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カーボンナノチューブ(解説)ーwikipediaを改変

2012-10-26 16:03:14 | ラジカル

Types_of_carbon_nanotubes

図1 カーボンナノチューブ(CNT)の幾何学構造図。アームチェアチューブ、ジグザグチューブ、カイラルチューブの3種に別けられる。

1991年、CNTは、日本の飯島澄男(NEC特別主席研究員)によって、フラーレンを作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から、初めてTEM(透過電子顕微鏡)によって発見された。この発見には高度な電子顕微鏡技術が大きな役割を果たしていた。また、電子顕微鏡で観察・発見したというだけでなく、電子線回折像からナノチューブ構造を正確に解明した点に大きな功績が認められている。このときのCNTは多層CNT (MWNT) であった。この発見の後、日本の遠藤守信(信州大学教授)により、化学気相成長法によるCNTの大量生産技術が開発された。当該製法により生産されたCNTは「遠藤ファイバー」と呼ばれ、既に、リチウム電池などに使用されているほか電子デバイス等多くの分野で実用化されている。

CNTに対する最初の観察と研究は、1952年のソビエト連邦まで遡る。この時点で既に2人のロシア人科学者によってCNTと思われるTEM写真と文献が書かれていた。しかし、このときは言語の問題や冷戦中という事もあり、その詳細な構造や性質などは西側諸国にはよく分からないまま研究は置き去りにされていた。その後も複数の研究者達によってCNTの観察と考察がなされていたが大きな発展はなく、その詳細な構造が解明されて材料としての重要さが認識され、量産に至るのは1991年の飯島による再発見の後のことである。1979年にはペンシルベニア州立大学の会議においてJ.エイブラハムソンにより、アーク放電によって低圧の窒素雰囲気中に生成されたカーボン繊維の特殊性について述べており(文献発表は1999年)、1981年にはソビエト連邦の研究者らによって、CNTの表面にあたるグラフェンの幾何学構造についての考察文献が発表されている。1987年にはT.ハワードによってCNTの直径が3.5nmから70nmの間とされる事やその応用性について述べられている。CNTの直径は0.4~50nm。その名の通りナノメートル単位であるため電子顕微鏡によって観察できる極小の世界である。CNTは、基本的には一様な平面のグラファイト(グラフェンシート)を丸めて円筒状にしたような構造をしており、閉口状態の場合、両端はフラーレンの半球のような構造で閉じられており5員環を必ず6個ずつ持つ。5員環の数が少ないため有機溶媒等には溶けにくい。7員環が含まれる場合には内径が大きくなるため、太さの違うCNTが形成され、8員環では枝分かれ状の構造も作り出せると考えられている。チューブは筒のような構造のためキャップを焼き切るなどにより、中に様々な物質を取りこむ事ができる。ナノチューブとフラーレンが結合したカーボンナノバッド (Carbon nanobud) という形も理論的には予測されている。

最も基本的な単層CNTの表面はグラフェンの表面図のようになっており(図1挿入図参照)、そのグラフェンの幾何学的構造の違いによって3種類のCNTが分類される。グラフェンの六角形の向きはチューブの軸に対して任意の方向にとれるため、このような任意の螺旋構造の対称性を軸性カイラルという。グラフェン上のある6員環の基準点からの2次元格子ベクトルの事をカイラルベクトルと呼ぶ。カイラルベクトルは以下のように表される。

C_h = na_1+ma_2=(n,m)

このベクトルを指数化した(n,m)をカイラル指数と呼び、チューブの直径や螺旋角はカイラル指数によって決まる。チューブの直径dは以下になる。

d = frac{a}{pi} sqrt{(n^2 + nm + m^2)}

立体構造の全てはカイラル指数によって左右される。3種類のそれぞれの構造体には名称があり、CNTの軸に直角な場合をアームチェアチューブ (n,n)、軸に並行な場合をジグザグチューブ (n,0)、それ以外のCNTはカイラルチューブと呼ぶ。

