前回の「カジノロワイヤル」はシリーズでも最高傑作であったが(http://blue.ap.teacup.com/applet/bluedeco/20070411/archiveを参照)、今回もリアリティーのある生身のボンドとして再登場。秘密兵器なども特別に出てこないながらも、007のトレードマークであるめまぐるしいカーチェイス(前作で登場したアストンマーティンがボンドカーとして冒頭に再登場)や息詰まる銃撃戦や肉弾戦など、ハードなアクションシーンが満載。血も流して怪我もし、スーツも汚れるリアルなボンドが今回も堪能出来る。また逆三角形の引き締まったダニエル・クレイグの肉体はタキシードやスーツが相変わらず良く似合う。しかも前回「カジノロワイヤル」で初めて愛した女性ヴェスパーを亡くしてしまったボンドが、今回そのヴェスパーをはめた悪の組織に復讐を誓うという、まさに感情的な映画に仕上がっている点も印象深い。
ボンドガールも楽しみにしていたが、今回は両親を悪の組織と関連するボリビアの独裁者に殺され、復讐に燃える女性カミーユが登場するが、オルガ・キュリエンコが演じる今回のボンドガールもなかなか魅力的な女性だ。ボンドと共に復讐の為、共通の悪の組織に向かって進んでいくが、アクションシーンの数々を体当たりで見事に演じている。
007映画の一つの楽しみは、世界の様々な都市が登場すること。今回もロケ地としてオーストリア、イタリア、イギリス、メキシコ、パナマ、チリなどが登場するが、めまぐるしく世界を移動しながら敵を追い詰めるボンドは見応え充分である。
今回の「慰めの報酬」も「カジノロワイヤル」同様高いレベルが引き継がれており、ボンドシリーズでも極めてレベルの高い作品に仕上がっている。シリアスなボンドもすっかり定着してきたが、ダニエル・クレイグも復讐に燃える初期ボンド像を見事に演じている。また、前回の監督マーティン・キャンベル(「ゴールデンアイ」も監督)から替わり、今回の監督はマーク・フォースターだが、「カジノロワイヤル」に比べてより臨場感のあるカメラワークとカット編集が特徴的である。前作に比べスピード感と臨場感が増したのは確かだが、正直個人的には前作の方が見やすい面はあったように思う。また、今回はボンドガールとのラブシーンなどが少なく、よりシリアスに徹した作品となっており、個人的には前作のボンドガール(ヴェスパーことエバ・グリーン)がとても気に入ったので、カジノロワイヤルの方が若干好きだが、全体的には今回の作品も期待を裏切らない内容であったと思う。
今回で22作目になった007シリーズだが、一時興行に陰りが見えていたロジャームーアのボンド時代後期以降は毎回ボンドが変わるたびに興行成績も上昇傾向だ。ダニエル・クレイグの2作品によってまたまた塗り替えられたシリーズ歴代興行成績だが、3作目のダニエル・クレイグ演じるボンドもまた楽しみである。
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