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携帯ESRの応用(3)-トリアージュ(triage)

2008-05-31 10:52:00 | ESR

 今年の9月7-10日の4日間、米国 Dartmouth 医科大で Swartz 博士が中心になって、第二回目のBIO-DOSE 2008 が開催される(http://www.BioDose2008.org)。主な趣旨は核の事故やテロが発生(米国では軍を中心に真剣に考えている)したとき、救急体制に傷病者を被爆分類、「トリアージュ」する必要があるが、ESR計測法がその有力な手段の候補として挙げられている。簡単に言えば、毛髪、爪、又は歯といった生体の固形部分に残っている被爆情報(ラジカル生成量)を現場で的確に計測し、傷病者を分類しようとするものである。しかし、その判断基準となる根拠が不明確であるので国際シンポを開催し、精確な国際基準を構築しようとするものである。

 トリアージュとはフランス語のtriageに由来し、元来「選別」や「分類」を意味する。この言葉自体、ラテン語の3に由来するので3つに分類することを意味する。19世紀のヨーロッパで、戦場において、負傷者の手当につき、階級にかかわらず、

1)治療を施しても死亡すると思われる者、

2)治療を今すぐにしなくとも生存する者、そして、

3)今治療をしないと死亡する者、

の3種類に選別し、最後のカテゴリーの傷病者を優先させたことに始まるとされる。今では、戦場に限らず、大地震などの災害時における救急医療での原則となっている。
 わが国でこのような考え方を取り入れた先駆者の1人は、日本医科大学の山本保博教授だとされる。1980年にカンボジア難民救援事業に参加し、限られた人的物的資源の中でできる限り多くの人を救うための原則として、トリアージという考え方を学んだという。そしてそれは阪神大震災の際に大きな力となった。
 日本では、4色のトリアージ・タッグを右手首に取り付けて傷病者を分類する。
○カテゴリー0 黒(Black Tag)、死亡、もしくは現状では救命不可能とされるもの。
○カテゴリーⅠ 赤(Red Tag)、生命に関わる重篤な状態で、救命の可能性があるもの。
○カテゴリーⅡ 黄(Yellow Tag)、生命に関わる重篤な状態ではないが、搬送が必要なもの。
○カテゴリーⅢ 緑(Green Tag)、救急での搬送の必要がない軽症なもの。
そして、搬送や救命処置の優先順位はI → II → III → 0 の順となる。
 要するに、トリアージの考え方は、限られた医療資源をより効率的に利用しようという
ことである。無尽蔵の資源が一度に利用できるなら選別や分類は不要であるが、現実はそ
うではない。それが最も典型的に現れるのが戦時や大災害における救命の場面であり、助
けられる命をまず助けることが公正であり正義にかなうとされているのである。

 5月現在、重量27kgの携帯ESRX-10SAは20mgの爪で1Gyまでの被爆測定が可能になってきた。ESRX-10SAのテスト機種が既にDartmouth医科大に納入され、データ収集が開始されている。真にトリアージュ機種として活躍するにはまだ感度、重量、大きさそれぞれ不十分である。今年の9月までが一勝負!

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携帯ESRの応用(2)-DNA検査より高感度:ラジカルイムノアッセイ法

2008-05-21 16:22:47 | ESR

 ESRという大型分析機器を持ち運びできるように軽量化を行った結果、さまざまな応用展開が可能となってきた。1)現地、現場でのマイクロバブル計測、2)ELISA法への応用ーエンザイムイムノアッセイ、等々。マイクロバブルについては既にまとめたので、ここでは2)について述べる。

 なお、当エンザイムイムノアッセイはB型肝炎ウイルス検出のために、元山形県生物ラジカル研究所青山正明氏が中心になって開発されたもので、超高感度性を誇ることを付記しておく。

