今日もArt & Science

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有機ラジカル電池は大化けするか?

2015-06-22 15:11:14 | ラジカル

2001年、早稲田大とNECは種々の安定ラジカルの電気化学評価を基にして、お馴染みの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N -オキシル(TEMPO)が、酸化還元の安定性に優れていることを見出した。TEMPOはラジカル状態とオキソアンモニウム(NOカチオン)間で安定して酸化還元を繰り返すことができる。酸化還元電位もLi/Li + 比で約3.6Vと、リチウムイオン電池に近い高い値を示す。また、電気化学速度論的研究で、TEMPOが極めて大きな酸化還元速度を持つことも見出された。これはTEMPOが、一度に大きな電流を放電できる可能性、言い換えれば高出力電池の電極材料になる可能性を示した。NECでは高出力電池の開発を目的に、TEMPO構造を持つ材料を、主に有機ラジカル電池用電極材料として検討している。電極材料には電解液に不溶であることが求められる。しかし、市販されている安定ラジカル材料はすべて低分子であり、電解液に容易に溶解するという性質を持っている。そこで、TEMPOが電解液に溶けないようにするため、TEMPO構造を有するプラスチック(ポリマー)を合成した。これは、ポリマーが一般に低分子に比べ低い溶解性を示すためである。合成したのは、ポリメタクリレート骨格を有するポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン- N -オキシル)(PTMA) である。PTMAは、比較的安価な原料から少ないステップで合成できる。つまり製造コスト面でも有利である。通常ラジカルは極めて不安定であるが、PTMAのラジカルは極めて高い安定性を示した。ESRにてポリマーのスピン濃度(ラジカル濃度)を測定することにより、ラジカルの経時劣化を評価したところ、室温大気下において半年放置してもスピンの減少はまったく見られなかった。実際の PTMAの熱分解率曲線[昇温速度10度/分]及び1分間加熱後のラジカル残存率としてもPTMAは年単位で安定しており、合成後3年以上経過したものを電極活物質に適用しても、充放電が可能であり電池特性の劣化も見られなかった。熱重量分析よりポリマー骨格は220℃まで安定であり、また1分間加熱後のESR測定でもラジカルの失活は200℃まで見られなかった。PTMAは長期の保存性と熱安定性に優れていた。ラジカル材料の蓄電は分子中のラジカル構造の部分で行われる。リチウムイオン電池用電極材料LiCoO 2 の容量密度140mAh/g。1ラジカルあたりに1電子を蓄電したときのPTMAの理論容量は111mAh/gである。リチウムイオン電池の正極材料の約8割の容量を蓄電できる能力を持つ(http://www.nec.co.jp/press/ja/1203/0504.html)。何時、市販されるか長らく心待ちにしていたが、やっと、14年目にして、有機ラジカル充電器が市販されることになったhttp://gigazine.net/news/20150217-lightors/)。

 


有機薄膜太陽電池は大化けするか(日経より抜粋)

2015-06-18 10:25:45 | ラジカル
 有機薄膜太陽電池は大化けするか
野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2013/09/27 05:00

有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池の技術開発が加速している。この数年で最も変換効率が向上した太陽電池の一つになった。現時点では、ドイツHeliatek社と三菱化学が変換効率でそれぞれ約12%を実現し、開発競争でトップ・グループを形成している。同社の半透明のフレキシブルな有機薄膜太陽電池シートを用いた実証実験が行われた。三菱化学の有機薄膜太陽電池の場合、大面積のシートの変換効率は当初5~7%だとみられるが、従来の太陽電池に比べて非常に軽く、価格も将来的に大量量産が進んだ際には大幅に安く製造できる見通しである。軽くて安ければ、これまで置いたり貼ったりできなかった場所に設置できるようになり、太陽電池の使い方が爆発的に多様化する「太陽電池のユビキタス化」が起こるであろう。ホームセンター等で、“すだれ”の代わりにこうした太陽電池が売られる可能性もある。有機薄膜太陽電池を開発しているのはこの2社だけではない。日経の取材では、主に日本のメーカー数社が変換効率10~11%の有機薄膜太陽電池を既に開発しており、先行する2社を猛追しています。いわば「第2グループ」です。その中の1社である東レは最近、高分子(ポリマー)を利用した有機薄膜太陽電池で変換効率10.6%を達成したと発表した。Heliatek社や三菱化学の有機薄膜太陽電池は低分子材料を利用し、製造時に真空プロセス、あるいは塗布プロセスでも一定温度に加熱するプロセスが必要です。一方、東レの場合は加熱がほとんど必要ない「非加熱塗布法」で製造でき、既にその非加熱塗布法で変換効率10%台を実現している。「塗るだけ」のプロセスで変換効率10%の太陽電池が量産できるなら、その社会的インパクトは、今の「メガソーラー」を超えるかもしれません。世界を見回すと、この高分子系太陽電池の開発を進めるメーカーや研究機関が目白押しで、「第3グループ」を形成している。彼らの太陽電池は変換効率こそまだ8~9%であるが、太陽電池の変換効率を決める重要なパラメータである曲線因子(FF)では、0.8前後という高い値を実現する例がいくつか出てきた。0.8以上のFFは、高効率な結晶Si型太陽電池やGaAs系化合物太陽電池では実現されているが、これまでの有機薄膜太陽電池のFFは高い例でも0.6台であった。例えば、東レの変換効率10.6%の太陽電池のFFは0.641である。最近の研究成果をみると、有機材料の選択とFFは必ずしも依存関係になく、素子構造の工夫で高いFFの値を実現できる例もあるようです。仮に東レの太陽電池で短絡電流や開放電圧の値を維持したままFFを0.8にできると、変換効率は13.2%となり、一部の結晶Si型太陽電池に迫る値になります。有機薄膜太陽電池にはまだまだ伸びシロがあるようです。