうございました。 (nederland)
2011-09-13 09:07:27
山崎さんのサイトは、よく参考にさせていただいています。わたしの弓は、”フロッグの角”がとても緩やかな曲線なので、親指はフロッグと弓の接する所にあるのですけれど、手が乾いているようなとき、たまにすべるようなかんじになることがあります。フロッグの角に45°にあてるというのをちょっとまねしてみましたけれど、いたいですね!
素晴らしい解説があります (chiibou)
2011-09-12 14:52:13
nederlandさん、僕の説明よりも、図解入りですばらしく丁寧に解説していただいているゴーシュさんのURLを張りつけます。
http://gauche-sons.co.jp/CELLO-2.htm

ゴーシュさんの「チェロストーリー」はチェロ入門者のバイブルです。
持ちかたの説明に「親指は弓とフロッグ(毛箱)にできたコーナーに、親指が弓に対して45°位になるように押し当てます。」とありますが、この45°を僕は全く勘違いして「フロッグの角に45°にあてる」と4年間も実践していたということになります。
解説はきちんと読まないと大変なことになりますね (-^〇^-)
もうすこしくわしく。。。 (nederland)
2011-09-12 06:59:51
親指の位置と、指が弓のどこにどのようにあったテイルのかについて、もうすこしごせつめいいただけますか? 
お願いいたします。

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