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注目のポリフェノール:レスベラトロール

2008-01-31 13:26:58 | 健康・病気

Resveratrol

  レスベラトロール (Resveratrol: 3,5,4'-trihydroxystilbene)は細胞レベルや動物実験での研 究が進んで、アンチエイジング、心臓血管病、糖尿病、悪性腫瘍等に有用と、最近最も注目されているポリフェノールである。大手の化粧品メーカーがすでに製造販売の名乗りを上げている。

 レスベラトロールはフィトアレキシン(phytoalexin)の一種で、植物が病害虫、悪天候などから身を守る物質である。植物でトランス型レスベラトロールが最も多く含有されるのはぶどうの皮、ピーナッツの皮である。タデ科のイタドリにも含まれているがシス型が多い。レスベラトロールの誘導体に、炎症を防止するヴィニフェリン(viniferin)、配糖体のピセイド(piceid)などがある。 最近、このレスベラトロールがフレンチパラドックスの主役と考えられる証拠が次々と発表されている。

 フランス人は欧米で最も多くの肉やアルコールを消費するにもかかわらず、フランス人の平均寿命はヨーロッパで一番長い。 これがフレンチ・パラドックスと呼ばれるなぞである。 なぜ,同じく高脂肪・高カロリーの食習慣のアメリカ人よりも、心臓病になる確率が低いのか? ニューヨーク・タイムズ紙によれば,レスベラトロールがこの謎を部分的に説明するのではないか、と推測している。フランス人の赤ワインの消費量は勿論世界一である。

 レスベラトロールが脚光を浴びるようになったのは,2006年11月初旬、米国ハーバード大学と米国立老化研究所(NIA)の研究者が画期的な研究結果を報告した。 米国ハーバード大学のシンクレア博士等は、レスベラトロールを肥満のマウスに大量に投与した。その結果,肥満による悪影響が減少し、寿命が延びることが認められた。研究者たちは,マウスに高脂肪,高カロリーの食事を与えた。当然、マウスは肥満になり、糖尿病の兆しが見られ、肝臓はひどく肥大化し、標準的な食事を与えられたマウスよりもずっと早く死ぬようになった。 別のグループのマウスにも高脂肪・高カロリーの食事を与えた。しかしこちらのマウスには、レスベラトロールを大量に投与した。結果、 確かに、体重は増えつづけ、レスベラトロールを投与されなかったマウスと同じくらい肥満になった。しかし、注目すべきなのは、レスベラトロールの投与により、グルコースとインスリンの血中濃度が低下し、肝臓の大きさが正常に保たれたことである。 それだけでなく、レスベラトロールによって、マウスの平均寿命が大きく延びた。レスベラトロールを投与されたマウスは、投与されなかったマウスよりも,何ヶ月も長生きした。さらに、標準的で健康的な食事を与えられたマウスと比べても、同じほど長生きした。さらに、シンクレア博士等は,レスベラトロールを投与された肥満のマウスにどれほど運動能力があるかを調べた。すると、レスベラトロールを投与されたマウスは成長するにつれ運動力が良くなることが観察され、最終的には,健康的な食事を与えられたマウスと同じほど活発に運動していたというのである。

 レスベラトロールにまつわる話がもうひとつある。2007年8月、ケンブリッジ大Walker博士等はレスベラトロールが配位したF1-ATPaseの結晶構造解析をPNAS誌上に発表した。発表の大事な部分を」図2に示す。F1-ATPaseとは簡単に言えば生物のエネルギー代謝を司る酵素で、ADPとATPの間を変換させる。興味あるのはそのメカニズムである。図2Aのように、3個のαおよび3個のβサブユニットが恰もモーターのように固定子を構成し、中央の軸位置に回転子のγサブユニットがあり、これが回転する。3個のβサブユニットにはそれぞれADP(またはATP)が配位するポケットがあり、回転子が120度回転するごとにATPが生成(消滅)するというものである。この回転触媒モデルで1997年ノーベル化学賞をBoyer博士とともに受賞した。

F1atpaseresveratrol

 

図2 レスベラトロール(緑色)が配位したF1-ATPaseの断面図。Aは回転軸に沿って眺めた図で中央の青色がγサブユニット。図ではこの回転子のそばにレスベラトロールが挟まっている。Bはレスベラトロールとそれをはさむ1個のβと回転子のγサブユニットを表す。

 図2はレスベラトロール(緑色)が配位したF1-ATPaseの断面図で、レスベラトロールが配位することにより回転子の回転が止まり、ADP⇔ATP変換がとまる。そうするとミトコンドリアの機能が止まり細胞死(アポトーシス)をはじめ、多くの効果をを引き起こすというものである。ケルセチン、ピセアタノールなどのポリフェノールも同様な位置に配位し、微妙に異なる効果を発揮しているようである。結晶構造解析から直接生化学現象を説明しようとするのは飛躍がありすぎるが、当化合物がエネルギー代謝を制御していることは確かなようで、その後のストーリー構築が鍵になりそうである。

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