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α‐ジオキシゲナ‐ゼにおけるチロシルlラジカルの役割(改定版)

2013-04-28 11:06:07 | ラジカル

金属蛋白においてヘムとtyrosyl ラジカルが見え隠れ(触媒)する結果が数多く蓄積されてきた。図1は最近発表されたα-dioxygenase の結晶解析に基づく模式図である(PDBID: 4HHS)。リノレン酸(LA)がへリックス(H6)とへリックス(H17)の溝に捕捉されている。LAの2番炭素原子はTyr-386に~2.8Å下に近接している。LAのカルボン酸はHis-318, Thr‐323, および Arg-566よりなるポケットに配位して相互作用している。過酸化水素によりアミノ酸残基のチロシンがチロシルラジカルに酸化されるが、LAのα位の水素を引き抜き元に戻る。できたLA・は酸素分子と反応してLA-OO・となる(反応1.)

       Alphadioxygenase

図1 Rice‐alpha-dioxygenaseにおける活性中心の模式図 (Biochem. (2013) 52(8) 1364-72 参照)。

二原子酸素添加酵素は分子状酸素を基質に反応させる酵素を云う。一つの基質に二原子の酸素を化合させる分子内ジオキシゲナーゼと、二つの基質に二原子の酸素を化合させる分子間ジオキシゲナーゼがある。鉄や銅などの金属を必要とする。上記の場合はFeイオンがポルフィリンに配位して、FeⅣ(Por+・)⇔FeⅢの酸化還元で酵素機能する。

        Equation_1

反応1 酵素RαOおよび酸素存在下で進行するアルデヒド化反応。チロシルラジカルは図1の図のような配置でヘムと協同で触媒の役割を果たす。

カテコールジオキシゲナーゼ(catechol dioxygenases)は反応2に示すようにカテコール類を酸化的開裂させる金属タンパク質酵素群である。この酵素群は基質に酸素分子(O2)を組み込む。カテコールジオキシゲナーゼは酸化還元酵素の一つで、カテコール-1,2-ジオキシゲナーゼとカテコール-2,3-ジオキシゲナーゼとプロトカテク酸-3,4-ジオキシゲナーゼの3種類がある。カテコールジオキシゲナーゼの活性部位はだいたいは鉄を含む部分であるが、マンガンを含む型も知られている。

    Catachol-dioxygenase-reaction.png

反応2 カテコール-1,2-ジオキシゲナーゼの反応によりカテコールからcis,cis-ムコン酸が生成する例。

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PS2内のtyrosyl ラジカル(wikiより引用)

2013-02-15 08:58:49 | ラジカル

最近やっと、 Mnクラスター系の詳細を除いて、光化学系(PSⅡ)の全容が解明されてきた。蛋白の中でも数少ない巨大分子で、分子量は700万近い。最もよく引用されているPDBID:2AXTを以下に示す。

2axt_4

図1 Photosystem2の結晶構造解析例(PDBID:2AXT)。

光化学反応

   30億年前、我々の世界環境は完全に変わった。小さな細胞が光を捕らえ、細胞内反応過程のエネルギー源として利用する方法を発見した時、全てが変わった。それまで地球上の生命は、光、温泉、その他の地球化学的な起源によって作られた有機分子のように、局所環境に存在する限られた天然資源に依存していた。しかし、これらの資源は使い果たされていた。光合成の発明によって、成長と発展に新たな可能性が広がり、地球上の生命は急速に発展した。この新たな発明により、細胞は空気中の二酸化炭素を取り込み、それを水と結合して成長に必要となる原材料とエネルギーを作り出すことができるようになった。今日、光合成は地球上の生命の基盤の役割となっていて、全ての生物を生かすための食べ物とエネルギーを供給している。
400pxthylakoid_membrane
図2 光合成系の全体像。
光化学反応は、光化学系II(PSII)、シトクロムb6f、光化学系I(PSI)の3種のタンパク質複合体で構成され、これらはすべてチラコイド膜に存在する。PSIIとシトクロムb6f の間はプラストキノン(PQ)、シトクロムb6f とPSIとの間はプラストシアニン(PC)で結ばれている(図2参照)。PSIIに光(hν)が当たることによってH2OからNADP+に電子が流れ(青矢印)、プロトンがチラコイドルーメンに取り込まれる(赤矢印)。また、酸素発生複合体(OEC)によって水が分解されて酸素が発生するときもプロトンがチラコイドルーメンに生成する。チラコイドルーメンとストロマの間にできたプロトンの濃度勾配の浸透圧エネルギーによってATP合成酵素がATPを合成する。ATP合成酵素は1秒間に17回転し、その摩擦熱でADPからATPを合成しているのである。
光化学反応の収支式は以下の通りである。
  • 12 H2O + 12 NADP+ → 6 O2 + 12 NADPH + 12 H+(in)
  • 72 H+(in) + 24 ADP + 24 Pi (リン酸) → 72 H+(out) + 24 ATP

