図1 アルファリポ酸の陰イオンラジカルのESRスペクトル。
強力な抗酸化剤ほどラジカルになり易い。アルファリポ酸も例外ではない。しかし、アルファリポ酸のESRスペクトルの観測は一工夫必要である。ラジカル同士が結合しやすいから、反応直後の濃度の濃い状態で測る必要がある。図1はMason等(JBC, 276、42677(2001))が報告したスペクトルで、HRP(西洋わさび過酸化酵素)+H2O2+フェノール系でまずフェノキシルラジカルを発生させ、このラジカルをアルファリポ酸と反応させて、ESR測定セルにフロー法で流し込み、当該ラジカルを観測した。図の右側の単一吸収線がフェノキシルラジカルで、左の複雑なスペクトルがリポ酸陰イオンラジカルのスペクトルである。
アルファリポ酸のESRスペクトルは、1)フェノキシルのg=2.005に比べて、g=2.013と非常に大きい。これは硫黄原子2個の寄与を端的に示す。2)HF構造はa(1H)=7.93、a(2H)=4.28、a(2H)=1.20 gaussで解析できる。3)1個の水素によるHFCCが大きい。
図2 アルファリポ酸陰イオンラジカルのESRスペクトルを説明する不対電子軌道の空間分布(UHF法で計算)。ほとんどの不対電子は2個の硫黄原子上に分布。25Hにのみ目立った分布があり、1個の水素核により、大きく2本に分裂することが分かる。
図1のESRスペクトルを説明するには、MOPAC計算が役立つ。図2はUHF法で計算された不対電子軌道の空間分布を示す。ほとんどの(90%以上の)不対電子は2個の硫黄原子上に分布しており、大きなg値を示していることが説明できる。その他、25Hにのみ1.1%程度の目立ったスピン分布があり、1個の水素核により大きく2本に分裂することを示す。
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