絵本が好きな僕は、神保町にある絵本専門店、『Book House Café』を良く訪れる。神保町に立ち寄った時はだいたい訪れては、新しい絵本や、イベントなどを覗いてみるのが楽しみの一つになっている。
先日紹介した、ふくながじゅんぺいさん著の『へび ながすぎる』もちょうどここで原画展を開催しており、ふくながさんご本人にもお会い出来たが、今回の訪問でも、新たな出会いがあった。
ちょうどお店の入り口で、絵本作家カワダ クニコさんの『おうちくん』という絵本の原画が展示されており、サイン本が売られていた。絵本を手にして、原画なども見ていたら、思わずその優しい絵のタッチと暖かい色合いに癒されてしまい、絵本を衝動買いしてしまった。
絵本を買って、カフェでお茶をしながら絵本を見ていると、ちょうど偶然にもそこへ作者のカワダ クニコさんが友人と共にお店に来られて、絵本にサインをすることになったので、僕もカワダさんにご挨拶し、買ったばかりのサイン本に、追加で僕の名前と絵の描き足しをして貰うことが出来た。それがこちら。とてもキュートなイラストで本当に癒される。カワダさんも作家さんらしい、とても穏やかそうな素敵なお姉さまで、その性格がまさに絵本作品に現れているようだ。ご本人にお会い出来て、なんともタイミング的にラッキーであった。
そして、『おうちくん』をじっくり読んでみたのだが、これが可愛くて暖かい絵のタッチとは裏腹に、何とも切ない物語。丘の上に建っていた黄色と赤のおうち。黄色のおうちにはおばあさんが一人で住んでいて、孫のゆうくんが良く遊びに来ていた。隣の赤いおうちにはなっちゃんという女の子の家族が住んでいて、ゆうちゃんとなっちゃんは赤ちゃんの頃からのお友達。しかしある日、赤いおうちの家族が引っ越してしまい、赤いおうちは空き家になってしまう。やがておうちは劣化してしまい、ボロボロになって、取り壊されてしまう。黄色のおうちは1軒ぼっちになってしまう。
そしておばあさんも歳をとり、ゆうくんの家族と港町で暮らすことになり、黄色のおうちも空き家になってしまうのだ。やがて黄色いおうちもボロボロになって幽霊屋敷のようになってしまうが、ある日若い男性と女性が黄色い家の前に現れて、家の修繕工事を始める。どうやら家を修理してここに住むらしい。隣にあった赤いおうちが残していった赤い屋根の煉瓦を修繕に使い、すっかりキレイなおうちになって復活する。そしてその若い男性と女性は、なんと、大人になったゆうちゃんとなっちゃんだったのだ。二人がこの丘の上に戻ってきてくれたのだ。
家を可愛く擬人化することで、モノにも魂が宿っていることを教えてくれる絵本だが、古い家などの空き家問題をさりげなくテーマにしていたり、家のリノベーションを上手く絵本に取り込んでいる点も。個人的に響くものがあり、とても良い作品だと感じた。そして人は最後に自分が慣れ親しんだ、思い出の町に帰ってくるというのもささやかなハッピーエンドとなっており、おおげさに言えば、地方で進む過疎化にも僅かな希望が持てる内容なのが何とも嬉しいと感じた。
子供向けのシンプルな絵本である『おうちくん』は純粋に感動的な絵本だったが、ここまで大人としても色々と感じることが出来たのはとても新鮮な作品であった。とても大きな刺激となり、今後の自分の絵本制作への大きなモチベーションとなった!