エヴァネッセント波とは近接場波とも呼ばれ、通常の電磁波が境界面で全反射しても、境界面の近傍で滲み出し、距離に指数関数的に減衰する電磁波のことを言う。米国Case Western Reserve 大学のTabib-Azarグループが新規顕微鏡用プローブとして開発してきた近接場波プローブを用いて、ルビーのESR観測に応用し、検出限界を10E+4まで下げることに成功した。ESRの解説書を紐解けば電磁波の伝播が示されているが、反射面で指数関数的に減衰する電磁界の存在は全く示されていない。実は日本ではあまり注目されていなかったが、近接場波研究も既に20世紀末に伏線が敷かれており、Tabib-Azarも主要メンバーの一人であった。昨年6月J. Opticsに彼の一連の研究のESR版としてルビーのESR信号観測例が発表された。注目される一因は局所観測とその感度にある。通常のCW-ESRではその検出限界は10E+10スピン程度で、片やSTM-ESR、AFM-EPRではスピン1個(10E0)の観測に成功している。しかし、単一スピンの観測に成功しても計測対象が理解されたことにはならない。近接場波ESRは1個から10E+10個までをつなぐ有力な手段となりうるからである。
図1左に近接場波を発生させたプローブを示す。興味あるのは共振器で、ストリップラインの先端λg/4手前に隙間を設けて先端を腹とする共振器(Q=5000)とし、半円チップに近接場波を発生させている。ルビー結晶を当半円の内外に設置してESRの変化を観測している。検出限界が2×10E+4と見積もられている。磁場変調周波数その他、まだ改良の余地があり、10E+3程度まで計測できそうな気配である。因みに、図1右は近接場波の電場を選択的に取り出すプローブで誘電体顕微鏡などに利用されている。キーコム(株)目玉商品のひとつである。
このようなESRプローブはピンポイント計測と掃引機能を組み合わせたイメージ観測法と直結し、さらに現場計測を可能にする。そのひとつが歯や爪などをそのまま計測するBiodocimetryに繋がる。電子スピン共鳴(ESR)のルネッサンスが始まった。
さらに、もう一言付け加えると、エバネッセント波は表面より指数関数的に減衰するといったが、表面に限りなく近づくと電波はどうなるか?そう!指数関数的に増加するのである。これを用いたパルスESR装置では、高価なマイクロ波電力増幅器など不要になる!
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