Z機構

799pxzscheme

図3 電子伝達系での電子のエネルギー勾配を示すZ機構。

植物の光化学反応は葉緑体のチラコイド膜で起こり、光エネルギーを使ってATPとNADPHを合成する。狭議の光化学反応は、非循環的電子伝達系と循環的電子伝達系の2つの過程に分けられる。非循環的電子伝達系ではプロトンは光化学系II内のアンテナ複合体に光が捕獲されることによって獲得される。光化学系IIの光化学系反応中心(RC)にあるクロロフィル分子がアンテナ色素から十分な励起エネルギーを得たとき、電子は電子受容体分子(フェオフィチン)に運ばれる。この電子の動きを光誘起電荷分離と呼ぶ。この電子は電子伝達系を移動するが、これをエネルギー勾配で表したのがZ機構(Z-scheme)である。ATP合成酵素はエネルギー勾配を使って光リン酸化によってATPを合成するが、NADPHはZ機構の酸化還元反応によって合成される。電子が光化学系Iに入ると再び光によって励起される。そして再びエネルギーを落しながら電子受容体に伝えられる。電子受容体によって作られたエネルギーはチラコイドルーメンにプロトンを輸送するのに使われている。電子はカルビン回路で使われるNADPを還元するのに使われる。循環的電子伝達系は非循環的電子伝達系に類似しているが、これはATPの生成のみを行いNADPを還元しないという点が違う。電子は光化学系Iで光励起され電子受容体に移されると再び光化学系Iに戻ってくる。ゆえに循環的電子伝達系と呼ばれるのである。

PSⅡ

Ps2059_05

 図4 PS2内のtyrosyl ラジカル。

植物細胞は光化学系蛋白質を使って光を捕らえる。これら光化学系は光を捕らえるのに緑色のクロロフィルを利用する。クロロフィルはマグネシウムイオンを取り囲む平らな有機分子と、炭素間二重結合の長い鎖を持つ橙色のカロテノイドとで構成されている。これらの分子は光を吸収し、それを電子の励起に使う。高エネルギー状態となった電子は細胞のエネルギー供給に利用される。光化学系IIは光合成系において最初の入口となる部分である(図4参照)。光化学系IIは光子を捕らえ、そのエネルギーを水分子から電子を取り出すのに使う。これら電子はいくつかの方法で使われる。まず、電子が取り除かれると水分子は分解され、泡となって出て行く酸素ガスとATP合成のエネルギー源として使われる水素イオンとに分解される。光化学系IIの要は反応中心で、ここでは光エネルギーが励起された電子の運動に変換される。中心には重要なクロロフィル分子がある。クロロフィルが光を吸収すると、クロロフィルが持つ電子のうちの1つが高エネルギー状態へ移る。この励起された電子は下に移動し、いくつかの色素分子を通って、プラストキノンA、そして最終的にはプラストキノンBのところに来る。この小さなキノンは十分な電子を得ると光化学系から離れ、電子を次の過程である電子伝達系へと運ぶ。もちろんこれによって電子が抜けた状態のクロロフィルからも離れる。反応中心の上半分はこの運び出された電子を水から得られた低エネルギーの電子と置き換える仕事をしている。酸素発生中心は水から電子をひきはがし、それをチロシンに渡す。これが更にクロロフィルへと運ばれ、別の光子を吸収する準備ができる。光によって励起された電子エネルギーは共鳴エネルギー移動の反応過程によって簡単に移動する。分子間の距離が十分近いと、エネルギーは分子から分子へと飛び移ることができる。光化学系はこれを利用するために、光を捕らえてそのエネルギーを反応中心に移す光吸収分子を利用した大きなアンテナを持っている。また植物は、光化学系に隣接し光集めを助ける特別な集光性蛋白質(light harvesting protein)も作っている。反応中心の中央にあるクロロフィル分子である。なお下半分にもう1つの反応中心がある。光化学系IIは2つの同じ部分が集まって構成されている。図4の光化学系IIの酸素発生中心はマンガンイオン(赤紫)、カルシウムイオン(青緑)、そして酸素原子(赤)でできた複雑な集合体(クラスター)である。これは2分子の水分子を捕獲して4つの電子を除去し、酸素ガスと4つの水素イオンを作る。2つの水分子が実際に結合する場所は詳しくは分かっていないが、PDBID:1s5lの構造では炭酸水素イオンが酸素発生中心に結合しており、これが活性部位の位置を示す手がかりとなっている。図にはこの炭酸水素イオンの中にある2つの酸素原子(青)が示されている。そして一方はマンガンイオンと、もう一方はカルシウムイオンと結合している。酸素発生中心がヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸によって囲まれている。中央のチロシンはラジカル状態を経由して、水と光を捕らえるクロロフィルとの間に、完全な橋渡しを形成している。