SWNTではカイラル指数によって金属型と半導体型のCNTに分かれ、n-mが3の倍数では金属型であり、3の倍数でない時は半導体の特性を示す。

銅の1,000倍以上の高電流密度耐性、銅の10倍の高熱伝導特性、高機械強度、細長い、などがCNTの電子材料としての特長であり、集積回路などへの応用が期待されている。また、半導体としてのCNTをトランジスタのチャンネルとして用いることで、高速スイッチング素子として用いられることが期待される。CNTはP型半導体的な極性を示す。

金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法は過酸化水素水を使用する方法や、アガロースゲルを用いて分離する方法などが発見されている。アガロースゲル(寒天)を用いた方法ではSWNTさえあれば家庭レベルで安価・簡単に分離する事ができる。その基本的方法はCNTをゲルの中に含ませて凍結、解凍後に絞りだすだけである。これにより95%の半導体型SWNTと70%の金属型SWNTに分離できる。さらに、化成品や医薬品の産業生産工程に広く用いられているカラムクロマトグラフィーとアガロースゲルを用いた方法では、半導体型95%、金属型90%に分離できる。分離された薄液は様々な色を呈する。IBMでは導電性CNTを焼き切る方法を用いて、半導体CNTを分離しプロセッサへの応用を考えていた。

導電性の高さと表面積の大きさ(閉口状態で1,000m2/g、開口状態で2,000m2/gに逹する)から燃料電池としての応用も進められている。内部に筒状の中空空間を有しているため、様々な分子を内包させることができる。また、CNTの持つ薄さによりペーパーバッテリーという形も考えられている。単層CNTは著しい比表面積を持ち、表面に極微量のガスが吸着するだけで物性が大きく変化する。これにより高感度のガスセンサー等への応用が期待される。

電場をかけると5員環から電子が放出されるためFED、平面蛍光管、冷陰極管のカソード(陰極)デバイスへの応用も研究されている。また、X線の発生源としての研究も進められている。スーパーグロースCVD法を用いて二層カーボンナノチューブをディスプレイ用の電極基板上に直接成長させることによって均一な電子放出特性を示す。これによりFEDの一種であるCNTディスプレイへの応用が期待される。CNTをスーパーグロースCVD法を用いてブラシ状に構造化する事で反射率0.045%という世界で最も優れた灰色体(黒い物質)を作り出す事ができる。この物質はCNT黒体と呼ばれている。ナノオーダーの1次元的物質故、原子間力顕微鏡の探針やナノピンセットなどにも応用が期待される。CNT探針を用いた光ディスクのナノピット形状の測定など将来の100GB以上のナノ光ディスクへの応用も考えられている。

アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つため、将来軌道エレベータ(宇宙エレベータ)を建造するときにロープの素材に使うことができるのではないかと期待されている。多層CNTは、導電性、弾性、強度に優れ、ヤング率は0.9TPa、比強度は最大150GPa。一方、単層CNTは半導体となり、極めて高弾性で破断しづらく、優れた熱伝導性などMWNTとは異なる特性を持つ。ヤング率は1TPa以上、比強度は構造によって異なり13~126GPa。現時点ではバッキーペーパーと呼ばれるシートが研究段階で開発されている。スーパーグロースCVD法によって製作されたSWNTによる薄膜の密度は0.037g/cm。触媒操作によりSWNTとMWNTの比率も変えられる。

ダイヤモンド・アンビルセルを用いてSWNTを24GPa以上に常温加圧する事により、電気伝導性を有する超硬度材料(超硬度ナノチューブ(SP-SWCNT))を合成できる。ナノインデンター硬度測定法による硬度は62~150GPaでダイヤモンド150GPaに匹敵し、体積弾性率は462~546GPaでダイヤモンド420GPaを超える。ラマン効果を用いたスペクトル計測では、不可逆変化を起こしている事が分かった。なおダイヤモンドは絶縁体である。フラーレンを用いて同様の方法で製作された物質にハイパーダイヤモンドがある。ダイヤモンドの2倍程度の硬度とされる。複合材として用いる事でハイパービルディングや大型の橋梁用ケーブル、自動車、航空機、戦闘機、宇宙船などの従来物質では不可能な構造物への応用が考えられる。また、スポーツ製品や自転車などの一般製品にも利用され始めている。シリコンゴムのような性質で極環境下でも粘弾性を持つCNTが発見されている。この物体は、-196 ℃から1000 ℃の温度範囲で粘弾性を示し、-140~600 ℃で、0.1~100ヘルツの振動数範囲では、周波数に依存しない安定した粘弾性を示す。さらに100ヘルツで1 %のねじり歪みを100万回加えた後も、劣化や破断がない。

