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ジブリにはなれない、『バケモノの子』

三連休の先週末、家に最も近い新百合ケ丘のイオンシネマのレイトショーを狙って、公開が始まったはかりの『バケモノの子』を観に行った。21:15の回なので空いているかと思いきや、三連休とあってかかなり混雑していた。



『バケモノの子』は、あの『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』の監督、細田守待望の最新作!公開前から待ち遠しく、楽しみにしていた作品。

の筈だった。。。

しかし、正直に鑑賞した感想としては、う~ん、残念。。と言った感じ。多分、あまりにも期待が大き過ぎたのかもしれない。細田守監督の並々ならぬ力の入れようも感じられるし、設定や物語のスケール感もこれまでの三作品とは比べ物にならないくらいレベルアップしており、キャラクターも今回初めて男性を主役に据えたとはいえ、魅力的なキャラクターが満載で、声優陣も役所広司、宮崎あおい、リリーフランキー、大泉洋、広瀬すず等豪華な布陣にて、必勝態勢で挑んだことも明らかである。なのに何故か??



色々考えてみたのだが、この気合いの入り過ぎが自分的にはどうも腹落ちせず、感情移入できなかった理由ではないかと自己分析している。

過去の三作品はどれも大好きで、甲乙つけ難いクオリティーの高さであった。三作品に共通していたのは、限り無く現代の日常に有りそうな設定やリアルなキャラクターたちが、絶妙な度合いの非現実的であり得ない"ファンタジー"の中で活き活きと躍動していて、グイグイ引き込まれて行く点が最大の魅力で、これがまさに細田作品が他のアニメと違ってユニークだったャCントであったと思う。

『時をかける少女』では現実世界と未来世界という時空が交錯、『サマーウォーズ』がサイバーワールドと現実世界が交錯、そして『おおかみこどもの雨と雪』では人間とおおかみという生命体が交錯したファンタジー作品に仕上がっていた。この有りそうで無い、現実と非現実の微妙な狭間で繰り広げられるほのかな恋物語や家族愛に僕の心も掴まれたのだが、今回の『バケモノの子』はどうだろう?

現実世界の渋谷と、バケモノの世界である渋天街が交錯し、更には『おおかみこどもの雨と雪』で描いたような人間とおおかみの世界を今回はバケモノと人間に置き換え、『おおかみこども』が母と子の愛を描いたのに対し、今回は父性愛がテーマ。一見勝利の方程式は全て盛り込んでいるやに見えるが、まさに僕の中での"敗因"の一つははこの詰め込み過ぎにある。細田監督、かなり欲張り過ぎた印象は否めないし、これまでのような新しさも無いと言える。



そして、決定的な問題は渋天街の世界観。これはまさに宮崎駿が『千と千尋の神隠し』で描いたような、完全にオリジナリティーのあるファンタジーワールドを描こうとしてしまったような気がするが、それは宮崎駿にしか出来ない技であり、逆に細田守監督にはそれをみんな求めていないと思うのは僕だけだろうか?

今回、『バケモノの子』のスタートは興行的にかなり好調らしい。最終的にはそれなりの興行成績を収められそうだし、前作『おおかみこどもの雨と雪』超えも果たせるかもしれない。しかし、このことが今後の細田守作品の方向性を狂わせないかがとても心配である。

宮崎駿が一線から退いてしまった今、まさに細田守監督に日本のアニメ界を牽引して欲しいが、あえて宮崎駿になろうとせず、細田ワールドをトコトン追求して欲しいものである。次回作に改めて期待したい。
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