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アルファリポ酸(a-lipoic acid)の不思議

2008-02-18 09:39:35 | 健康・病気

 

 最近重要な抗酸化剤として注目されているアルファリポ酸(alpha-lipoic acid)は不思議な化合物である。水にも溶け、油にも溶ける。図1に示すように、骨格は飽和オクタン酸(脂肪酸)でカルボニル基以外に2重結合はない。通常、抗酸化剤と言われる化合物は活性酸素と反応してラジカルになった時、そのラジカル状態が安定化するように二重結合が沢山ある。しかし、当化合物にはそれがない。実は硫黄原子2個が3p軌道、3d軌道を駆使してその役割を担っているのである。

 

Lipoic_acid_2

 

図1  アルファリポ酸(alpha-lipoic acid)の構造。

 

 

 さらに、図1のように、生体内ではNAD(P)Hなどと2個のプロトンと2個の電子のやり取りをして、ヂチオール体と平衡状態にある。この特長を生かして、ビタミンCやビタミンEラジカルを元に戻す。即ち、修復作用をするといわれている。もしそうなら、RE(ラジカル化エネルギー)がビタミンC(65.2 kcal/mol)&E(72.6 kcal/mol)のそれより小さいはずである。早速計算してみた。なんとRE=47.9 kcal/molでNADH(61.1 kcal/mol)やPTIO(59.3 kcal/mol)よりも遥かにラジカル化容易でアスタキサンチン(37.2 kcal/mol)に次ぐ値が出た。同様にS-S結合を形成して6員環を構成するdithiothreitolでも53.0 kcal/molとなり、やはり硫黄元素2個がラジカル安定化に寄与していることが示された。計算していると分かったことであるが、ヂチオール体でも2個の硫黄原子間に弱い結合ができており、結合次数が0.2程度ある。水素1個引抜いて、ラジカル状態で計算を始めるとすぐに硫黄間に結合ができてラジカル状態の安定化に寄与する。これがREが低くなる主な要因である。dithiothreitolでも同様にS-S結合を形成して、ラジカル安定化に寄与するが、6員環を構成するdithiothreitolよりも5員環を形成するアルファリポ酸の方がより安定である。

 

 アルファリポ酸は生命維持のためにヒトの体内でも生合成される。腸内細菌によっても合成されるため、通常欠乏することはない。その量が極微量で、しかも加齢とともにその生成量は減少すると言われている。ほうれん草やトマトなどの野菜やレバーなどの肉類からも摂取することができる。従って、あまりサプリメーカーの口車に乗せられないことが望ましい。むしろ、アルファリポ酸はプロオキシダント(酸化促進剤)としての性格があるので多用は控えるべきである。プロオキダント(prooxidant)とは酸化を促進させる薬と言う意味でサプリメーカーはあまり触れないが、サプリの重要な副作用と関連する。

 

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