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RNR内のチロシルラジカル(SESTNo.20原稿)

2013-02-03 14:57:16 | ラジカル

リボヌクレオチド還元酵素(RNR)は全ての生物に必須の酵素で、DNAの合成および修復に中心的役割を果たす。1969年、スエーデンのBrown1)は大腸菌のRNR酵素の吸収スペクトルを測定している時に、RNR蛋白B2の精製段階

 

Tyrosylehrenberg

図1 Ehrenbergが発表した、RNR内に生成するtyrosyl radicalESRスペクトル2)g=2.0047a(4-)=1.9 mT a(2,6-)=0.7 mT4-位のβプロトン1個のhfccが意外に大きい。

<o:p></o:p> 

で、(a) 410 nm の鋭いピークの強度は精製と共に増強する、(b) 410360 nm のピークは鉄元素除去により消失し、鉄原子の再活性化により再現される、(c)蛋白B2を特異的に壊すhydroxyureahydroxylamine410 nmピークも消去する、ことを見出した。Brownの依頼でEhrenberg2) ESRを測定した所、図1tyrosyl radical (Tyr)ESRを得た。tyrosine RNR蛋白を構成する必須アミノ酸の一つで、生成したTyrが鉄の二核錯体と相互作用して安定化しており、室温でも観測できる。当該ラジカル生成は非常に一般的で、光化学系Ⅱ、大腸菌以外のRNR系、チトクロムC酸化酵素系、ヘムを含む酸化酵素系および過酸化酵素系、脂肪酸酸化酵素系、等の酵素系でも生成していることが明らかになってきた3)その後の研究4)で、RNRのサブユニットβ2B2)が安定なtyrosyl(Y122)Fe2クラスターを有しており、このY122?35以上離れたα2 の活性部位中のシステイン残基(C439-α2)を可逆的に酸化し、生じたthiyl radicalを用いてRNR還元反応を触媒する。このような長距離のラジカル移動は極めて稀で、芳香族性アミノ酸残基を用いるプロトン共役電子移動 (PCET)機構 が提唱されている4)。このPCET α2 に基質が結合することで引き起こされる蛋白質の構造変化で制御されている。Y122?の還元は一連の反応の第一段階であり、酵素がY122-β2Fe()2 クラスター間のプロトンと電子移動を通じて、全体の反応を制御していると考られている。フレンチパラドックスでお馴染みのレスベラトロールはRNR酵素の機能を阻害する。レスベラトロールの抗酸化作用の本体である4’位の水酸基がRNRTyrを還元し、酵素阻害が起きてDNA複製が阻害され、遺伝毒性を引き起こすのである。ここにきて、Tyrの同定に端を発したESR測定がENDOR、高周波/マルチESR、およびパルスESR測定へと波及効果が急激に広がりつつある4-5)。金属錯体酵素系でのラジカルの役割がますます重要になってきた。

参考文献1) N. C. Brown, et al, Eur. J. Biochem. 1969, 9, 4069. 2) A.. Ehrenberg, et al, J.Biol. Chem., 1972, 247, 3485 1978, 253, 6863. 3) A. Mukherjee, et al, J. Am. Chem. Soc.., 2011, 133, 227、及び引用文献参照。 4) K. Yokoyama, et al, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 18420.. 5) T. Argirević, et al, . J. Am. Chem. Soc.., 2012, 134, 17661

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ラジカル研究はドグマとの闘い3 RNR内のチロシルラジカル(改訂版)

2012-11-19 15:28:11 | ラジカル

リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)内のチロシルラジカル生成消滅過程(改訂版)

 

ラジカル研究はドグマ(独断、教条)との闘いの歴史である。tyrosine というありきたりのアミノ酸がまさか室温でもラジカルになっているとは想像もつかなかった。しかし、

(a) 蛋白B2精製段階で410 nm のピークの強度はますます増強された(下記Fig.5参照):

(b) 410 and 360 nm のピークは鉄元素除去と共に消失し、鉄原子の再活性化と共に、再現された:

(c)  410 nm のピークは蛋白B2を特異的に壊すヒドロキシウレアやヒドロキシアミンで消去した。

生成したラジカルが鉄の二核錯体と相互作用してクラスターを形成し、安定化しているらしい。

それまでの研究の経緯はBrownによる下記論文のDiscussionに詳しく語られており、ラジカル研究のドグマとの闘いの典型例であるので、ここにあえて原文のまま抜書きする:

European J. Biochem. 9 (1969) 512-618
Spectrum and Iron Content of Protein B2 from Ribonucleoside Diphosphate Reductase
N. C. BROWN, R . ELUSSON, P . REICHARD, and L. BELANDER
Kemiska Institutionen 11, Karolinska Institutet, Stockholm
(Received April 1, 1969)

 

Tyrosylbrown

 

DISCUSSION
   Our results clearly indicate that protein B2 contains iron and that the presence of this metal is essential for the function of the protein as a component of ribonucleoside diphosphate reductase. One molecule of pure protein B2 contains two atoms of iron, which can be released by cold acid treatment; this finding indicates that the metal is bound in an inorganic or non-heme form. Unpublished experiments indicate that each molecule of protein B2 consists of two polypeptide chains of equal size; it seems reasonable to assume that each iron atom is bound to one polypeptide chain. It is not known how the iron is linked to protein B2. Several well characterized non-heme iron proteins such as the ferredoxins contain “inorganic sulphide” which participates in the iron-protein interaction. Protein B2 does not contain any such sulphide. The metal is bound quite tightly and is not removed during the extensive purification procedure. On the other hand, more drastic treatments result in partial removal. For example, preparative gel electrophoresis of the protein under the conditions given by Ornstein and Davis which involve pH values of above 9.5 resulted in considerable loss of iron. Similarly, treatment with ammonium sulphate at acid pH values removed part of the metal. Aside from treatment at extreme pH values, prolonged dialysis against chelating agents, such as 8-hydroxyquinoline, removed the metal. Removal of iron resulted in loss of enzyme activity.It is probably significant that a relatively minor loss of iron was parallelled by a disproportionally large loss of enzyme activity. This finding might be interpreted by assuming that the loss of one of the two iron atoms is sufficient for enzyme inactivation. However, other, more complicated explanations cannot be excluded. Extensive treatment with 8-hydroxyquinoline and other chelating agents such as EDTA often resulted in an apparently irreversible precipitation of the protein. As a result we have not succeeded in obtaining protein B2 completely devoid of iron. Our best preparations of “apoprotein” never contained less than 15 to 20% of the original iron content. The “apoprotein” preparations could be reactivated completely with iron, but not with any other metals tested. The latter experiments were not extensive, however. Both Fe2+ and Fe3+ could be used for reactivation and at the present time we know nothing about the state of valency of iron in the protein, Protein B2 could be labelled specifically by reactivating a metal-deficient “apoprotein” with radioactive iron. The radioactive protein has been used to study the interaction with protein B1, the second subunit of ribonucleoside diphosphate reductase. In these studies and in other reactivation experiments, the non-specific attachment of iron to the “apoprotein“ caused special problems. Since this type of binding is more pronounced with trivalent iron it could be minimized by adding iron to the apoprotein in the presence of an excess of sodium ascorbate. (We wish to thank Dr. R. Malkin, Dept. of Biochemistry, University of Gothenburg, for suggesting this procedure.) This precaution ensured the reduction of all Fe3+ to Fe2+. When 69Fe-labelled protein B2 was made on the preparative scale for use in binding experiments, we purified the product further to exclude all non-specifically bound iron. For this purpose it was convenient to introduce 59Fe into a fairly impure preparation of protein B2 and to remove extraneous iron by further purification of the labelled protein, either by DEAE-cellulose chromatography or by preparative gel electrophoresis. Fig.5 demonstrates the use of the former method in a typical experiment. The iron content of protein B2 is closely connected with the highly characteristic spectrum of this subunit shown in Fig. 5. We are not aware of any other protein with a similar very sharp peak at 410nm. When we first observed. this peak in preparations of protein B2 we suspected that it arose from contamination by a hemoprotein with a characteristic Soretband. However, we excluded this possibility and established that the spectrum is a characteristic property of protein B2 from the following observations:

 

(a) during purification of protein B2 the characteristic spectrum intensified ;

 

(b) the peaks at both 410 and 360 nm disappeared on removal of iron and reappeared on reactivation with the metal, and

 

(c) the peak at 410 nm disappeared on treatment with hydroxyurea or hydroxylamine which specifically destroy the activity of protein B2.