Elisa_2図1 ELISA法の原理(クリックで拡大)。

 ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay:酵素免疫測定法)とは、酵素標識した抗体または抗原を用い、サンプル中に含まれる微量の目的物質を抗原抗体反応を利用して定量的に検出する方法である。ELISA法は 1)目的物質を1 attomole(=10の18乗分の1モル)という高感度で検出することができ、定量性にも優れている、2)抗原抗体反応を利用して検出するため粗抽出段階で測定が可能であり、他の検査法で必要とされる精製や前処理といった煩雑なステップを必要としない、3)短時間で大量のサンプルを測定できる、などのメリットがある。
 ELISA法とは、図1に示すように、ビーズ表面、マイクロプレートのウェルやプラスチックチューブなどの固相に、あらかじめ目的物質に対する抗体を結合させておく。これにサンプルを添加すると、サンプル中の目的物質が抗原抗体反応により固相に結合する。夾雑物を洗い流した後、酵素標識した第二の抗体を添加すると再度抗原抗体反応が起こり、「固相化抗体/目的物質/酵素標識抗体」のサンドイッチ構造が構築される。ここで遊離の酵素標識抗体を洗い流し、発色(標識酵素)基質を添加すると、サンドイッチ構造の量(すなわちサンプル中の目的物量)に比例して発色反応が起こる。生成した発色物質の吸光度を吸光度計で読み取り、濃度既知の標準品を用いて作製した標準曲線からサンプル中の目的物量を定量する。

 ELISA法の適応範囲は広く、特に、血液検査の検査項目の多くに適応されている。

 

Photo_4 図2 ラジカルイムノアッセイ法の原理(クリックで拡大)。

 ラジカルイムノアッセイ法はESR測定法を応用できるように、ELISA法において、標識抗体以下を次のように修正した方法である:酵素HRP標識した第二の抗体を用い、発色基質に換えてをp-AP(p-acetamino-phenol)を添加すると、サンドイッチ構造の量(すなわちサンプル中の目的物量)に比例して基質ラジカルが生成するが、二量化が速いため、さらに第二基質HTIOを添加し、ラジカル変換してESRスペクトル測定する。濃度既知の標準品を用いて作製した標準曲線からサンプル中の目的物量を定量する。

 図2に示すように、2ml程度の試料瓶に抗体を固定化したビーズ(試薬1)、検体(血清)、および標識抗体(試薬2)を加えて抗原抗体反応が十分進むように30分間しんとうする。次に、未反応物質を除去するために純水を加えて洗浄する。この段階でウイルス抗原はビーズにトラップされさらに標識抗体が結合したサンドウィッチ構造が生成している(図2中ほど挿入図参照)。この段階で抗原(ターゲット):酵素=1:1であることに注意されたい。

 つぎに、酵素反応を開始するために、H2O2(試薬4)とPAP(試薬5)、さらにHTIO(試薬6)を添加して、さらに30分間しんとうする。ここで、H2O2はHRPのFeを酸化し、自らは水になる。酸化されたFeは基質のPAPから水素を引抜いてラジカル化し、自らは元に戻る。フェノキシルラジカルはHTIOから水素を引抜きHTIOをラジカル化する。H2O2を十分多量に加えているので反応停止薬添加まで反応が持続するため、HTIOラジカルが百万個程度生成する。HTIOは酵素のポケットに入らないのでFeによる直接水素引き抜きは起こらない。NaN3(試薬7)を添加して反応を停止し、目的物量の百万倍に増幅されたHTIOラジカルの溶液をESR測定に供する。

(成功例)1)B型肝炎ウィルスキャリアー血清を用いたHBs抗原の測定

B図3 エンザイムイムノアッセイによるB型肝炎患者血清の測定例(クリックで拡大)。コントロールの信号を基準にして患者の信号を数値化(S/N比)している。

 当法の適用により新しく判明した点をまとめると、

a) キャリアー自身に自覚症状がなく健常者と思っている。

b) 肝炎発病への移行時期は分からないが将来発病の可能性がかなり高い

c) 献血時のスクリーニングをすり抜けて輸血用血液として使用される場合がある。

d) 遺伝子(DNA)検査の感度が最高という過信がキャリアーの見落としを招いている。

ことが挙げられる。当法の方がDNA検査よりもはるかに感度が良い。

(成功例2)スギ花粉アレルゲンCryj1の高感度測定

Photo

図4 スギ花粉アレルゲンCryj1と花粉飛散情報(クリックで拡大)。

 この場合、試薬1の抗原固定用抗体として、Cryj1モノクローナル抗体を、また標識抗体として、HRP標識Cryj1モノクローナル抗体を用いている。そのほかは上記原理と同じである。結論としては、高感度化により、

a) 花粉の飛散が検出できない段階でCryj1(抗原)が明確に検出される。空気中に飛散し、地上に落下した後でも分子量の小さいCryj1が空中に漂っていると考えられている。

b) 花粉症患者の自覚症状はCryj1の飛散量によく相関し、花粉飛散日よりも20日以上早い。

ことが挙げられる。当法はスギ花粉に限らず、試薬1&2を交換することにより、イネ花粉やダニアレルゲン等、他のアレルゲンにも適用できるので、応用範囲が広い。

(以下、工事中)

