今日もArt & Science

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アルファリポ酸陰イオンラジカルのESRスペクトル

2008-02-28 14:59:05 | ESR

Anion_r_lipoate

 

 

 

 

図1 アルファリポ酸の陰イオンラジカルのESRスペクトル。

 

 

 

 

 強力な抗酸化剤ほどラジカルになり易い。アルファリポ酸も例外ではない。しかし、アルファリポ酸のESRスペクトルの観測は一工夫必要である。ラジカル同士が結合しやすいから、反応直後の濃度の濃い状態で測る必要がある。図1はMason等(JBC, 276、42677(2001))が報告したスペクトルで、HRP(西洋わさび過酸化酵素)+H2O2+フェノール系でまずフェノキシルラジカルを発生させ、このラジカルをアルファリポ酸と反応させて、ESR測定セルにフロー法で流し込み、当該ラジカルを観測した。図の右側の単一吸収線がフェノキシルラジカルで、左の複雑なスペクトルがリポ酸陰イオンラジカルのスペクトルである。

 

 アルファリポ酸のESRスペクトルは、1)フェノキシルのg=2.005に比べて、g=2.013と非常に大きい。これは硫黄原子2個の寄与を端的に示す。2)HF構造はa(1H)=7.93、a(2H)=4.28、a(2H)=1.20 gaussで解析できる。3)1個の水素によるHFCCが大きい。

 

Photo_lipoic_a

 

図2 アルファリポ酸陰イオンラジカルのESRスペクトルを説明する不対電子軌道の空間分布(UHF法で計算)。ほとんどの不対電子は2個の硫黄原子上に分布。25Hにのみ目立った分布があり、1個の水素核により、大きく2本に分裂することが分かる。

 

 

 図1のESRスペクトルを説明するには、MOPAC計算が役立つ。図2はUHF法で計算された不対電子軌道の空間分布を示す。ほとんどの(90%以上の)不対電子は2個の硫黄原子上に分布しており、大きなg値を示していることが説明できる。その他、25Hにのみ1.1%程度の目立ったスピン分布があり、1個の水素核により大きく2本に分裂することを示す。

 

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ちょっといっぷく6 上賀茂神社南側に広がる社家の町並み(改)

2008-02-27 17:30:17 | アート・文化

200802211510(クリックで拡大)

 

図1 上賀茂神社南側に広がる社家の町並み。

 

 賀茂川に架かる御薗橋を東に渡ると、古い町並みが点在している。「すぐき」に「やきもち」それに「蕎麦」屋が並ぶ。上賀茂神社の正面、一の鳥居を通り過ぎてさらに東に向かうと、図1の風景が拡がる。土塀に囲まれた社家の町並みは流石に心が和む。さらに、この明神川が風情に彩を添えてくれる。上賀茂神社の西側を流れる御手洗川と東側を流れる御物忌川が舞殿の傍で合流し、和歌で名高い「奈良の小川」となり南に流れる。境内を離れると名前が変わって明神川となるのである。明神川はこの社家町を通り過ぎたあと、用水路として北山の農地を潤している。

 

そもそも、賀茂(鴨)川の語源は氏族名の鴨氏に由来する。鴨氏は大和の葛城を本拠とする氏族で、6世紀か7世紀に相楽を経て久我(北区)の地へ移動してきたと言われている。出雲氏(下賀茂)や秦氏(太秦)とならぶ、正真正銘の平安京の先住民である。さすが歴史の産物はどこかが違う。

 

さらに東へ一丁ほど歩くと、藤木の社の傍にトビッキリ上等な坪庭がある(図2)。現代的な灯篭と竹垣と一本の若木と、そして、苔と石組みのハーモニー。これぞ京都人の雅!

 

200802281614(クリックで拡大)

 

図2 社家のアート。一日眺めていても飽きない。


アルファリポ酸の不思議ーアンチオキシダントとプロオキシダント

2008-02-26 15:11:14 | ラジカル

 アルファリポ酸は強力なアンチオキシダント(抗酸化剤)であると同時にプロオキシダント(酸化促進剤)でもある。図1に示すように、一般に、分子には化学的に活性な軌道としてHOMO(Highest occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)があり、アンチオキシダントはHOMOと、プロオキシダントはLUMOと関連する。

 

Homolumo_2

 

 

 

図1 分子のHOMOとLUMO。 両者の絶対的および相対位置によってアンチオキシダントおよびプロオキシダントとしての性格が変化する。

 

 

 HOMOから電子1個引き抜かれるとカチオンラジカルが生成するが、すぐにプロトン脱離が追随するために、結果として、水素引抜反応が進行し、活性酸素を消去して抗酸化反応が完成する。他方、LUMOに電子1個入るとアニオンラジカルが生成する。当LUMOエネルギーが酸素分子のそれより高い場合は電子移動が起こり、酸素分子はスーパーオキサイドになる。これがプロオキシダント反応の出発になる。生成したスーパーオキサイドはさらに周りの電子とプロトンを奪って、即ち周りを酸化して、過酸化水素、最後は水になる。

 

 アルファリポ酸はHOMOが高くLUMOが低い、即ち、HOMOとLUMOが接近している。これは硫黄原子が分子内にあるときの一般的な傾向であるが、当物質は特にこの傾向が強い。従って、強力なアンチオキシダント(抗酸化剤)であると同時にプロオキシダント(酸化促進剤)である。不思議な化合物と言っているのはまさにこのことである。

 

 分子軌道法に基づいて分子のプロオキシダント(酸化促進剤)の性格を定義すると、陰イオン化エネルギーは陰イオンラジカル(R-・)と元の分子(R)の生成熱差(⊿H(-))で表される: 