各種フラーレンを内包したピーポッドやTCNQ、カロテノイド、種々のポルフィリンなどの有機分子を内包したものが作製されている。最近になって単層CNT内部では水の融点が高くなり、常温常圧下でも氷を作ることが発見された。防刃チョッキや防弾チョッキ用のケブラーに変わる高強度繊維としての利用も考えられている。終端処理したMWNTは極低温において超電導を示す。転移温度T_c=12Kで、グラファイト構造などが寄与するものと考えられる。

作製方法

アーク法黒鉛電極をアーク放電で蒸発させた際に陰極堆積物の中にMWNTが含まれる。その際の雰囲気ガスはHeやAr、CH4、H2などである。金属触媒を含む炭素電極をアーク放電で蒸発させるとSWNTが得られる。金属はNiやCo、Y、Feなどである。この方法において、正負電極に微振動を連続して加えるフィジカルバイブレーション法がある。これにより、ナノチューブの純度および単位時間当たりの生成量を飛躍的に高めることが可能である。

レーザーアブレーション法Ni-Co、Pd-Rdなどの金属触媒を混ぜた黒鉛にYAGレーザーを当て蒸発させ、Arの気流で1,200℃程度の電気炉に送り出すと炉の壁面に付着したSWNTが得られる。高純度なSWNTが得られるが、大量合成には向かない。触媒の種類と炉の温度を変えることで直径を制御できる。

CVD法:通触媒金属のナノ粒子とメタン (CH4) やアセチレン (C2H2) などの炭化水素を500~1,000℃で熱分解してCNTを得る。DIPS法大規模生産向けの手法。常のアルコールCVD法やSG-CVD法は基盤を用いる。

DIPS法:触媒(その前駆体を含む)及び反応促進剤を含む含炭素原料をスプレー等で霧状にして高温の加熱炉に導入することによって単層CNTを流動する気相中で合成する。DIPS法はCVD法の一種であり、気相流動法とも呼ばれる。DIPS法はスケールアップが容易であることと、連続的運転が可能であることが特徴である。AISTと日機装が新しく改良したDIPS法ではSWNTの直径を0.1nm単位で精密に制御でき、従来に比べ触媒利用効率3,900%、量産性100倍、紡糸や製膜化を可能とする。SWNTの純度は97.5%程度である。

スーパーグロースCVD法:産業技術総合研究所ナノカーボン研究センターにおいて、畠賢治、飯島澄男らによりスーパーグロースCVD法 が発表された。CVD法の一種である本法は通常の気相合成雰囲気中に極微量の水分を添加する事により触媒の活性及び寿命が大幅に改善され、高効率、高純度な単層カーボンナノチューブを得ることができる。この合成法による成長速度は以下の数式によって表される。

H(t) = {beta}{tau}_o ({1 - e^{-t / {tau}_o}})

βは成長定数で207 μm/分、{tau}_oは触媒特性時間。

その効率は、触媒効率ではレーザーアブレーション法に比べて100倍、時間効率では2004年の公開時の実験では厚さ2.5mmのSWNT薄膜を形成するのに要した時間はわずか10分であった。純度は99.98%以上、表面積は閉口状態1,000m2/g、開口状態2,000m2/g、重量密度は薄膜で0.037g/cm3、固体で0.55g/cm3と非常に高性能である。これまではHiPco法で5~30%、通常のCVD法で3~15%の触媒金属やアモルファスカーボンなどの密度の高い不純物が含まれていた。そのため標準的な試料のSWNTの密度は1.4 g/cm3程度であったが、この製造方法では高密度固体の形状でも非常に軽い。また触媒操作する事でSWNT膜だけでなくDWNT膜やMWNT膜の形成も可能である。CNTの直径によりその含有率は変わり、SWNTとほぼ同程度の純度の薄膜を形成できる。純度等の問題も併せて量産が難しかったCNTの大量生産を実現する技術とされる。また、この技術を用いると、その配向性の高さから、花びらのような構造体を成長させることも可能である。この方法で合成されたCNTは、基板の上に貝割れ大根のように上向きに密集して成長する。この配向性を利用してCNT黒体などがAISTにより製作されている。サンプルはAISTによって提供されている。