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ちょっといっぷく10.半木(なからぎ)の道

2008-05-19 20:47:29 | まち歩き

2008041213382 図1 2008年4月12日、半木の道に沿って咲く紅枝垂桜とお茶席。背景は植物園の一部の半木の森。(クリックで拡大)

 賀茂川(加茂川)に架かる北山大橋から北大路橋の間、東岸の京都府立植物園沿いの道は、「半木(なからぎ)の道」と呼ばれ、紅枝垂桜(ベニシダレザクラ)で知られる散歩道として市民に親しまれている(正確には図1上方の道)。この「半木(なからぎ)の道」という名前は植物園内に祀られている「半木神社(なからぎじんじゃ)」に由来している。半木神社は、賀茂川の上流、西賀茂にあった流木(ながれき)神社の祭神の内の一座が賀茂川の増水で流失して、この地に漂着したために社殿を造って祀ったと伝えられ、「流木(ながれき)」が転じて「半木(なからぎ)」となったと言い伝えられている。この神社は、天太玉命(あめのふとたまのみこと)を祭神(*1)とする半木町の鎮守社であり、また、植物園内の神社周辺の森は「半木の森」と呼ばれ、古代山城盆地の植生を残す貴重な自然林として保存されている。
 半木の道は京都市民の憩いの場として整備された鴨川河川敷公園に属する約800mの遊歩道で、京都鴨川ライオンズクラブの手によって昭和47年(1972)~51年(1976)の5年計画で紅枝垂桜(べにしだれざくら)が植樹され、現在も保護・保全が続けられている(図1)。桜は、現在では大きく成長し、桜のトンネルを潜るのが楽しい散歩道になり、春だけでなく、春夏秋冬、鴨川河川敷の草花や鳥達を眺めながら散歩できるお勧めの小道になってきている。双眼鏡必携!運が良ければバンやゴイサギにもお目に掛かれる。バンは小ぶりで黒っぽい体つきであるが真紅の額と嘴をしているから遠目にもすぐ分かる(図2)。

Photo_2 図2 クイナ科のバン。大きさはウズラ程度か。(クリックで拡大)。

 散歩にジョギング、キャッチボール、謡や楽器の練習、等々、鴨川公園は生活に密着した新しい公園に成りつつある。 

(*1)天太玉命(あめのふとたまのみこと)は、機織り技術に優れた古代氏族・錦部氏が祀っていた殖産の神で、この錦部氏が西陣織のルーツという説から西陣織の神ともいわれている。


ちょっといっぷく 9. 葵祭(一部追加)

2008-05-16 14:39:00 | まち歩き

2008051515502  5月15日は、京都3大祭の一つ、葵祭りの日である。朝から堀川通りが何となく賑やか。上賀茂神社の縁日ともなると御薗橋から渋滞の車が並ぶのは何時ものことであるが、地図やガイドブックを持った旅行者がひときは目立つ。葵祭りの行列が御所を出発するのは確か10時頃で、下鴨神社で昼になり、賀茂街道を北上して御薗橋に近づくのは午後3時頃になるはずである。まだ朝の9時だと言うのにもう既に車の渋滞が始まり、人の話し声が華やいでいる。そういえば、葵祭の賑わいは今に始まったことではない。古墳時代後期の欽明天皇(540 ~571年)のとき、凶作に見舞われ飢餓疫病が流行したため、天皇が勅使をつかわし「鴨の神」の祭礼を行ったのが起源とされている。 「源氏物語」(葵の巻)に、斎王列見物にでかけた葵の上と六条御息所の車争いが起こった。今を時めく光源氏の正妻、葵の上と、源氏の愛が冷めた御息所の衝突。御息所の車は見物の列からハジキ飛ばされた。気のすまない御息所のうらみは生霊となって、やがて葵の上にとりつくのである(京都新聞より)。

2008051515422(蛇足1)この有名な場面の「葵祭の車争い」について、「源氏物語車争図屏風」(京都市歴史資料館所蔵)をもとに精密拡大印刷した大型パネル(4m×18m)が製作され、斎王代の御禊の儀が行われる5月4日から葵祭当日の5月15日まで上賀茂神社に掲示された(写真の出来があまりよくないので掲載は取りやめ。本物を見て頂きたい)。

