MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

スパイラルフォー-22

2018-01-21 | オリジナル小説

笑う宇宙人

 

罠がしまった。次元の罠に吸い込まれたのは・・・

「検体、捕獲しました。」勢いよく、ボタンが差し上げる。

それは彼らが乗っていたカプセルよりもかなり小さい、ボールのようなものだ。

「思っていたより、質量が小さいな。」ゾーゾーは仏頂面でカプセルのスクリーンを見つめる。

「ターゲットとして認識した時は・・・いや、先ほどまではもっと大きなエネルギーだったと思ったが。」

「どっかから何か漏れたんですかね。」

ゾーゾーは顔をしかめたまま、ボールを受け取って手の中で回す。

「ふん、デラの情報が不完全だったということだ。」

「それ、気をつけてくださいよ。」ボタンが彼にしては勇ましく「中にはブラックホールがあるんですから。もちろん、人工的な擬似次元ですけど。」

「知っとるわ。」睨み返す。「これで次元生物を効率良く捕獲できる。」

「魔物って言いましょうよ。その方が、それっぽい。」「次元生物。」頑なにゾーゾー。

「すぐにワームホールでイリト・ヴェガに送れ。」

「今度はどのくらい生きているでしょうね?あんまり早く死なないといいけど。」

「とんだイリトの道楽だ。」「それが僕たちの仕事ですけどね、姉さま!」

「アラジンのランプの出来はどうかしら?」

彼らが待機する屋上の上空にイリト・デラが現れた。子供らにはもちろん、見えない次元。

「呪文を言えば、魔物が出てくる魔法のランプよん。」

それに答えるゾーゾーの目はこの能天気が!と言っているがデラは気にしない。

「私の守護天使さまの為にこれからもどんどん捕まえるわよ!」

一瞬、消えていたボタンはその間にワームホールにいるワーム使いにボールを託して戻ってきた。

「ああ、シドラ・シデンとバラキね!ちょっと会いたかったな。」

「そんなことしたら守護天使に届くのが遅れるだけだ。」

「それより、兄さま。もといデラさま、あの嫌な変態の始末はどうしたんですか?」

「ほんと胸がむかつくやつよね。でもあれくらいの異常者じゃないと大物が憑いてないから仕方がないわ。せいぜい、いじめてやりましょ。」

「浄化槽ですか?でも、あそこって・・・」

「あいつの骸コレクションがあるな。」ゾーゾーはもう撤収の支度だ。

「深さは10メートルほどあります。昔の下水とかをゆっくり地下に浸透させて濾過する装置ですよね。ロリコン変態は、そこに死体を放り込んでいたんですよね。」

ボタンも引き上げたがっていた。仕事は終わったのだ。

「這い上がるハシゴとかはないの。点検用のは古いから壊れて落ちちゃったみたいよ。」

デラが破壊したということらしい。「光も射さない、死体が朽ちたくっさい穴で食べ物もなくてゆっくり死んでいくといいわ。」オホホホとデラは口に手を当てた。

「デラさま、悪い魔法使いみたい。」「仕置人と言って欲しいわん。」

デラの目は更にきらめく。(あとはあの、殺された子達に任せるの。)

無念の思いを抱えた残留思念の子供達にたっぷりかわいがられて発狂すればいい。

彼らの会話の中にはこの世界の警察に任せるとか、法の正当な裁きにかけるとかいう言葉は一言も出てこなかった。それはそれでいいのかと思うのはこの星の人間だからだろうか。

ゾーゾーは皮肉な思いでデラを見つめる。自分や上陸軍はこの星の住民に過度な危害を加えることは許されていない。デラがやったことが黙認されるのは、この星に捨ておかれる存在であるデラが中枢や小惑星帯から、ここの住人と判断されているからだ。

そして、この件全体を容認している臨界進化体という特別な存在の力・・・。

「あっちの子供らは、どうするんだ?」

おもむろに、忘れてたのを思い出したとでもいうかのようにゾーゾーは屋上を示した。

やはりゾーゾーって意外に子供好きじゃない?と今度はデラの方が密かに笑う。

二人の子供はまだ静かに互いの思いを交換している。月明かりの下で、穏やかな時間が過ぎているようだ。罠は既に消えたが、二人は少しずれた温かい次元に守られている。

それにしても、とデラは再び首を傾げる。墓場となった校舎は相変わらず、磁場が乱れているが。先ほどまでの凄みを帯びたほどの迫力は消えている。

『あらあら』とデラ『なんだ、よどんだ死者たちの残留エネルギーが活性化してたのはてっきりあの子供達のせいかと思ったんだけど。どうやら、違ったみたいね。』

あれは、魔物のせいだったのかしら?それにしては、小物のようだけど・・・?

デラは遥か、上空をじっと見上げて気をとりなおす。まぁ、いいわ。あとはアギュに任せよう。ゾーゾーには「子供達なら大丈夫、お迎えがもう直ぐ来るわ。」と手のひらを揺らした。

「そこまで手配してるのか。」

きっとゾーゾーは呆れたような、おなじみの目をして見下していることだろう。デラはもう慣れている。それに。まぁ、確かに。

行き当たりばったり。都合がいいから利用しただけだけなのだから。

はるか遠くから廃墟に近づいてくる車のライトを彼らは見た。


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