 

     R + e → R-・                      (1)

 

ここで、不対電子のエネルギーを零とすると、

 

    ⊿H(-)=E(R-・)-E(R)                   (2)

 

(2)式の定義に基づいて計算された代表的な化合物の結果を表1に示す。簡単にはLUMOエネルギーで比較しても良いが、陰イオン化により分子の最適化が起こり、その度合いが分子によって異なる。この最適化も考慮するには分子(陰イオン)全体の生成熱を求めるのが望ましい。

 

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1 代表的化合物のLUMOと陰イオン化エネルギー

 

 

 陰イオン化エネルギーの定義は(2)式で与えられているが、それの持つ意味はこれからの課題である。表1の代表的化合物の値を見ても理解できるように、プロオキシダントと目される化合物は大きく負にシフトしている。アルファリポ酸は中間に位置していて、プロオキシダント能はビタミンCよりも強く、キノンよりも弱い。

 

 今までのプロオキシダント効果の例では、金属イオンの共存した例が非常に多く、おそらく反応中間体として、

 

(A)-M-(O-O)  ⇒  (A+)-M-(O-O-)  

 

のような三元錯体が生成して、AフラグメントからO-Oフラグメントへの電荷移動を容易にしている可能性が高い。いずれ近い将来、これをゆっくり考察したい。

 

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アルファリポ酸(a-lipoic acid)の不思議

2008-02-18 09:39:35 | 健康・病気

 

 最近重要な抗酸化剤として注目されているアルファリポ酸(alpha-lipoic acid)は不思議な化合物である。水にも溶け、油にも溶ける。図1に示すように、骨格は飽和オクタン酸(脂肪酸)でカルボニル基以外に2重結合はない。通常、抗酸化剤と言われる化合物は活性酸素と反応してラジカルになった時、そのラジカル状態が安定化するように二重結合が沢山ある。しかし、当化合物にはそれがない。実は硫黄原子2個が3p軌道、3d軌道を駆使してその役割を担っているのである。

 

Lipoic_acid_2

 

図1  アルファリポ酸(alpha-lipoic acid)の構造。

 

 

 さらに、図1のように、生体内ではNAD(P)Hなどと2個のプロトンと2個の電子のやり取りをして、ヂチオール体と平衡状態にある。この特長を生かして、ビタミンCやビタミンEラジカルを元に戻す。即ち、修復作用をするといわれている。もしそうなら、RE(ラジカル化エネルギー)がビタミンC(65.2 kcal/mol)&E(72.6 kcal/mol)のそれより小さいはずである。早速計算してみた。なんとRE=47.9 kcal/molでNADH(61.1 kcal/mol)やPTIO(59.3 kcal/mol)よりも遥かにラジカル化容易でアスタキサンチン(37.2 kcal/mol)に次ぐ値が出た。同様にS-S結合を形成して6員環を構成するdithiothreitolでも53.0 kcal/molとなり、やはり硫黄元素2個がラジカル安定化に寄与していることが示された。計算していると分かったことであるが、ヂチオール体でも2個の硫黄原子間に弱い結合ができており、結合次数が0.2程度ある。水素1個引抜いて、ラジカル状態で計算を始めるとすぐに硫黄間に結合ができてラジカル状態の安定化に寄与する。これがREが低くなる主な要因である。dithiothreitolでも同様にS-S結合を形成して、ラジカル安定化に寄与するが、6員環を構成するdithiothreitolよりも5員環を形成するアルファリポ酸の方がより安定である。

 

 アルファリポ酸は生命維持のためにヒトの体内でも生合成される。腸内細菌によっても合成されるため、通常欠乏することはない。その量が極微量で、しかも加齢とともにその生成量は減少すると言われている。ほうれん草やトマトなどの野菜やレバーなどの肉類からも摂取することができる。従って、あまりサプリメーカーの口車に乗せられないことが望ましい。むしろ、アルファリポ酸はプロオキシダント(酸化促進剤)としての性格があるので多用は控えるべきである。プロオキダント(prooxidant)とは酸化を促進させる薬と言う意味でサプリメーカーはあまり触れないが、サプリの重要な副作用と関連する。

 

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ちょっといっぷく 5.ユリカモメ

2008-02-14 17:27:34 | まち歩き

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図1 賀茂街道とユリカモメ(クリックで拡大)。

 

 ユリカモメが鴨川や上流の賀茂川に飛来するようになったのはごく最近のことらしい。ユリカモメでインターネット検索すると1974年からとのこと。遥かカムチャッカ半島から越冬場所の琵琶湖に遣って来て、昼間の集餌場所に鴨川を選んでいるらしい。でも、今ではすっかり冬の京都の風物詩になっている。

 

 上賀茂橋の下手にも集合場所がある(写真)。紙袋を持った子供連れが散歩道に現れパン屑などの餌を撒き始めると、偵察カモメの合図とともに上流下流どこからともなく百羽近くのカモメがすぐに集まって来て、旋廻を始め、ミニ鳥柱ができる。ハト、カモ、それに最近このミニ鳥柱に加わることが多くなったトンビも遅れじとばかり集まってくるが、ユリカモメのほうが一枚上手で空中で上手に餌を捕獲する。物心の付いたばかりの子供でも大喜びで、逃げないユリカモメと戯れる。

 

 特に、夕方の4時前後、三条大橋から四条大橋にかけて、鴨川の空高く、鳥柱が立つのは壮観である。最近はその数が減ったとはいえ、数百羽のユリカモメの旋廻は見事というほかない。暫くして、どのような合図があるのか分からないが、いっせいに琵琶湖を目指して飛び去っていく。