 

The details of the spectrum of the final preparation of protein B2, in particular the intensity and sharpness of the peak at 410 nm, depended to some extent on the method of purification. A good measure of the sharpness of the 410 peak is the 410/405 ratio; in some preparations this was as high as 1.18. Both the 410/405 ratio and the intensity of the spectrum above 310 nm were higher when Sephadex G-200 was used as the last purification step rather than gel electrophoresis. This is clear from the experiment shown in Fig.5 in which an identical preparation of protein B2 after the second DEAE step was divided and purified further by the two alternative final purification steps. The reason for this behaviour is not understood. From our results it seems clear that the spectrum of protein B2 depends on the presence of iron. However, only the 360 nm peak gives a direct correlation with the amount of iron present in the protein. The peak at 410 nm disappeared almost completely even when less than half of the metal had been removed. Furthermore, inactivation of the enzyme with hydroxyurea or hydroxylamine resulted in a complete loss of the peak at 410 nm (but not at 360 nm) but did not remove any iron from the protein. These results suggest that the peak at 410 nm comes from an unidentified structural component in protein B2, the integrity of which requires the presence of both atoms of iron.

 

In collaboration with Prof. A. Ehrenberg we have recently found that protein B2 has a characteristic electron-paramagnetic resonance signal with a g-value of 2.0, apparently caused by the presence of a free radical in the isolated enzyme. The signal disappears on treatment with hydroxylamine and shows other features in common with the peak at 410 nm. The question as to the origin of this peak and the electron paramagnetic resonance signal may be connected with the question of iron-bonding in protein B2. It remains a challenging unsolved problem. It is also closely connected with the mechanism of the inactivation of the enzyme by hydroxyurea and hydroxylamine. Earlier experiments [7] had already established that protein B2 of ribonucleotide reductase was the target for the inhibitory effect of these compounds. The function of iron in the enzyme remains at the present time a matter of speculation. The metal does not appear to be required for the intact quaternary structure of the enzyme. On sucrose gradient contrifugation, the “apoprotein” sedimented with a sedimentation coefficient of 5.5 S, similar to the intact protein B2. Besides, the “apoprotein” retained the capacity to form a B1 :B2 complex in the presence of an excess of protein B1. It appears more likely that iron participates in the reduction of the HCOH group of the ribose. Together with the unidentified group of protein B2 the metal may fulfil a function similar to that of cobamide coenzyme in the related ribonucleoside triphosphatereductase from L. leichmnnii [l0-12]. The clarification of the function of the iron requires the identification of the postulated additional prosthetic group.

 

以上のような経緯で、今から40年も前の1972年、リボフラビンESRの大家、Ehrenberg の登場となった。図3に示すような、典型的ラジカルのESRデータをJBCにEhrenberg が初めて発表したのである: 

 

http://www.jbc.org/content/247/11/3485.full.pdf

 

 

Tyrosylehrenberg
図3 RNR内のtyrosyl radicalのESR(A.Ehrenbsrg)。g=2.0047,a(4-)=19 G, a(2,6-)=7 G.

 

しかし、問題はこれで終わりではなかった!むしろ始まりであった!

 

リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)は全ての生物に必須で、DNAの合成および修復において中心的役割を果たす酵素である。Ehrenbergはその酵素の機能にラジカルの生成消滅機構を提唱した。レスベラトロールはこの酵素の機能を阻害する。これは酵素の活性中心にあるチロシルラジカルをレスベラトロールが消去してしまうことによる。即ち、レスベラトロールの抗酸化作用の本体である4’位の水酸基がリボヌクレオチドレダクターゼのチロシルラジカルを還元反応によって消去してしまう為、酵素阻害が起きてDNA複製が阻害され、遺伝毒性を引き起こすのである。

 

Ja201101640n_0007tyrosilrnr

 

図1 RNR酵素内のチロシルラジカル生成消滅機構(J. Am. Chem. Soc., 2011, 133 (24), pp 9430?9440)。

 

 

Ja2012071682_0008endortyrosyl

 

図2 RNR酵素のチロシルラジカルのENDORスペクトル(J. Am. Chem. Soc., 2012, 134 (42), pp 17661?17670。

 

要するに、本酵素はβ2(B2) が安定なチロシルラジカル(Y122?)-FeIII2クラスターを有しており、このY122?が35Å以上離れたα2 の活性部位中のシステイン残基(C439-α2)を可逆的に酸化し、生じたチイルラジカルを触媒的に用いてリボヌクレオチド還元反応を触媒する。このような長距離のラジカル移動は金属補因子を経由しないものとしては極めて稀で、芳香族性アミノ酸残基を用いるプロトン共役電子移動 (proton-coupled electrontransfer, PCET) が提唱されている(図2)。このPCET はα2 に基質が結合することで引き起こされるタンパク質のコンフォメーション変化で制御されていると考えられているが、その機構については未解明である。Y122?の還元は一連の反応の第一段階であり、酵素がY122-β2とFeIII2 クラスター間のプロトン移動を通じて、全体の反応を制御している可能性が考えられる。

 

ここに来てESR、ENDOR、高周波およびマルチESR、およびパルスESRが俄かに活況を呈してきた感がある。因みにGoogleで[tyrosyl radical]を画像で検索してみて下さい。ESRのオンパレードである!

