今日もArt & Science

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携帯ESRの応用(9) 今、TEMPOが熱い!

2010-05-10 11:50:12 | ラジカル

Temposurface

 

図1 TEMPOラジカルの立体図。不対電子は中心のN-O部分に集中し、4個のメチル基がNO部を取り囲んでおり、非常に安定なラジカルである(黄色のNetはaccessible Surface)。

 今、TEMPOをはじめとするニトロキシルラジカルが熱い!ラジカルといえば理学部の3Kの筆頭、「化学」(ばけ学と俗称していた)オタクの単なる研究ターゲットであった。しかし、今は違う。

 まず、物理の先生方がTEMPO、C-PROXYL、その他、「良いのはないか!?」と真剣に訊ねてくる。種を明かそう。DNP(Dynamic Nuclear Polarization)の話である。高分解能NMRスペクトル強度が100倍以上の強度を示すとなれば物理の先生ならずとも「ホントー」と膝を乗り出して興味を示すことになる。測りたい化合物と共存させてTEMPOなどを溶かし、高磁場、高周波下でNMRを測定すれば強度が確実に増強される。これをDNPと称し、有機化合物のラジカルが使われているのである。世の中は変ったものだ。

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図1 リビングラジカル重合の原理。ドーマントが温度によってラジカルにかい離するとTEMPOが生まれ、重合を制御する

 次に高分子化学が一大変革を遂げている!長さ、形のととのった重合体をTEMPOなどのラジカルを使って重合できるようになったのである。「リビングラジカル重合」と総称(携帯ESRの応用(5) 「リビングラジカル重合」の項参照  )されているが、好みに応じて自由に設計できるところが昔のラジカル重合と異なる。因みにGoogleでキーワード「TEMPO ラジカル」を検索してみてください。約5000がヒットした(2010/5/20現在)。要するに、今作りたい高分子のモノマーとTEMPOをつなぎドーマントと呼ぶ。少し温度を上げればモノマーラジカルとTEMPOラジカルに分かれ、モノマーは重合を開始する。その間、TEMPOはラジカルとして存在し、均一反応を保持する。モノマーがなくなれば重合端をキャップし、重合が止まる。

 1960年代半ば、筆者が大学助手になり立てのころである。池田勇人首相は所得倍増計画を掲げて登場してきた。半信半疑であったが若手の血を掻き立てるには十分であった。ラジカルが磁性の担い手の不対電子を持つのであればラジカルは磁石になる!!幸い研究室で先輩が高感度の磁化率測定装置(島津磁気天秤)の開発に成功した矢先であった。きしくも大学に液体ヘリウムの製造装置が設置されたばかりであった。DPPH,BDPA,TEMPO,TANOL(4-OH-TEMPO)等々フランスとロシアで次々と合成に成功していた(例えば、Lebelev, O. L.; Kazarnovskii, S. N.、1960)。日本人は若きマンパワーのみであるとばかりに、極低温実験室に寝泊まりし、できた(液化した)ばかりの液体ヘリウムを取り合いして磁化率の測定を行った。データを発表すれば論文になる時代であった。DPPHは0.4Kで反強磁性体になった。TANOLはヘリウム温度近くで1次元反強磁性体になった。これが学界に登場した第一次TEMPO時代である.

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ちょっといっぷく28 加茂街道の新緑が目に沁みる

2010-05-08 10:36:54 | ちょっといっぷく

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図1 2匹のアマゴ。20cm前後の大きさが一番うまい!味は渓流の女王だけあってアユよりも格段に良い。

 ゴールデンウィークが終わったあたりから加茂街道の並木が俄かに新緑に覆われ、目に沁みる季節になってきた。ケヤキ、ムク、サクラ、カエデが入り乱れて「春もみじ」を呈する。山形にいたころは「春もみじ」という言葉を何度となく聞いた。全山一斉に赤、黄色、そして萌黄の新芽があたかも秋の紅葉を連想するのでこの名がついたのだろう。加茂街道の木々の緑がほんのひと時、錦を呈するのもこの時期である。旅行会社の広告記事に「青もみじ*1ツアー」が企画されていた。同じことを言ってるのかどうか定かではない。もうすぐ葵祭(5月15日)である。この滴る緑を借景にして王朝絵巻衣装がひと際映える。

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*1 googleで「青もみじ」で検索してください。写真入りの素晴らしい青もみじが拡がります。貴船もその一つ

 この頃、ひと際映えるものにアマゴの体色がある。冬の寒さに耐え、錆の付いたアマゴは痛々しいが、5月に入るとあの群青のパーマークが目にも鮮やかで、朱色の斑点は命の証し。貴船のアマゴを食べたくなってきた。上賀茂神社からタクシーで20分程度遡れば貴船である。むかしは貴船川と鞍馬川の合流点近くに小生だけの格好の釣り場があり、よく渓流釣りの真似事に行ったものである。帰りは貴船駅の売店のおばさんと世間話をするのが楽しみだった。いまは食い気だけが残っているのみ。