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東野圭吾の新作「ダイイング・アイ」の浮ウ

ちょっと前に東野圭吾の新作、「ダイイング・アイ」を購入した。これは1998-1999年頃に「小説宝石」に連載されていたものらしいが、最近単行本になって発売された。単行本としては最新作である。東野圭吾の作品は以前から好きで良く読んでいるが、どの作品にも共通して描かれる独特の暗い世界観が凄く印象的である。今回の作品は、まず新刊として本屋に並んだ時、帯に書かれたキャッチコピーに惹かれてしまった。

ダイイング・アイ「今度の東野圭吾は、悪いぞ。」

帯の裏を読むと、更に下記のように書かれてあった。
「許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても-
俺をみつめるマネキンの眼。そいつは、確かに生きていた。」

これを読んだだけで、すっかり引き込まれてしまい、速攻で購入した。今回のストーリーだが、記憶を一部喪失したバーテン雨村慎介は、自分が車で交通事故を起こし、ある女性を死なせてしまった過去を知らされる。なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのか納得がいかず、事故の状況を調べ始める慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか思い出せない。同棲していた女性、成美も突然謎の失踪、しかも関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める。その上謎のエロティックな女性、瑠璃子も登場。交通事故にまつわる謎はどんどん深まるばかり。。。

「ダイイング・アイ」というタイトル通り、この作品は「目」が大きなテーマとなっている。それも「浮「目」だ。冒頭の「プロローグ」から相当引き込まれるが、東野圭吾としてはやや異例とも思える、相当エロティックな性描写やオカルト的な要素もあり、その後もどんどん謎が深まり、そして一気に衝撃的なクライマックスへと進んでいく。読者はグイグイとストーリーに引き込まれていくのだ。そして、気が付くといつの間にか主人公の雨村慎介に感情移入していた。果たしてこの作品が映画化されるのかわからないが、もしされるとすると、妖艶な謎の女性、瑠璃子は例えば誰が演じるのかにぜひ注目したい。

この作品にはマネキンの話が登場するが、昔大学時代に大学の友人たちとマネキンをテーマにしたショートフィルムを撮影したことを思い出してしまった。「Once in a Blue Moon」(極稀にある出来事という意味)という作品であったが、マネキンが繰り広げる恐浮`いたサスペンスホラーだった。当時美容室で働いていた友人から、カットモデルとして使用するマネキンの頭部を2体購入して撮影に臨んだが、これがかなり不気味だった。マネキンという人工物ながら、人間の顔に極めて近く、時折命が宿ったかのような表情を見せるところに、その不気味さがあるのだ。

前作の「夜明けの街で」もなかなか面白い作品であった。不倫というテーマにかなり焦点を当てているという点で、東野圭吾としてはやや毛色の異なるユニークな作品であったが、彼特有の暗さと殺人事件を扱っている部分は健在であった。

来月には早くも新刊の発売が予定されている東野圭吾。今度はどんな作品を届けてくれるのか、実に楽しみである。
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