 

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カーボンナノチューブ(解説)ーwikipediaを改変

2012-10-26 16:03:14 | ラジカル

Types_of_carbon_nanotubes

図1 カーボンナノチューブ(CNT)の幾何学構造図。アームチェアチューブ、ジグザグチューブ、カイラルチューブの3種に別けられる。

1991年、CNTは、日本の飯島澄男(NEC特別主席研究員)によって、フラーレンを作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から、初めてTEM(透過電子顕微鏡)によって発見された。この発見には高度な電子顕微鏡技術が大きな役割を果たしていた。また、電子顕微鏡で観察・発見したというだけでなく、電子線回折像からナノチューブ構造を正確に解明した点に大きな功績が認められている。このときのCNTは多層CNT (MWNT) であった。この発見の後、日本の遠藤守信(信州大学教授)により、化学気相成長法によるCNTの大量生産技術が開発された。当該製法により生産されたCNTは「遠藤ファイバー」と呼ばれ、既に、リチウム電池などに使用されているほか電子デバイス等多くの分野で実用化されている。

CNTに対する最初の観察と研究は、1952年のソビエト連邦まで遡る。この時点で既に2人のロシア人科学者によってCNTと思われるTEM写真と文献が書かれていた。しかし、このときは言語の問題や冷戦中という事もあり、その詳細な構造や性質などは西側諸国にはよく分からないまま研究は置き去りにされていた。その後も複数の研究者達によってCNTの観察と考察がなされていたが大きな発展はなく、その詳細な構造が解明されて材料としての重要さが認識され、量産に至るのは1991年の飯島による再発見の後のことである。1979年にはペンシルベニア州立大学の会議においてJ.エイブラハムソンにより、アーク放電によって低圧の窒素雰囲気中に生成されたカーボン繊維の特殊性について述べており(文献発表は1999年)、1981年にはソビエト連邦の研究者らによって、CNTの表面にあたるグラフェンの幾何学構造についての考察文献が発表されている。1987年にはT.ハワードによってCNTの直径が3.5nmから70nmの間とされる事やその応用性について述べられている。CNTの直径は0.4~50nm。その名の通りナノメートル単位であるため電子顕微鏡によって観察できる極小の世界である。CNTは、基本的には一様な平面のグラファイト(グラフェンシート)を丸めて円筒状にしたような構造をしており、閉口状態の場合、両端はフラーレンの半球のような構造で閉じられており5員環を必ず6個ずつ持つ。5員環の数が少ないため有機溶媒等には溶けにくい。7員環が含まれる場合には内径が大きくなるため、太さの違うCNTが形成され、8員環では枝分かれ状の構造も作り出せると考えられている。チューブは筒のような構造のためキャップを焼き切るなどにより、中に様々な物質を取りこむ事ができる。ナノチューブとフラーレンが結合したカーボンナノバッド (Carbon nanobud) という形も理論的には予測されている。

最も基本的な単層CNTの表面はグラフェンの表面図のようになっており(図1挿入図参照)、そのグラフェンの幾何学的構造の違いによって3種類のCNTが分類される。グラフェンの六角形の向きはチューブの軸に対して任意の方向にとれるため、このような任意の螺旋構造の対称性を軸性カイラルという。グラフェン上のある6員環の基準点からの2次元格子ベクトルの事をカイラルベクトルと呼ぶ。カイラルベクトルは以下のように表される。

C_h = na_1+ma_2=(n,m)

このベクトルを指数化した(n,m)をカイラル指数と呼び、チューブの直径や螺旋角はカイラル指数によって決まる。チューブの直径dは以下になる。

d = frac{a}{pi} sqrt{(n^2 + nm + m^2)}

立体構造の全てはカイラル指数によって左右される。3種類のそれぞれの構造体には名称があり、CNTの軸に直角な場合をアームチェアチューブ (n,n)、軸に並行な場合をジグザグチューブ (n,0)、それ以外のCNTはカイラルチューブと呼ぶ。

SWNTではカイラル指数によって金属型と半導体型のCNTに分かれ、n-mが3の倍数では金属型であり、3の倍数でない時は半導体の特性を示す。

銅の1,000倍以上の高電流密度耐性、銅の10倍の高熱伝導特性、高機械強度、細長い、などがCNTの電子材料としての特長であり、集積回路などへの応用が期待されている。また、半導体としてのCNTをトランジスタのチャンネルとして用いることで、高速スイッチング素子として用いられることが期待される。CNTはP型半導体的な極性を示す。

