図1 TEMPOラジカルの立体図。不対電子は中心のN-O部分に集中し、4個のメチル基がNO部を取り囲んでおり、非常に安定なラジカルである(黄色のNetはaccessible Surface)。
今、TEMPOをはじめとするニトロキシルラジカルが熱い!ラジカルといえば理学部の3Kの筆頭、「化学」(ばけ学と俗称していた)オタクの単なる研究ターゲットであった。しかし、今は違う。
まず、物理の先生方がTEMPO、C-PROXYL、その他、「良いのはないか!?」と真剣に訊ねてくる。種を明かそう。DNP(Dynamic Nuclear Polarization)の話である。高分解能NMRスペクトル強度が100倍以上の強度を示すとなれば物理の先生ならずとも「ホントー」と膝を乗り出して興味を示すことになる。測りたい化合物と共存させてTEMPOなどを溶かし、高磁場、高周波下でNMRを測定すれば強度が確実に増強される。これをDNPと称し、有機化合物のラジカルが使われているのである。世の中は変ったものだ。
図1 リビングラジカル重合の原理。ドーマントが温度によってラジカルにかい離するとTEMPOが生まれ、重合を制御する
次に高分子化学が一大変革を遂げている!長さ、形のととのった重合体をTEMPOなどのラジカルを使って重合できるようになったのである。「リビングラジカル重合」と総称(携帯ESRの応用(5) 「リビングラジカル重合」の項参照 )されているが、好みに応じて自由に設計できるところが昔のラジカル重合と異なる。因みにGoogleでキーワード「TEMPO ラジカル」を検索してみてください。約5000がヒットした(2010/5/20現在)。要するに、今作りたい高分子のモノマーとTEMPOをつなぎドーマントと呼ぶ。少し温度を上げればモノマーラジカルとTEMPOラジカルに分かれ、モノマーは重合を開始する。その間、TEMPOはラジカルとして存在し、均一反応を保持する。モノマーがなくなれば重合端をキャップし、重合が止まる。
1960年代半ば、筆者が大学助手になり立てのころである。池田勇人首相は所得倍増計画を掲げて登場してきた。半信半疑であったが若手の血を掻き立てるには十分であった。ラジカルが磁性の担い手の不対電子を持つのであればラジカルは磁石になる!!幸い研究室で先輩が高感度の磁化率測定装置(島津磁気天秤)の開発に成功した矢先であった。きしくも大学に液体ヘリウムの製造装置が設置されたばかりであった。DPPH,BDPA,TEMPO,TANOL(4-OH-TEMPO)等々フランスとロシアで次々と合成に成功していた(例えば、Lebelev, O. L.; Kazarnovskii, S. N.、1960)。日本人は若きマンパワーのみであるとばかりに、極低温実験室に寝泊まりし、できた(液化した)ばかりの液体ヘリウムを取り合いして磁化率の測定を行った。データを発表すれば論文になる時代であった。DPPHは0.4Kで反強磁性体になった。TANOLはヘリウム温度近くで1次元反強磁性体になった。これが学界に登場した第一次TEMPO時代である.
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