健康被害を及ぼす恐れ

日本トキシコロジー学会が発行する『ジャーナル・オブ・トキシコロジカル・サイエンス』(2008年2月号)において、がん抑制遺伝子欠損マウスによる実験で発癌性がある可能性が報告されており、健康影響に関する研究、予防的曝露防止対策等に関する検討を推進すること、さらに安全対策が早急に図られるよう国に対して提案要求がされた。

CNT技術を用いた製品は、アスベストに似た健康被害を及ぼす可能性があることが2008年5月21日、英科学専門誌「Nature Nanotechnology」に掲載された論文により明らかとなった。この研究発表を行ったのはエジンバラ大学(University of Edinburgh) のケネス・ドナルドソン (Kenneth Donaldson) 教授を中心とする研究グループ。研究グループによるとCNT一般、特に、CNT技術を用いた素材はアスベストに似た健康被害を及ぼし、肺癌などを誘発する危険性が高いと論じている。

 

 


ちょっといっぷく36 炭素繊維でがん死滅

2012-10-21 14:11:39 | 健康・病気

 村上達也 京大物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)助教・iCeMS京都フェロー、今堀博iCeMS教授らの研究グループは、橋田充iCeMS・薬学研究科教授、磯田正二iCeMS客員教授、辻本将彦iCeMS研究員らと協力し、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、生体に優しい近赤外光の照射によって活性酸素種を効率良く生成し、さらにその活性酸素種が癌細胞を死滅させることを発見した。これまで、SWNTの発熱作用が、癌の光線治療メカニズムとして注目されてきたが、本研究では、SWNTが熱だけでなく活性酸素種も用いて癌を死滅させることを明らかにした。今後、半導体性SWNTは、これら2つのメカニズムで癌細胞を死滅させるナノ材料としての活用が期待される。
本成果は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費 基盤研究(B)研究課題「ナノ細胞工学:ナノ材料の細胞内精密配置と機能発現」(代表者:村上達也)の一環として行われた。論文は近日中に米科学誌「アメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society = JACS)」のオンライン速報版に掲載される予定である。

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図1 生体に優しい近赤外光の照射によって活性酸素種を効率良く生成し、さらにその活性酸素種が癌細胞を死滅させる(クリックで拡大)。

“Photodynamic and Photothermal Effects of Semiconducting and Metallic-Enriched Single-Walled Carbon Nanotubes”
Tatsuya Murakami*, Hirotaka Nakatsuji, Mami Inada, Yoshinori Matoba, Tomokazu Umeyama, Masahiko Tsujimoto, Seiji Isoda, Mitsuru Hashida, Hiroshi Imahori*
Journal of the American Chemical Society (JACS), DOI: 10.1021/ja3079972