金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法は過酸化水素水を使用する方法や、アガロースゲルを用いて分離する方法などが発見されている。アガロースゲル(寒天)を用いた方法ではSWNTさえあれば家庭レベルで安価・簡単に分離する事ができる。その基本的方法はCNTをゲルの中に含ませて凍結、解凍後に絞りだすだけである。これにより95%の半導体型SWNTと70%の金属型SWNTに分離できる。さらに、化成品や医薬品の産業生産工程に広く用いられているカラムクロマトグラフィーとアガロースゲルを用いた方法では、半導体型95%、金属型90%に分離できる。分離された薄液は様々な色を呈する。IBMでは導電性CNTを焼き切る方法を用いて、半導体CNTを分離しプロセッサへの応用を考えていた。

導電性の高さと表面積の大きさ(閉口状態で1,000m2/g、開口状態で2,000m2/gに逹する)から燃料電池としての応用も進められている。内部に筒状の中空空間を有しているため、様々な分子を内包させることができる。また、CNTの持つ薄さによりペーパーバッテリーという形も考えられている。単層CNTは著しい比表面積を持ち、表面に極微量のガスが吸着するだけで物性が大きく変化する。これにより高感度のガスセンサー等への応用が期待される。

電場をかけると5員環から電子が放出されるためFED、平面蛍光管、冷陰極管のカソード(陰極)デバイスへの応用も研究されている。また、X線の発生源としての研究も進められている。スーパーグロースCVD法を用いて二層カーボンナノチューブをディスプレイ用の電極基板上に直接成長させることによって均一な電子放出特性を示す。これによりFEDの一種であるCNTディスプレイへの応用が期待される。CNTをスーパーグロースCVD法を用いてブラシ状に構造化する事で反射率0.045%という世界で最も優れた灰色体(黒い物質)を作り出す事ができる。この物質はCNT黒体と呼ばれている。ナノオーダーの1次元的物質故、原子間力顕微鏡の探針やナノピンセットなどにも応用が期待される。CNT探針を用いた光ディスクのナノピット形状の測定など将来の100GB以上のナノ光ディスクへの応用も考えられている。

アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つため、将来軌道エレベータ(宇宙エレベータ)を建造するときにロープの素材に使うことができるのではないかと期待されている。多層CNTは、導電性、弾性、強度に優れ、ヤング率は0.9TPa、比強度は最大150GPa。一方、単層CNTは半導体となり、極めて高弾性で破断しづらく、優れた熱伝導性などMWNTとは異なる特性を持つ。ヤング率は1TPa以上、比強度は構造によって異なり13~126GPa。現時点ではバッキーペーパーと呼ばれるシートが研究段階で開発されている。スーパーグロースCVD法によって製作されたSWNTによる薄膜の密度は0.037g/cm。触媒操作によりSWNTとMWNTの比率も変えられる。

ダイヤモンド・アンビルセルを用いてSWNTを24GPa以上に常温加圧する事により、電気伝導性を有する超硬度材料(超硬度ナノチューブ(SP-SWCNT))を合成できる。ナノインデンター硬度測定法による硬度は62~150GPaでダイヤモンド150GPaに匹敵し、体積弾性率は462~546GPaでダイヤモンド420GPaを超える。ラマン効果を用いたスペクトル計測では、不可逆変化を起こしている事が分かった。なおダイヤモンドは絶縁体である。フラーレンを用いて同様の方法で製作された物質にハイパーダイヤモンドがある。ダイヤモンドの2倍程度の硬度とされる。複合材として用いる事でハイパービルディングや大型の橋梁用ケーブル、自動車、航空機、戦闘機、宇宙船などの従来物質では不可能な構造物への応用が考えられる。また、スポーツ製品や自転車などの一般製品にも利用され始めている。シリコンゴムのような性質で極環境下でも粘弾性を持つCNTが発見されている。この物体は、-196 ℃から1000 ℃の温度範囲で粘弾性を示し、-140~600 ℃で、0.1~100ヘルツの振動数範囲では、周波数に依存しない安定した粘弾性を示す。さらに100ヘルツで1 %のねじり歪みを100万回加えた後も、劣化や破断がない。

各種フラーレンを内包したピーポッドやTCNQ、カロテノイド、種々のポルフィリンなどの有機分子を内包したものが作製されている。最近になって単層CNT内部では水の融点が高くなり、常温常圧下でも氷を作ることが発見された。防刃チョッキや防弾チョッキ用のケブラーに変わる高強度繊維としての利用も考えられている。終端処理したMWNTは極低温において超電導を示す。転移温度T_c=12Kで、グラファイト構造などが寄与するものと考えられる。

