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映画「そのときは彼によろしく」と、市川拓司の世界観

今回の欧州出張のJAL機内で、市川拓司の小説を映画化した「そのときは彼によろしく」をやっていたので見た。僕は市川拓司の小説が結構好きで、数年前からはまってしまい、これまで殆どの作品を読んでいるが、「そのときは彼によろしく」もかなり好きな作品の一つなので、どんな映画になったのか以前から興味があった。

「そのときは彼によろしく」は、アクアショップ「トラッシュ」を経営する智史と、不思議な絆で結ばれている幼なじみの花梨と祐司の3人の物語で、切なくも美しい純愛ラブストーリー/ファンタジー。映画はなかなか小説のイメージがそのままうまく映像化されていたように思う。特にアクアショップ「トラッシュ」の店内などは、小説を読んだ時に想像していたものに実に近かった。長澤まさみが花梨を演じているが、相変わらず可愛いし、「せかちゅう」に続き、すっかり純愛映画の定番になったものだ。先日の好きな女優/タレントの項目にもちょっと書いたが、最近イチ押しの北川景子が祐司の恋人役でちょっとだけ出演しているのも嬉しい(かなりちょい役だが)。智史役を山田孝之が演じているが、彼は今回のような大人しい、やや暗い役が多いがすっかり板についてきたし、ドラマ/映画などで長澤まさみ、沢尻エリカ、綾瀬はるかなどの人気U-21女優と共演しているところが凄い。

それにしても、「純愛小説の旗手」としてすっかり定着した市川拓司の小説は、作品全てに共通する要素が有り、独特な世界観を創り上げている。彼の作品で最も有名なのが、100万部以上を売上げ、駐煬去q/中村獅堂主演の映画も大ヒットした「いま、会いにゆきます」がある(興行収入48億円)。これは当時「世界の中心で、愛をさけぶ」による純愛ブーム真っ只中に登場し、ブームに一層拍車を鰍ッた。

市川拓司の作品に最初に触れたのは、高岡早紀/中村俊介主演の2003年の日テレドラマ「14ヶ月~妻が子供に還っていく~」だった。これは市川拓司のデビュー作「Separation」が原作になっているが、イタリア料理のコック見習いの10歳年下の夫(悟)を持つフリーアナウンサーの妻 (裕子)が、親友の娘と名乗る少女から貰う“若返り“の薬を口にしたことから、次第に若返っていく姿を描いている。このドラマをきっかけに、「いま、会いにゆきます」、「恋愛寫眞 もう一つの物語」、「そのときは彼によろしく」、「弘海」という順で次々と彼の作品を読んできた。

市川拓司の作品に共通して流れているテーマに、「純愛」と「死」がある。そして実際にはあり得ないようなファンタジーとしての設定の中で、主人公を取り巻くのが常に死に直面した、“不思議な病い“との闘いと、生活に何らかのハンデを抱えているという人物設定が特徴的。その残酷な病気と直面する中で、お互い相手をひたむきに思い続ける純愛が一層切なさを駆り立てる。「14ヶ月/Separation」では、どんどん若返ってしまうことによる残酷な夫婦愛の結末で、愛する妻が姿を変えてしまうという意味では、交通事故をきっかけに、娘の体に妻の魂が宿る東野圭吾の「秘密」にも通じるような切なさがあった。「そのときは彼によろしく」では、眠りがどんどん深くなっていき、やがて目を覚ませなくなって死んでしまうという不思議な病気の設定。「いま、会いにゆきます」は最もファンタジーとしての要素が強いが、最愛の妻を亡くしてしまった夫とその子供が、雨が降った日に死んだ筈の妻と再会するというストーリー。これをきっかけに駐煬去qが好きになってしまった人も多いのでは無いかと思う。「弘海」は、水の中にいる時だけ元気でいられるというこれまた奇病を抱えた少年の物語であったが、これも今までに無い、不思議な物語であった。彼独特の「純愛ファンタジー」に今後も大いに期待したい。

コメント一覧

Aki
今年の夏の映画で、何か見忘れた感がありました。
一つはかの蓮佛美沙子が出ている「転校生」と、この「そのときは彼によろしく」です。

東野圭吾作品と同様、市川拓司作品はこれまで映画(とTV)でしか見たことが無く、小説は実際に読んだ事がありませんでした。 ただ、それでも市川拓司の愛情あふれる不思議な世界に好感は抱いていました。 「そのときは彼によろしく」が映画化されるということを聞いて、今年の春ごろに小説を読むことにしました。

この小説から感じる感触は「今会いに行きます」と全く同じで、切なくも暖かくそしてどこか心の重石が取れたような開放感にあふれるものでした。 彼の小説を読むと優しい気持ちになれますね。
「純愛ファンタジー」 まさしくその通りですね。
是非他の作品も読んでみたいと思います。
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