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五山の送り火

2011-08-09 09:45:18 | ちょっといっぷく

 五山の送り火の中でも特に字の風格があるのはやはり(右)大文字である(図1参照)。三次元のうねった山肌に,75個の[点]を連ねて二次元の漢字を表現しようとするので大変である。卑近な例が左大文字で素人の書いた大の字そのものである。元々、北山の各村々が送り火を燃やして死者を送迎した名残が五山の送り火である。

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図1 如意が嶽の(右)大文字(クリックして拡大)。他の送り火に比べて格段の風格がある。

●大文字送り火

 京都市東部、東山三十六峰に属する如意ヶ嶽の支峰・大文字山にある。大文字は五山送り火に二山あり、左大文字との対比で右大文字と呼ぶ。山麓には銀閣寺、法然院等の名刹が連なる。

【起源】以下の3つの説が伝わっている。(1)平安時代初期に、弘法大師(空海)が始めたという。 かつて大文字山麓にあった浄土寺が大火に見舞われた際に、本尊・阿弥陀佛が山上に飛翔して光明を放った。この光明を真似て実施した火を用いる儀式を、弘法大師が大の字形に改めた。(2) 室町時代中期、足利義政が始めたとする説。1489(延徳元)年、足利義政が近江の合戦で死亡した実子・義尚の冥福を祈るために、家臣に命じて始めた、という。大の字形は山の斜面に白布を添え付け、その様子を銀閣寺から相国寺の僧侶・横川景三が眺め定めた。 (3)江戸時代初期に、近衛信尹(のぶただ)により始まったとする説。 1662(寛文2)年に刊行された「案内者」には、「大文字は三☆院(さんみゃくいん)殿(信尹を指す)の筆画にて」との記述がある。信尹は本阿弥光悦、松花堂昭乗とともに当代の三筆といわれた能書家だった。
☆は「貌」にくさかんむり
【所在地】京都市左京区浄土寺七廻り町
【火床数】75基
【大きさ】一画80メートル、二画160メートル、三画120メートル
【点火時間】午後8時

●松ヶ崎妙法送り火

 「妙」「法」から成る。西側に位置する「妙」は万灯籠山(松ヶ崎西山)、東側の「法」は大黒天山(松ヶ崎東山)にそれぞれ浮かび上がる。

【起源】「妙」は鎌倉時代末期、松ヶ崎の村で、日蓮宗の僧・日像が、西の山に向かって「南無妙法蓮華経」の題目から「妙」の字を書き、それを基に地元で山に点火を始めたのが起こりとされる。  一方、「法」は、約350年前の江戸時代初期から行われた、とされる。当時は地域の西側にしか送り火がなかったため、僧の日良が東の山に向かって新たに「法」を書き、これにならって火をともしたのが始まりと伝えられる。
【所在地】京都市左京区松ヶ崎西山(妙)、同東山(法)
【火床数】103基(妙)、63基(法)。現在は鉄製の火床の上にアカマツの割木を高さ約1メートル積み上げて点火している。
【大きさ】「妙」は縦横の最長約100メートル
     「法」は縦横の最長約70メートル
【点火時間】午後8時10分

 

※松ヶ崎題目踊り=8月15日午後8時、16日午後9時・涌泉寺(京都市左京区松ヶ崎)
 送り火に合わせて行われる盆踊り。日本最古の盆踊りとされる。1306(徳治元)年、村の住民らが日蓮宗へ改宗したことを喜び、地元の寺の僧・実眼によって始まったという。現在は、地元の保存会が踊りを受け継ぎ、守っている。  境内では、太鼓に合わせ、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えながら老若男女が踊る。また、京都・洛北地域に伝わる盆踊り「さし踊り」も披露される。

●船形万燈籠送り火

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図2 形も物語りも申し分なし(クリックで拡大)。書斎の窓を開ければ一面に広がる。8月16日の密かな楽しみの一つ。

 京都市の北東部・西賀茂の明見山にあるが、明見山の真下で船形を見ることは難しい。

【起源】西方寺の開祖、慈覚大師が847(承和14)年、唐留学の帰路で暴風雨にあったが、南無阿弥陀仏を唱え、無事帰国できたことから、その船を型どって送り火を始めたとも伝えられる。
【所在地】京都市北区西賀茂船山
【火床数】79基
【大きさ】縦約130メートル、横約200メートル
【点火時間】午後8時15分。西方寺で鳴らす鐘を合図に点火。送り火終了後、西方寺六斎念仏が行われる。

●左大文字送り火

 京都市西部、大北山にある。字形は右大文字と酷似しているが、規模から点火手法に至るまですべての面で異なる。西大路通のわら天神交差点を北に越えると視野に入る。ふもとには金閣寺がある。

   【起源】1662(寛文2)年刊行の「案内者」に記述はないことから、大文字、妙法、船形の3山より遅れて登場したと考えられる。大の字に一画加えて「天」とした時代もあった。
【所在地】京都市北区大北山鏡石町
【火床数】53基
 左大文字は、岩石が多くて火床が掘りにくいため、以前は全部かがり火を燃やしていたが、現在は斜面に栗石をコンクリートで固めて火床をつくっている。
【大きさ】一画48メートル、二画68メートル、三画59メートル
【点火時間】午後8時15分

●鳥居形松明送り火

 京都市西部・北嵯峨の水尾山(曼荼羅山)にある。嵐山・広沢池の近郊にあり、市内で見える場所は限定される。山麓へは新丸太町通を西に向かった後、清滝方面へ北上する。 薪を井桁に組まずに、薪を合わせた松明を燭台に乗せる。親火の所で松明に火を移し、一斉に松明をもって走り各火床に突き立てられるが、あらかじめ各火床に点火準備されていないところが、ほかの四山と異なっている。

【起源】弘法大師が石仏千体を刻み、その開眼供養を営んだ時に点火されたとも伝えられる。鳥居の形から、愛宕神社との関係も考えられている。
【所在地】京都市右京区嵯峨鳥居本一華表町
【火床数】108基
【大きさ】縦76メートル、横72メートル
【点火時間】午後8時20分

出展:京都新聞より