 金属性SWNT と半導体性SWNT への分離・濃縮は、蛋白質精製用のゲルを用いている。SWNTは水に全く分散しないため、それぞれの分散液には、SWNT 研究で頻用される合成界面活性剤(SDSなど)が含まれている。この結果、元のSWNT を、金属性:半導体性の量比が55:45 と14:86 のSWNT に分離することができた。今後、金属性SWNT が濃縮された前者をm-SWNT(metallic-SWNT)、半導体性SWNT が濃縮された後者をs-SWNT (semiconducting SWNT)と呼ぶ。得られた各SWNT 分散液に808 nm の近赤外レーザーを照射すると、その光線温熱効果によって、いずれの分散液の温度も上昇しましたが、その温度上昇は、s-SWNT よりもm-SWNT の方が大きいことがわかった。つまり、m-SWNT はより高い光線温熱効果を示すことがわかった。次に同じ実験条件で、活性酸素種の生成を比較した。O2 からの活性酸素種の生成メカニズムはtype I とtype II の2 種類があり、前者ではスーパーオキシドアニオン(O2●?)、後者では一重項酸素(1O2)が生成される。ちなみに光線力学療法で強力な抗癌活性を示すとされているのは、1O2 である。これらの活性酸素種の検出試薬存在下で、808 nmレーザーをそれぞれのSWNTに照射したところ、いずれの活性酸素種もs-SWNTでのみ生成を確認することができた。すなわち、近赤外光照射下では、s-SWNTはm-SWNTよりも非常に高い光線力学効果を示すことがわった。それらの生成量はレーザーパワーに比例して増加した。また、s-SWNT分散液中に酸素を吹き込んでからレーザー照射すると、1O2の生成のみ増強され、このことはs-SWNTが従来の光線力学効果メカニズムに従って活性酸素種を発生したことを示している。最後にs-SWNTの光線力学効果が、癌細胞を死滅させるかどうか調べた。先述のとおり、s-SWNTは全く水に分散しないため、これまで合成界面活性剤を用いて実験を行ってきた。しかし合成界面活性剤は強い細胞毒性があるため、細胞実験を行うためにはsSWNTを別の物質で分散安定化する必要があった。本研究グループでは、高比重リポ蛋白質(HDL=High-density lipoprotein)も研究対象としており、HDLはSWNTに吸着することが知られている。試行錯誤の結果、HDLを用いてs-SWNTの分散安定性を保持しつつ、合成界面活性剤由来の細胞毒性をほぼ完全になくすことに成功した。このHDL処理s-SWNTを癌細胞の培養液に添加し、808 nmレーザーを10分間照射すると、45%の癌細胞が死滅した。重要なことに、1O2の消光剤を添加してレーザー照射すると、癌細胞の死滅率は28%に低下し、1O2がs-SWNTの殺細胞活性に寄与することが明らかとなった。この時培養液の温度は41℃にまで上昇していたことから、s-SWNTは1O2と熱の両方を用いて癌細胞を死滅させたと考えられる。

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ちょっといっぷく35 今年のノーベル化学賞はG-protein coupled 受容体

2012-10-11 12:00:29 | うんちく・小ネタ

今年のノーベル化学賞はG-protein coupled receptor(GPCR)研究のR.LefkowitzとB.Kobilka が受賞することになった。蛋白と基質の結合エネルギーの重要性が評価された気がする。非常に喜ばしい傾向である。

Gタンパク質共役受容体はGタンパク質結合受容体あるいは細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体(図1)と呼ばれることもある。細胞外の神経伝達物質やホルモンを受容してそのシグナルを細胞内に伝えるが、その際Gタンパク質(large G protein)と呼ばれる三量体タンパクを介してシグナル伝達が行われる。全タンパク質中最大のスーパーファミリーを形成している。GPCRは人間の場合、全身に300ほどあり、多くの疾患に関与しているため、市販薬の数割がGPCRを標的としている。(http://www.pdbj.org/eprots/index_ja.cgi?PDB%3A3p0g

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図1 GPCR機能の模式図

B.Kobilka 等が解析したGPCRの例を図2に示す。GPCRの1つであるβ2アドレナリン受容体とGタンパク質(Gs)の複合体の構造をとっている。、赤色がGPCR(β2R)で緑色がGα、青色がGβ、黄色がGγである。Gタンパク質共役受容体(GPCR)はN末端が細胞外に、C末端が細胞内にあり、αヘリックスからなる膜貫通(TM)ドメインが7カ所ある。 一方、GPCRと共役しているGタンパク質はα(約40 kDa)、β(約35 kDa)、γ(約7~8 kDa)の3つのサブユニットから構成されている。生理的環境においては、β及びγは互いに固く結合しており、Gβγ複合体と呼ばれる。一方、GαにはGTP/GDP結合部位が存在しており、ここにGDPが結合しているとき、Gタンパク質は不活性型として三量体構造Gαβγを取って、Gタンパク質共役受容体と結合している。2011年になってβ2アドレナリン受容体とGタンパク質の複合体の立体構造が解かれた(図2)。

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図2 G-protein coupled receptorの結晶構造図1例。N末端が細胞外に、C末端が細胞内にあり、7つの膜貫通ドメインと細胞内と細胞外にそれぞれ3つずつループがある(PDB ID 3P0G)。

是非ともGPCRの結合エネルギーを計算して量的に把握したい。

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