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ちょっと残念だった、プリンスのドキュメンタリー映画

新宿のミニシアター、シネマカリテで現在上映中の映画、『Prince Beautiful Strange』を先日観賞した。これは、2021年に全米で公開された『Mr. Nelson on the North Side』というタイトルのドキュメンタリーが、ついに日本でも公開されるということで話題となっており、僕もプリンスファンとして観に行くことにした。プリンスは残念ながら2016年の4月21日に57歳という若さで亡くなってしまったが、プリンスはマイケル・ジャクソンに次ぎ、僕の好きで尊敬する偉大なミュージシャンであり、80年代から彼のアルバムは殆ど聴いてきたので、今回この作品も楽しみにしていた。

しかし、僕だけではないと思うが、正直ちょっと期待していたドキュメンタリーではなかった。もちろん、プリンスに関する新たな発見もあり、それはそれで貴重な作品ではあったのだが、なぜ期待外れだったのかを一言で言えば、“肝心なプリンス本人映像、そして彼の音楽が殆ど映画に出てこない(?)”からである。

この映画はプリンスが生まれ育ったミネアポリスを舞台に始まる。当時の黒人に対する偏見や、多くの黒人が自由を求めて北に移住したことで、ミネアポリスにも大きな黒人の生活圏が産まれたが、そこには全米でも特に過酷な人種差別があった。そして住民の99%が白人という環境下で、プリンスは多感な青春時代を過ごしたのである。公民権運動の渦中、ジェームス・ブラウン等の黒人ミュージシャンも時折訪れた、地元のブラックコミュニティ“ザ・ウェイ”での音楽的な原体験、恩師や家族が語る幼少期のエピソードなどが紹介され、チャカ・カーン、チャックⅮ、ビリー・ギボンズなど、プリンスを敬愛するミュージシャンの貴重なエピソードも多数収録されたドキュメンタリーとなっている。孤高の天才プリンスが如何にして誕生したのか、そして突然の悲劇まで、プリンスを愛する全てのファンに贈る作品という触れ込みで、プリンス関係者へのインタビューなどはそれなりに貴重。そして後半、彼がミネアポリスに創り上げたスタジオ、“ペイズリーパーク”にて、一般のファンなどに開放されたイベントなども開催され、プリンス本人もファンと触れ合っていたことなど、結構知らなかった驚きのエピソードなどもあったので、この点で収穫のある作品ではある。しかし・・・出てくるのはプリンスの画像やイラストばかりで、肝心なプリンスの映像はほぼ無いし、彼の生い立ちを追う中で、そもそも彼のヒット曲が全くかからないのには正直落胆してしまった。

それもその筈、実はこの映画はプリンスの資産管理を行うプリンスエステイトから公認されたドキュメンタリーではない為で、映像や音楽の使用許可が下りなかった為なのである。内容的にプリンスの不利になるような話しは一切出てこないので、なぜ許可されなかったのかが謎だが、この関係から、プリンスのドキュメンタリーと謳うにはちょっと残念な作品となってしまったのは否めない。

そして、なぜこうなってしまったのか改めて映画を観終わって考えてみたのだが、僕が思うには、この映画の日本における“プロモーションの仕方”に大きな問題があるという結論に至った。ドキュメンタリーの原題である『Mr. Nelson on the North Side』は、まさに本来の映画内容を的確に表している映画タイトルである。この点に違和感はない。しかし、日本公開されるにあたって邦題として『Prince Beautiful Strange』としたことに大きな問題があると思った。これではまるでプリンスの映像・音楽もたくさん交えたドキュメンタリーなのかとファンは勘違いしてしまうし、宣伝映像に登場するプリンスの映像や、このタイトルも合わせてかなり“ミスリーディングで誤解を与える”宣伝の仕方である。ある意味日本ならではの宣伝マジックの妙とも言えるが、この結果、期待していた内容とは大きく違ってしまったと感じたのは、恐らく僕だけではない筈である。

まあ、気を取り直して『Mr. Nelson on the North Side』としては、プリンスのドキュメンタリーとして一定の評価をしたいと思うが、『Prince Beautiful Strange』としては、プリンスファンとして期待していた内容からかなりギャップのある、ちょっと残念な作品となってしまった。

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