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アルファリポ酸の不思議ーアンチオキシダントとプロオキシダント

2008-02-26 15:11:14 | ラジカル

 アルファリポ酸は強力なアンチオキシダント(抗酸化剤)であると同時にプロオキシダント(酸化促進剤)でもある。図1に示すように、一般に、分子には化学的に活性な軌道としてHOMO(Highest occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)があり、アンチオキシダントはHOMOと、プロオキシダントはLUMOと関連する。

 

Homolumo_2

 

 

 

図1 分子のHOMOとLUMO。 両者の絶対的および相対位置によってアンチオキシダントおよびプロオキシダントとしての性格が変化する。

 

 

 HOMOから電子1個引き抜かれるとカチオンラジカルが生成するが、すぐにプロトン脱離が追随するために、結果として、水素引抜反応が進行し、活性酸素を消去して抗酸化反応が完成する。他方、LUMOに電子1個入るとアニオンラジカルが生成する。当LUMOエネルギーが酸素分子のそれより高い場合は電子移動が起こり、酸素分子はスーパーオキサイドになる。これがプロオキシダント反応の出発になる。生成したスーパーオキサイドはさらに周りの電子とプロトンを奪って、即ち周りを酸化して、過酸化水素、最後は水になる。

 

 アルファリポ酸はHOMOが高くLUMOが低い、即ち、HOMOとLUMOが接近している。これは硫黄原子が分子内にあるときの一般的な傾向であるが、当物質は特にこの傾向が強い。従って、強力なアンチオキシダント(抗酸化剤)であると同時にプロオキシダント(酸化促進剤)である。不思議な化合物と言っているのはまさにこのことである。

 

 分子軌道法に基づいて分子のプロオキシダント(酸化促進剤)の性格を定義すると、陰イオン化エネルギーは陰イオンラジカル(R-・)と元の分子(R)の生成熱差(⊿H(-))で表される: 

 

     R + e → R-・                      (1)

 

ここで、不対電子のエネルギーを零とすると、

 

    ⊿H(-)=E(R-・)-E(R)                   (2)

 

(2)式の定義に基づいて計算された代表的な化合物の結果を表1に示す。簡単にはLUMOエネルギーで比較しても良いが、陰イオン化により分子の最適化が起こり、その度合いが分子によって異なる。この最適化も考慮するには分子(陰イオン)全体の生成熱を求めるのが望ましい。

 

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1 代表的化合物のLUMOと陰イオン化エネルギー

 

 

 陰イオン化エネルギーの定義は(2)式で与えられているが、それの持つ意味はこれからの課題である。表1の代表的化合物の値を見ても理解できるように、プロオキシダントと目される化合物は大きく負にシフトしている。アルファリポ酸は中間に位置していて、プロオキシダント能はビタミンCよりも強く、キノンよりも弱い。

 

 今までのプロオキシダント効果の例では、金属イオンの共存した例が非常に多く、おそらく反応中間体として、

 

(A)-M-(O-O)  ⇒  (A+)-M-(O-O-)  

 

のような三元錯体が生成して、AフラグメントからO-Oフラグメントへの電荷移動を容易にしている可能性が高い。いずれ近い将来、これをゆっくり考察したい。

 

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