ビター☆チョコ

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いつか眠りにつく前に

2008-02-25 | 洋画【あ】行

アン・ロード(ヴァネッサ・レッドグレープ)は重い病に倒れ、残された日々を自宅のベットで過ごしている。
アンを看取るために、二人の娘、長女のコンスタンス(ナターシャ・リチャードソン)と次女のニナ(トニ・コレット)が実家に帰ってきている。
浅い眠りを繰り返す母の口から何度も出てきたのは「ハリス」という名前だった。
「ハリスと私がバディを殺した」
母は、いったい何の話しをているのか。
ただのうわごとなのか。
二人の娘は困惑する。

アンがまだ若く、アン・グラント(クレア・デインズ)だった頃のこと。
アンは歌手を夢見てニューヨークのクラブで歌っていた。
親友のライラ(メミー・ガマー)の結婚式のブライズメイドを努めるために、ニューポートの海辺の別荘を訪れたアンは、ハリス(パトリック・ウィルソン)と出会い、恋に落ちる。
しかし、瞬く間に燃えた上がった恋は、たった一晩で消えてしまった。

親友のライラがハリスに寄せた想い。
ライラの弟のバディがアンに寄せた想い。
誰かに寄せたそれぞれの想いが、一番不幸な形で終わってしまった夜だった。
その一夜のことは、アンの胸にずっと傷になって残り続けていたのだ。

老いたアンは死を目前にして心が休まらないでいる。
実らなかった恋。
傷つけてしまった友人。
破れてしまった2度の結婚。
歌手への夢も「そこそこ」で終わってしまった。
そして、二人の娘に対してもいい母親ではなかった、と思っている。
でも、映画はその「過ち」を責めずに、優しく肯定してくれる。

今、自分の道を歩き出したばかりの若い人には
もしかしたら退屈に感じる映画かもれない。
ある程度、自分の歩いてきた道を振り返ることが出来るようになった年頃の人には
ところどころ、胸にせまるものがあるのではないかと思う。


ある哀しい出来事が親友だったアンとライラを遠ざけてしまったのだが、
死を目前にしたアンのもとに、ライラ(メリル・ストリープ)が突然見舞いに訪れる。
何十年も疎遠だった二人が、ひとつのベッドに横たわり
お互いの生きてきた年月を思いやるシーンには胸が熱くなる。

人はみんな同じように年をとる。
でも、若いときには
自分が年老いていくことなんか想像できないでいる。
そうして長い道を歩き続けて
ふと、気がついたときには残された時間は少なくなっているのだろう。
そんな時
誰だって自分の選択を悔いることがあるのかもしれない。
過ちを含めて、自分の人生を見つめなおして肯定するのは勇気がいることなのだと思う。

死を目前にして封印した過去を思い出す母。
苦い過去を、優しく肯定してくれる母の親友。
そして母の過去に触れることで
娘達は自分の生き方を見つめなおし
しあわせを求める勇気を取り戻していく。

人が最期に求めるのは
誰かに自分の存在を肯定してもらうことなのかもしれない。
肯定してもらうことで
心は「自分が一番輝いていた時代」に戻っていき
安らかに永遠の眠りにつくのだ。

怯えずに
しあわせになる努力をしてね。
人生に過ちはないのよ。

アンが残した最期の言葉は
まだ道の途中にいて、時々途方に暮れる私にも勇気を与えてくれる。


晩年のアンを演じたヴァネッサ・レッドグレープとアンの長女を演じたナターシャ・リチャードソン。
少ない出番ながら、登場するだけで空気が変わったメリル・ストリープのライラと
ライラの若き日を演じたメミー・ガマー。
二組の実の母娘共演も興味深い。





 


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