ダイイング・アイ「今度の東野圭吾は、悪いぞ。」
帯の裏を読むと、更に下記のように書かれてあった。
「許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても-
俺をみつめるマネキンの眼。そいつは、確かに生きていた。」
これを読んだだけで、すっかり引き込まれてしまい、速攻で購入した。今回のストーリーだが、記憶を一部喪失したバーテン雨村慎介は、自分が車で交通事故を起こし、ある女性を死なせてしまった過去を知らされる。なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのか納得がいかず、事故の状況を調べ始める慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか思い出せない。同棲していた女性、成美も突然謎の失踪、しかも関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める。その上謎のエロティックな女性、瑠璃子も登場。交通事故にまつわる謎はどんどん深まるばかり。。。
「ダイイング・アイ」というタイトル通り、この作品は「目」が大きなテーマとなっている。それも「浮「目」だ。冒頭の「プロローグ」から相当引き込まれるが、東野圭吾としてはやや異例とも思える、相当エロティックな性描写やオカルト的な要素もあり、その後もどんどん謎が深まり、そして一気に衝撃的なクライマックスへと進んでいく。読者はグイグイとストーリーに引き込まれていくのだ。そして、気が付くといつの間にか主人公の雨村慎介に感情移入していた。果たしてこの作品が映画化されるのかわからないが、もしされるとすると、妖艶な謎の女性、瑠璃子は例えば誰が演じるのかにぜひ注目したい。
この作品にはマネキンの話が登場するが、昔大学時代に大学の友人たちとマネキンをテーマにしたショートフィルムを撮影したことを思い出してしまった。「Once in a Blue Moon」(極稀にある出来事という意味)という作品であったが、マネキンが繰り広げる恐浮`いたサスペンスホラーだった。当時美容室で働いていた友人から、カットモデルとして使用するマネキンの頭部を2体購入して撮影に臨んだが、これがかなり不気味だった。マネキンという人工物ながら、人間の顔に極めて近く、時折命が宿ったかのような表情を見せるところに、その不気味さがあるのだ。
前作の「夜明けの街で」もなかなか面白い作品であった。不倫というテーマにかなり焦点を当てているという点で、東野圭吾としてはやや毛色の異なるユニークな作品であったが、彼特有の暗さと殺人事件を扱っている部分は健在であった。
来月には早くも新刊の発売が予定されている東野圭吾。今度はどんな作品を届けてくれるのか、実に楽しみである。
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