作製方法

アーク法黒鉛電極をアーク放電で蒸発させた際に陰極堆積物の中にMWNTが含まれる。その際の雰囲気ガスはHeやAr、CH4、H2などである。金属触媒を含む炭素電極をアーク放電で蒸発させるとSWNTが得られる。金属はNiやCo、Y、Feなどである。この方法において、正負電極に微振動を連続して加えるフィジカルバイブレーション法がある。これにより、ナノチューブの純度および単位時間当たりの生成量を飛躍的に高めることが可能である。

レーザーアブレーション法Ni-Co、Pd-Rdなどの金属触媒を混ぜた黒鉛にYAGレーザーを当て蒸発させ、Arの気流で1,200℃程度の電気炉に送り出すと炉の壁面に付着したSWNTが得られる。高純度なSWNTが得られるが、大量合成には向かない。触媒の種類と炉の温度を変えることで直径を制御できる。

CVD法:通触媒金属のナノ粒子とメタン (CH4) やアセチレン (C2H2) などの炭化水素を500~1,000℃で熱分解してCNTを得る。DIPS法大規模生産向けの手法。常のアルコールCVD法やSG-CVD法は基盤を用いる。

DIPS法:触媒(その前駆体を含む)及び反応促進剤を含む含炭素原料をスプレー等で霧状にして高温の加熱炉に導入することによって単層CNTを流動する気相中で合成する。DIPS法はCVD法の一種であり、気相流動法とも呼ばれる。DIPS法はスケールアップが容易であることと、連続的運転が可能であることが特徴である。AISTと日機装が新しく改良したDIPS法ではSWNTの直径を0.1nm単位で精密に制御でき、従来に比べ触媒利用効率3,900%、量産性100倍、紡糸や製膜化を可能とする。SWNTの純度は97.5%程度である。

スーパーグロースCVD法:産業技術総合研究所ナノカーボン研究センターにおいて、畠賢治、飯島澄男らによりスーパーグロースCVD法 が発表された。CVD法の一種である本法は通常の気相合成雰囲気中に極微量の水分を添加する事により触媒の活性及び寿命が大幅に改善され、高効率、高純度な単層カーボンナノチューブを得ることができる。この合成法による成長速度は以下の数式によって表される。

H(t) = {beta}{tau}_o ({1 - e^{-t / {tau}_o}})

βは成長定数で207 μm/分、{tau}_oは触媒特性時間。

その効率は、触媒効率ではレーザーアブレーション法に比べて100倍、時間効率では2004年の公開時の実験では厚さ2.5mmのSWNT薄膜を形成するのに要した時間はわずか10分であった。純度は99.98%以上、表面積は閉口状態1,000m2/g、開口状態2,000m2/g、重量密度は薄膜で0.037g/cm3、固体で0.55g/cm3と非常に高性能である。これまではHiPco法で5~30%、通常のCVD法で3~15%の触媒金属やアモルファスカーボンなどの密度の高い不純物が含まれていた。そのため標準的な試料のSWNTの密度は1.4 g/cm3程度であったが、この製造方法では高密度固体の形状でも非常に軽い。また触媒操作する事でSWNT膜だけでなくDWNT膜やMWNT膜の形成も可能である。CNTの直径によりその含有率は変わり、SWNTとほぼ同程度の純度の薄膜を形成できる。純度等の問題も併せて量産が難しかったCNTの大量生産を実現する技術とされる。また、この技術を用いると、その配向性の高さから、花びらのような構造体を成長させることも可能である。この方法で合成されたCNTは、基板の上に貝割れ大根のように上向きに密集して成長する。この配向性を利用してCNT黒体などがAISTにより製作されている。サンプルはAISTによって提供されている。

健康被害を及ぼす恐れ

日本トキシコロジー学会が発行する『ジャーナル・オブ・トキシコロジカル・サイエンス』(2008年2月号)において、がん抑制遺伝子欠損マウスによる実験で発癌性がある可能性が報告されており、健康影響に関する研究、予防的曝露防止対策等に関する検討を推進すること、さらに安全対策が早急に図られるよう国に対して提案要求がされた。

CNT技術を用いた製品は、アスベストに似た健康被害を及ぼす可能性があることが2008年5月21日、英科学専門誌「Nature Nanotechnology」に掲載された論文により明らかとなった。この研究発表を行ったのはエジンバラ大学(University of Edinburgh) のケネス・ドナルドソン (Kenneth Donaldson) 教授を中心とする研究グループ。研究グループによるとCNT一般、特に、CNT技術を用いた素材はアスベストに似た健康被害を及ぼし、肺癌などを誘発する危険性が高いと論じている。