 また、「今昔物語」(巻ニ八ノ二)には、葵祭の翌日、斎王列が帰るというので、頼光四天王で名高い坂田公時ら3人が見物に。でも、馬では野暮だし徒歩では人目がある。「牛車で見物としゃれ込んでは…」。1人の提案に全員が同意。早速に出かけたが、慣れない車にゆられて強者も車酔い。車の中でグウグウ、スウスウ。目を覚ましたときは、行列は過ぎたあとで、文字どおり、あとの祭り!!!

 葵祭りでは、装束の着付け、調度など平安期の文物風俗を忠実に保っている。これが葵祭りの魅力。本来、勅使が下鴨、上賀茂両神社で天皇の祝詞を読み上げ、お供えを届けるのが目的の祭りで、天皇が在京の時代には、行列の飾り馬と出立の舞を見学したりしていたそうである。行列は路頭の儀といい、長さ約1kmにも及ぶ。行列が下鴨神社、上鴨神社に到着すると、勅使の御祭文の奉納、東遊舞の奉納など社頭の儀が神前で行われるのが慣わしになっているらしい。

 上の写真(クリックで拡大)は平成20年5月15日午後3時過ぎ、賀茂街道を北上する斎王列の斎王代(上)と牛車の様子(下)である。今年は一年に一度あるかどうかというほどの天気に恵まれた。並木の緑が眼にも眩しい。賀茂街道の並木の緑を借景にして平安装束、牛車の藤の花が一際映えている。庶民による祇園祭とは異なり、上賀茂、下賀茂両神社による儀式であるから静々と進行する。動く「雅」の世界である。

 

 (蛇足2)「枕草子」に出てくる(葵)祭の記述(第4段途中より):

「・・・

四月、祭のころ、いとをかし。上達部(かんだちめ)、殿上人も袍(うへのきぬ)の濃き薄きばかりのけぢめにて、白襲(しらがさね)など同じ様に、涼しげにをかし。木々の木の葉、まだいとしげうはあらで、若やかに青みわたりたるに、霞も隔てぬ空のけしきの、なにとなくすずろにをかしきに、すこし曇りたる夕つ方、夜など、忍びたる郭公(ほととぎす)の、遠く、そら音(ね)かとおぼゆばかりたどたどしきを聞きつけたらむは、なにここちかせむ。
 祭近くなりて、青朽葉、二藍(ふたあい)の物どもおし巻きて、紙などにけしきばかりおし包みて、行き違ひ持てありくこそ、をかしけれ、末濃(すそご)、むら濃(ご)なども、常よりはをかしく見ゆ。童女(わらはべ)の、頭ばかりを洗ひつくろひて、なりは皆ほころびたえ、乱れかかりたるもあるが、屐子(けいし)、沓(くつ)などに「緒すげさせ、裏をさせ」など持て騒ぎて、いつしかその日にならむと、急ぎおしありくも、いとをかしや。あやしうをどりありく者どもの、装束き(そうぞき)したてつれば、いみじく定者(ぢやうざ)などいふ法師のやうに、ねりさまよふ、いかに心もとなからむ。ほどほどにつけて、親、叔母の女、姉などの供し、つくろひて率てありくもをかし。」

 


 


携帯ESRの応用(1)-マイクロバブルの化学

2008-05-15 14:10:56 | ESR

【Abstract】 Micro-bubbles(MB) are the bubbles having the diameter of ca.10 miicrometer created by 400 to 600/s swirling flow of water. It is suggested that the collapse of MB leads to the formation of free radicals. We have tried to investigate the mechanism of the formation of free radicals in details, by using spin-trapping method with DMPO and DPPMPO. The ESR spectra of water including MB showed formation of H・and HO・ radicals as in the case of ultrasound irradiation. The introduction of ozone gas enhanced HO・ radical formation. The introduction of carbon dioxide enhanced the six-line ESR signal, which indicates the formation of COOX・ radical. Some differences of the formation between ultrasound irradiation and swirling flow have been found.

