「日本イスラム史」(小村不二男著昭和63年日本イスラム連盟)によると、わが国最古の回教寺院、名古屋モスクは昭和6年(1931年)現在の名古屋市千草区に建てられた。しかし、残念ながら20年2月15日の空襲で焼失し今はない。最近、僕はひょんなことから、この焼けたモスクの写真を手に入れた。
この写真は1962年、僕が同僚のカメラマンと訪問したドバイの写真集「DUBA 1962」(2012年出版)の中に載っていた。写真集はカメラマンが撮影したドバイの写真と一緒に、僕らが訪問時お世話になったインド人Kamal氏の事が紹介されているが、名古屋千種モスクは戦前、Kamal氏が商社マンとして神戸に滞在中、名古屋に出張したさい撮ったものらしい。そのキャプッションにも日本最古のモスクと記されている。
「統計からみたイスラム」(浜中彰)によると、戦前日本には、この名古屋モスクと神戸モスク(昭和10年建立]代々木モスク(昭和13年建立]と三つあったが、代々木は戦後建て替えられ、現存するモスクとしては神戸が最古である。しかし、1980年頃からイスラム圏からの就労者や留学生が急増し、現在では約3万人のイスラム教徒が滞在し、それにこたえて55か所のモスクが日本にあるという。ここでも文化の多様化が進んでいる。