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携帯ESRの応用(6) プラズマ処理でできるラジカル

2009-02-23 19:06:28 | ESR

 物質は温度上昇とともに固体から液体に、液体から気体にと状態が変化する。気体の温度が上昇すると気体の分子は解離して原子になり,さらに温度が上昇すると原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れて,正イオンと電子に分かれる。この現象は電離とよばれる。そして電離によって生じた荷電粒子を含む気体をプラズマという。

Plasmac

図1 プラズマ状態を示す模式図(クリックで拡大)。プラズマ状態では荷電粒子の間にクーロン力が働く。クーロン力ははるかに遠方まで力をおよぼす。そのため,1つの粒子の運動は多くの粒子に影響をおよぼし、中性気体にはみられない様々な現象が現れる。

 プラズマはもはや馴染みの科学で、蛍光灯、ネオン、最近ではプラズマテレビがある。伝統的にはプラズマは固相、液相、気相、と並んで「第四の相」と分類されていたが、この分類がやや曖昧な部分がある。現在では、プラズマ現象と固・液・気体間の第一種相転移の概念とはまったく別のものとして確立され、プラズマ物理では炎やオーロラなどの電離気体から固体中の電子振動(プラズモン)まで、広い範囲の現象が取り扱われている。

 プラズマはラジカルの宝庫である。プラズマはガス状態ラジカルのESR観測に製造方法の一つとしてよく利用されたが、近年、表面改質、膜形成、エッチング等のドライプロセスとして広く用いられており、特に非平衡プラズマによる半導体デバイスの製造プロセスとして研究開発および産業応用が進んでいる。一方、熱プラズマも従来から超高温熱源として利用され、溶接、溶断、溶解、精錬等の産業応用を対象として研究が続けられてきている。大きく分けて以下のプラズマ作製法が利用されている。

1、高周波マグネトロンスパッタリング法

2、マイクロ波プラズマCVD法(PECVD法)

3、ヘリコン波プラズマスパッタリング法

4、高周波イオンプレーティング法

Nc60_4

典型例1 N@C60の作製法とそのESRスペクトル(特開2005-53748)

 最近、N@C60が注目されている。C60の殻の中に窒素原子1個が入り、電子スピン状態S=3/2を示す。 T2が非常に長く量子コンピュータの記憶素子として有望視されているのである。図2のようなプラズマ発生装置で作成されるが収率が悪く現在C60の0.01%程度。この収率を上げるために、鎬を削っている。ESRスペクトル測定と解析が有力な情報を提供している。

図2 N@C60生成用にプラズマ発生が用いられているグロー放電の装置(クリックで拡大)。

 

Nc60_3

図3 量子コンピュータ用メモリーとして脚光を浴びているN@C60のESRスペクトル(クリックで拡大)。

シャープな3本線は1個の窒素原子の核スピンによる分裂。Hfcc通常のスピンプローブの3分の1程度。あとはC60上に分布しているもよう。

典型例2 プラズマによる高分子膜表面改質例ー岐阜薬科大学葛谷昌之博士の総説(表面技術Vol56,642、2005)より抜粋

Esr

図4 アルゴンプラズマにより表面改質された高分子膜表面のESRスペクトル(クリックで拡大)。破線はシムスペクトル。

 プラズマによってできるラジカルは意外ときれいな(単一ラジカルに近い)スペクトルを示す。ラジカル化エネルギーの小さいラジカル種がESRスペクトルに関与する模様。

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