 マイクロバブル(MB)とは超音波、旋回流等によって形成された直径10μm前後の気泡のことで、圧壊の際に数千度・数千気圧の高温高圧が発生し、媒体の水、溶存ガスを分解してラジカルを発生させることが知られている。近年、海水・淡水の浄化を目的として各種発生装置が開発されてきたが、徳山高専大成教授が開発したMB発生装置により、単に酸素供給のみならず、養殖牡蠣、帆立貝の育成が迅速になることが発見されて以来、マイクロバブルの付加価値が俄かに注目されだした。最近では、農水産業のみならず、土木、素材産業、さらに、超音波診断用造影剤にまで応用展開が始まっている。2006年度の潜在需要は14兆円余に上ると試算されており、市場成長率も年間60~70%と非常に高い成長率を示している。しかし、この様にMBは爆発的な応用研究が始まっているにもかかわらず、その基礎となるフリーラジカル発生機構の解明および評価の例はきわめて少ないのが現状である。我々は当社製造の携帯型ESR装置の応用分野開発の一環として、スピントラップ法を用いたMBの圧壊によるラジカル発生機構解明および評価法を確立するための調査実験を行った。

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図1 マイクロバブルによるラジカル発生を調べる実験装置概念図(拡大は図をクリック)。

【実験】代表的なマイクロバブル発生装置(ナノプラネット社製)を図1に示す。図の送水口より入った水(蒸留水、水道水等)は円筒空洞の壁面に沿って旋回(400~600回転/s)する。旋回気体空洞部は低圧のため雰囲気気体(空気、酸素、など)を自吸した。水槽内の2~4lの蒸留水に当発生装置を設置した。発生したMBを含む水溶液400μlを採取し、スピントラップ試薬DMPO50μlを含む2ml試料管に添加後、 混合溶液120μl をマイクロピペット付きESRセルに吸入し、ESRスペクトルを測定した。

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【結果】

図2 DMPOでトラップされたマイクロバブル水のESRスペクトル。水道水でも、超純水でも4種のラジカルが観測された。水(H2O)が分解してできるH・とHO・ラジカル、時間とともに蓄積する炭酸ガス由来のCOOX・ラジカル、それにDMPO試薬が分解してできるラジカルY・が見える(拡大は図をクリック)。

マイクロバブル水へのDMPO添加により捕捉されたラジカル種のESRスペクトルを図2に示す。水道水でも、超純水でも大なり小なり4種のラジカルが観測された。水(H2O)が分解してできるH・とHO・ラジカル、時間とともに蓄積する炭酸ガス由来のCOOX・ラジカル、それにDMPO試薬が分解してできるラジカルY・が見える。気体として空気の変わりに炭酸ガスを通気するとDMPO-COOX・、オゾンを通気すると、DMPO-OH・が増加した。

【考察】MBの圧壊に伴うラジカル発生は一般に次式(1)~(9)によって与えられる:

H2O → H・ + HO・      (1)

N2  → 2N・           (2)

O2  → 2・O・           (3)

(O3 → O2 + ・O・)      (4)

2HO・ →H2O2          (5)

N・ + ・O・ → NO・       (6)

・O・ +NO・ → NO2・      (7)      

HO・ + NO・ → HNO2     (8)

HO・ + NO2・ → HNO3    (9)

MBの圧壊に伴い、(1)~(3)の反応により、ラジカルが生成する。生成したラジカルは(5)~(9)の反応により、最終的には硝酸が蓄積すると考えられる。超音波では硝酸の生成量が照射時間に比例し、1 時間程度の照射で水の pH は4程度にまで下がることが知られている。図2,3から判るように、実験条件の差はあるが基本的には(1)の反応で、H・およびOH・ラジカルが生成し、時間と共にラジカルアダクトの反応生成物(Six-line)が蓄積されると思われる。旋回流によるMB発生は超音波によるMB発生とは異なることが示唆されている。

1)ζ電位:旋回流による気体の剪断によりMBが発生するため、負の表面電位(ζ電位)を帯びてマイナスイオンとなっており、超音波によるMBと異なり pHもアルカリ性を示す、

2)MB生成量:超音波では断熱膨張と断熱圧縮を繰り返すので生成量が少なく、旋回流では圧倒的に多い、

3)時間差:1)と関連して、旋回流MBの安定化が起こり、その寿命が長いため、トラップ時のばらつきがある。超音波ではラジカル発生時にトラップするため、経時変化が揃っている。これらの違いが、ESRスペクトルの違いとなって現れている。(以下工事中)

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